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死神といっしょ!  作者: 是音
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第21話 死神と吸血鬼

昨日はあの後が大変だった。紅しょうが入りのサンドイッチを食った死神が暴走したからだ。それはもう凄いアレルギー反応でしたよ。一言でまとめると昨日の暴走はまさに《頭が高い町民を見た時の侍》のようでしたよ。

それはいいとして、今日はめんどくさいけど隣の彩花さんの部屋へ行くことにした。昨日夜叉さんに聞いたヴァンパイアのことと、以前彩花さんが死神を見られた時に言った

『私も預かってるのよ』

という言葉に繋がりがあるような気がしたからだ。


「さぁさぁ、早く行こうよ準くん!」

「お前も行くのかよ!」


オレ達は自分達の部屋を出て隣の部屋の扉の前に立った。表札には《須藤彩花》と書いてある。オレはインターホンを押した。


ピンポーン


『はーい!』

「こんにちは里原ですー!彩花さんちょっといいですかー?」

「こんにちは死神ですー!彩花さんチョコレートですかー?」


意味わかんねぇ。


しばらくすると彩花さんが出てきた。

「里原くーん珍しいじゃなーい、あら?黒ローブの子もいらっしゃ〜い。」

「死神です〜。」


バレちまったよ。


「死神さんね、いらっしゃい。さあ、あがって〜」


普通だよこの女子大生。

とりあえず彩花さんの部屋にあがったオレ達は居間に座った。とうぜんながら部屋の構造はオレの部屋と同じだ。・・・ピンクの壁紙以外は。というか居間のテーブルといいテレビといい、他の小物までほとんどがピンクだ。

そんなことを思っていると彩花さんがお茶を出してくれた。


「はい、緑茶よ〜。」

「あ。ありがとうございます。」


しかしここで油断してしまうのが一般人だ!

これは《彩花さん》が出したお茶だ。何もないワケが無い!とりあえず死神の様子を見るか。


隣に座る死神は疑いもなくお茶を飲んだ。


「・・・。」


ん?無言だな。何ともなかったのか?



「OH!What is this crazy tea!? COOL! SO COOL!!

{まぁ!この狂ったお茶は何!?ステキよ!とってもステキ!!}」


米国人!?日本のお茶飲んで英語で感想ですか死神さん!!

なんかいろんな意味で危険そうなので飲むのはやめよう。

その後死神と彩花さんは意気投合して会話に花を咲かせていた。


「えっ?死神ちゃんあのうどんの作り方を知りたいの?」

「うん!あれクセになりそうだったよ!」


「あのうどんを作るコツは《とりあえず目についたものを全部ぶっこめ》よ♪」

コツでも何でもねぇじゃん。


「おいで死神ちゃん、作り方教えてあげる〜!」

「やったー!」


よせ彩花さん!ゲテモノ料理で迷惑するのはオレだ。そんなオレの想いもお構いなしに二人は仲良くキッチンへ行ってしまった。話の本題に入れねぇ。

とりあえず暇なオレは部屋を見回してみる。オレ達の住むマンションの居間は結構広いんだよね。


「しかし彩花さんの部屋ってピンクだらけだな・・・。」

「でしょ?目がチカチカして嫌になるよ。」

「大変だな。」

「まぁね。」


・・・。


ん?


今何か知らんが会話が成り立ったよ?オレは隣を見てみた。

そこには銀髪の少年が疲れた顔で座っていた。鎖のついた黒のジャケットを着て、レザーパンツをはいている。ロックミュージシャンみたいだな。妙に八重歯が鋭いような気もするし。つーか最近突然現れる奴多すぎ。


「・・・誰だお前?」


「あ、ヴァンパイアっていいます〜、バンプって呼んでください。」

「お〜そかそか、オレは里原準だ。」


・・・。


!!


お尋ね者イター!!


「あれっ!バンプ!?」

「あらあら、バレちゃったわね。」


時間差で驚くオレの後ろから死神と彩花さんが出てきた。


「おぉロシュか、久しぶりだな・・・。」

「バンプ、夜叉さんが探してたわよ?」

「あー、夜叉さんかぁ。んー、まぁいいやどうでも・・・。」


このヴァンパイア、テンション低!仮にも吸血鬼だろうが!


「何で地獄から逃げたりしたの?バカねぇ。」


じゃあ貴様もバカだ。


「別に僕は逃げたわけじゃない・・・。」


へ?逃げたわけじゃないって?

ヴァンパイアは疲れた目で彩花さんを睨んだ。


「この彩花って女子大生が謎の呪文とかいうやつで僕を地獄から呼び出したらしいんだ。」


ヴァンパイアに睨まれた彩花さんは照れ笑いしながら本を持ってきた。


「そうなのよ〜!たまたま本屋で見つけたこの《初心者でも簡単に作れるパシリ》を試したらホントに成功しちゃったの〜!アハハハ♪」


うん迷惑千万とはまさにこのこと。

ナルホドね、じゃあこのヴァンパイアは被害者ってワケだ。

「じゃあ呪い解いて帰ればいいじゃん。」


オレがそう言うとヴァンパイアはオレにしがみついてきた。

「それが無理みたいなんですよ〜!なんか知らないけどその《パシリ呪文》には解き方が無いらしいんですよぉ!僕一生この謎女子大生のパシリとして生きていくんですかぁ!?」


おー、いつもテンション低いワケじゃないのか。じゃなくって、一生彩花さんのパシリなんて・・・そりゃ死んでしまうよな。

オレにしがみつくヴァンパイアを見た死神はケラケラ笑っていた。そして彩花さんもケラケラ笑っていた。ってオイ。


「アハハハ、やぁねぇバンプくん!まだ一回おつかい頼んだだけじゃないの〜!」

「どこへ行けば《果汁43%ジュース》なんてモノが売ってるんですか!」


おそらく丸一日歩き回ったんだろうな。


「オイ死神、お前バンプくんの呪い解いてやれよ。」


「無理だよ準くん、今調べてみたらそのパシリ呪文の正式名称は《完全束縛奴隷呪文》っていうA級呪文なんだよ♪アハハハ!」


なんで彩花さんがそんな呪文使えるんだよ・・・。


ま、夜叉さん辺りが解いてくれるだろうさ。

さて、これで気になったことは解消されたわけだしヴァンパイアには悪いがさっさと帰ろう。


「じゃあそろそろ帰るぞ死神〜。」

「はぁい♪彩花さんありがとう〜!」

「いえいえ、またね死神ちゃん♪里原くんも!」


まぁあまり関わりたくないけどね。


「バンプくんも何か困ったことがあったら相談しろよ。」

「たすかります〜。」


おそらく迷惑を被るという点でオレとヴァンパイアは似ていると思う。




「降ろしてよぉ準くん〜!」


部屋に戻ったオレは、ゲテモノクッキングを始めるべくさっそくキッチンに向かおうとする死神を持ち上げて脇に抱えながら携帯の番号を押した。


プルルルル、プルルルル・・・


ガチャ

『はい夜叉です。』


「あ、夜叉さん?里原です。実は今ヴァンパイアを見つけたので報告しようと思って。」


『あ、あぁ・・・たしか《須藤彩花》殿のお宅でしたかな?』


え、何で知ってるの夜叉さん?


「何で居場所を知ってるんですか?」


『・・・実は昨日あの後バンプの気を感じたので隣の部屋へ行ってみたのです。』


気を感じたってなんかカッコイイな。つーか暴れるな死神!


『案の定その部屋にはバンプがおりました。呪文の事情も聞きました。もちろん彼は某に助けを求めてきたので某は呪いを解いて連れ戻そうとしました。しかし、そのとき奥から彼女が・・・須藤彩花殿が現れたのです。』


・・・まさか。


『彼女は満面の笑みで某に向かって恐ろしい一言を言い放ちました。それはそれは恐ろしい一言を・・・グスン。』


その一言がスゲー気になるけど聞かないでおこう。だって彩花さんだもん。


「で、夜叉さんは連れ戻すことができずにバンプくんを残してきてしまったと・・・。」

『面目ない。』


ナルホド、ヴァンパイアが疲れた顔をしていたのは絶望の意味もあったのか。


「・・・わかりました。とりあえずバンプくんはオレも気遣うようにしますので。」

『よろしくお願いします里原殿。』


そして電話は切れた。

死神はオレの腕の中でジタバタしている。そんなにゲテモノクッキングに魅了されたのか?


「死神、ゲテモノ料理はよせって!」

「む〜!せっかく教えてもらったのにぃ!」


教えてもらったのは《とりあえず目についたものを全部ぶっこめ》ってことだけだろ。オレは一冊の雑誌を死神に見せた。


「死神、女性は大抵《料理が上手》な人が好まれるんだぜ?これは流行とか以前に基本なんじゃないのかな?」


「・・・マジ?」


いや、マジ?ってお前・・・。


それから死神はオレが昼飯を作る様子を一生懸命見ていた。(腰にぶらさがっているから見えているかは謎)

これを機にコイツもまともな女になってくれれば・・・


「飽きた!」


無理っぽいですな。




呆れた顔で昼飯の支度をしていると突然玄関の扉が勢い良く開かれた。そういえば鍵掛け忘れたな。誰だよ。


「た、助けてください準くん!」


早速来たか不幸なヴァンパイア。


「どうしたバンプくん?また彩花さんに何かされたのか?」


オレがそう言うとヴァンパイアは普通に居間に座った。


「いえ、何もありません。気分で臨場感出してみただけです。」


ふざけんな吸血鬼。


「それよりバンプ良かったじゃな〜い、仕事サボれるじゃんか〜!」


バカヤロー死神、ヴァンパイアは好きで来たわけじゃないんだぞ。


「ぶっちゃけサイコー」


帰れ吸血鬼。


また増えたよ変キャラ。哀れな奴だと思って同情して損した。


「で、何しに来たんだバンプくんは?」


「んーと、・・・何だっけ?あっ、そうだ!彩花さんにまた変なおつかい頼まれそうになったから逃げてきたんです。」


「ほう、今度は何頼まれたんだ?」


「えーと、なんて言ってたっけ?たしか名前の中に《いど・・・?》とかが入ってたような気がします〜。」


井戸?違うな。でも《いど》が入る言葉なんていくらでもあるわけじゃない・・・。多分彩花さんのことだから《メイド》とかだろうな。


「あ、思い出しました!たしか《処刑道具》です」


売ってるわけねぇよ!

つーかヴァンパイアも何で《いど》とか微妙なトコだけ覚えてんだよ!


「アハハハ!バンプ、処刑道具なんてゲルさんのお店行けば簡単に手に入るじゃん!」

「あ、そうだな。」


そんな危険なモンが簡単に手に入ってたまるか。

ゲルさんのお店って雑貨屋カオスディメンジョンのことか。本当に売ってそうだから怖い・・・。


「ところで何でロシュはこの世界にいるんだ?」


「《最高機密任務》よ!だからあまり口に出さないでバンプ!!」


「はっ、失礼しました!」


居候が最高機密任務だとよ・・・。

そんなどうでもいい話をしながら居間でまったりとくつろぎ始めたヴァンパイアだったが


ガチャッ


「バンプ発見!!」

「ギャァァァァ!嫌だぁぁぁ!!!」


バタン!


突然部屋に飛び込んできた彩花さんに強制連行されていった。一瞬の出来事だった。



「・・・何だったんだ?ま、いいか。ホラ昼飯だぞ死神〜。」

「やったー!」


今日の昼飯はグラタンだ。ちょっと重いかな?


「熱っ!」


「ドジだな〜、皿は熱いから気を付けろよ。」


「もうっ!早く言ってよね準くん!」


「ははは、すまんすまん。って、熱っ!」


「準くんだってドジじゃんか!」


「ふっ、そうだな。」


「アハハハ♪」



・・・?


何だこのほんわか昼食ムードは?

・・・まぁ、悪くない。たまにはいいか。

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