第22話 グッドモーニング?
〈ドカーン!ジャンジャン!パキュンパキューン!ズドドドド!!オイ〜ッス!バババババ!〉
「ヘイ、朝だぜ準くん起きろー起きろー!」
んぁ、何だ朝から〜。・・・つーかもう朝?おかしいな、まだ眠い・・・
「グッドモーニング!準くん!いい天気だぜ!」
〈パフパフ〜!ウィーン!ちゅど〜ん!ギュイィィィン、ジャカジャカ!オイ〜ッス!ピーポーピーポー!〉
・・・うるせえ。なんか誰か混じってない?
つーか何でコイツ今日は朝から元気いっぱいなんだよ。いっつも朝はオレが起こしてるのによぅ。
ん〜、今何時?
オレは枕元の時計を見た。
《2:30》
・・・。
「まだ夜じゃねぇか!このボケ死神!!」
「見たまえ準くん、今日はいい天気・・・」
「真っ暗だ!」
何考えてんのコイツ?何でパジャマ姿で真夜中にパフパフ音鳴らしてジタバタ暴れてんの?
「だって早く寝たから早く起きちゃったんだもーん!!ねぇねぇ目が覚めちゃったからお話しようよ準く・・・」
「ZZZ・・・」
「・・・。」
〈ズガガガガガ!バリバリィ!ニャーニャー!シュボーシュボー!アトランティスは実在する!ガリガリガリ!ピュルー!〉
うわぁ〜ん!もう寝させてくれ〜!しかも今、考古学者みたいな人が混ざってた〜!
「ん〜、お前が規則正しい生活をしないからだ!」
「暇暇〜!」
聞いちゃいねえ。
無理矢理起こされたオレは仕方なく死神に付き合うことになった。しかも真夜中に・・・。
「で、何がしたいんだお前は?」
「お話しよー!」
お話って・・・。
「じゃあちょっとだけだぞ?何を話すんだ?」
「そーだなぁ、テーマは《織田信長の火縄戦術について》!」
・・・こりゃあ寝られそうにないな。
それから一時間が経った。
「・・・でね、金魚すくいをしていたはずのジェイソンくんがいつの間にかビール瓶くわえて三点倒立してたの〜!アハハハハ!準くん聞いてる〜?」
!!
いかんいかん、ちょっと寝てた。
「お、おぅ。聞いてるぞ〜。」
知らないうちに話題が織田信長の火縄戦術から変わってる。
「でね、ひたすら《魔が差した》と言い訳するジェイソンくんを準くんはどう思う!?」
知るか。とも言えないしなぁ・・・。
「それはまぁ、救われなかったよな。」
「だよねだよね!」
なんとか切り抜けた。
ね、眠い・・・。
「じゃあ今度は準くんがお話してよぉ!」
もう泣きたい・・・。でもこのままだといつまで経っても寝られないしなぁ。
「じゃあどんな話がいいんだ?」
「ん〜、じゃあ《準くんがフランス料理店でフィンガーボールを間違えて飲もうとしちゃった時》の思い出話!」
うん、そんな思い出は無い。
「ハァ・・・。じゃあ思い出話な。」
「うん!」
「ん〜。そうだなぁ。
オレの本当の父親と母親は小さい頃に事故で死んじまってよ、ずっと母方の実家に預けられてたんだ。んで、オレが中学に入ったくらいの頃に、新しい、つまり今の両親の所へ養子として貰われたわけだ。その新しい母親が優しくてな。父親も面白い人なんだ。今は二人共海外に行っちまってるが、三人で暮らしてた頃は楽しくてなぁ・・・」
「すーすー・・・。」
寝ちまったよコイツ!!話はここからなのによお!ま、いいやこれで寝られるわけだし。
・・・。
って、オレの布団で寝るなよ!!
おい、マジで?起きねぇよコイツ・・・。
その晩オレは死神の寝相の悪さに苦しみながら寝ました。
ピピピ、ピピピ、ピピピ・・・
ん〜、どうやら今度は本当に朝みたいだな・・・。
オレはゆっくり起き上がろうとした。
が、何かに縛られた感じで動けねぇ。ゆっくり布団のなかを覗いてみるとそこには・・・
「すーすー・・・ムニャ、限界値は突破したよ・・・ムニャ・・・。」
見事にオレを抱き枕にして爆睡する金髪少女がいた。オレは死神を起こさないように抜け出そうとしたが、物凄い力で掴んでいるために全然抜け出せねえ。つーかオレじゃなかったら潰れてるよ。
何とか頑張って布団から抜け出たオレは顔を洗い、パジャマのまま朝飯の支度を始めた。
「ん〜、卵は・・・あれ?しまったなぁ、きらしてたか。今朝は和食だな。」
冷凍庫から魚を出し、味噌汁を作りながらオレは死神を起こすことを忘れていたことに気付いた。仕方なくいつものように(今朝はオレのベッドだが)起こしに行く。
「おい死神朝だぞ、起きろ〜!」
「すーすー・・・化粧濃いですよウフフ・・・」
今朝も意味不明な寝言を・・・。しかしいつになく爆睡してるな。まぁ夜中に一回起きてひと暴れしてくれちゃったからな。
「ほら死神、生活習慣が狂っちまうぞ?」
「すぴー・・・。」
このやろー、オレだって眠いのに気持ち良さそうに寝やがって。オレは死神の頬をつっついたり引っ張ったりしてみたが全然起きる気配はない。
あ、そうだ。
「大変だ死神!ニュースで《焦げたヨーグルト特集》がやってるぞ!」
ガバッ
「マジ!?どこどこ!?」
早っ!
恐ろしい速さで飛び起きた死神はオレの横を走りぬけ、居間のテレビの前に座った。
「準くんヨーグルト特集は!?」
「あれ?あぁ、終わっちまったみたいだな。」
「えぇー!!起き損じゃん!」
起き損って・・・。そもそも焦げたヨーグルト特集なんてやっているはずもない。
「・・・準くん。」
ヤベ、ばれたか?
「このお天気お姉さんボタンがとれてるよ。」
馬鹿でよかった。
「ほら、早く朝飯食わねえと遅刻するぞ〜。」
「は〜い。おっ、今朝は味噌汁と焼き魚かい!これにコーンフレークが入れば日本人の朝食だね!」
貴様は激しく日本文化を勘違いしているようだな。
死神と朝飯を食べながらオレは新聞に目を通した。死神も向かい側から新聞を覗く。
ん〜・・・なになに?
「あれぇ、株価ガタ落ちじゃんか〜金の亡者準くん!大丈夫なの!?」
金の亡者はすべて予測済みなのだよ本物の亡者よ。
それよりオレは別の記事の見出しに目が行った。
《謎の般若面の男がキャバクラで大暴走》
・・・。
何やってんだ夜叉さん・・・。ついに誰にでも見えるようになっちゃってんじゃねぇよ。
オレはこれ以上夜叉さんが死神に秘密を握られるのを防ぐために急いで新聞を閉じた。
オレは食事を終えると歯磨きをしながら脱水が終わった洗濯機へ向かった。死神は軽く寝呆けているので食べるのが遅めだ。
「よし、おい死神〜!早く支度しろよ〜!」
「は〜い!あと30分待って〜!」
ふざけんな。
死神は瞬速でパジャマから黒ローブに着替えた。そして制服に着替えたオレは鞄を持って玄関に立った。
「もう行くぞ〜。」
「待ってよぉ〜。」
ま、ウチの朝はいつもこんな感じですな。朝から晩まで疲れる・・・。
「今日は美香ちゃんと一緒に海苔を歯に付けたまま一日過ごすんだぁ♪」
・・・メリット無し。