第17話 死神と発熱
あーまた遅刻しちまう!制服制服、制服はどこだ〜?
「死神〜朝飯食ったか〜!?」
鞄、鞄っと。よし、OK。おっと、ネックレスとブレスレット、ピアスをつけて、と。
「おーい死神?もう行くぞ〜!」
・・・?
あれ?返事がない。仕方なくキッチンを覗いてみると・・・死神はテーブルにうつ伏せになっていた。
「うーん・・・なんかクラクラするよ準くん〜。」
死神は目を回しながら脱力している。オレは死神の額に触れてみた。ぅわ、熱っ!
「お、お前ひでぇ熱じゃねぇか!」
「う〜寒気がするぅ〜。」
ふむ、こりゃあまだ上がるぞ。
「とりあえずベッド行くぞ。ほら頑張れ。」
「へろ〜ん」
ホントにへろ〜んと床に崩れやがった。仕方ない、運ぶか。よぃしょっと
「お花畑が大乱闘だ〜ワッショイワッショイ」
見るならもっとマシな幻覚を見ろ!
オレは死神をベッドに寝かせ、濡れタオルを額に乗せた。死神は頬を真っ赤にしてボーッとしている。
「死神、今からオレが昼食作って置いておくから今日一日おとなしく寝てろよ。いいな?」
「おーけーおーけー、致死武器〜血しぶき〜・・・スプラッタ!」
駄目だ。何か知らんがコイツをこのまま一人にしては駄目な気がする。
・・・ったく世話のかかる居候だ!
オレは携帯を取り出して電話を掛けた。アイツに電話掛けるのは少し抵抗があるけど・・・。
プルルルルル・・・
ガチャ
『ジャイアントスイングゥ?』
え、どういう事?
「あー美香?オレだけど。」
『オレオレ詐欺?どこへ振込めばいいの?』
「・・・。オレ今日休むから担任に伝えといてくれ。」
『え!?〈すっとんきょうに安く絡むから単三電池を分けてくれ〉!?馬鹿?馬鹿だ!馬鹿がいるよ〜!すっとんきょうに絡むなら普通欲しがるのは単四だっつーの!アハハハハ』
だからこいつに電話するの嫌だったんだよ〜!
「じゃあよろしくな美香。」
『はーい了解♪里原くんどうしたの?成人病?』
「ああそうだ。」
ブツッ
多分彼女はとんでもない病名を担任に伝えるんだろうな。
それより死神だ!
「死神、気分は悪くないか?」
「濃ゆい。」
こっちが気分悪くなったよ。
とりあえず今日一日この死神の看病をすることになってしまった。ん〜さすがにローブは寝にくいだろうな。
死神がいつも寝る時に着ているパジャマはもう洗濯してしまったからな。オレは替えのパジャマを取り出した。
「死神、オレは薬探してくるからこれに着替えておけよ。」
「は〜い。」
オレは薬箱を探しに寝室を出た。しかし死神って風邪ひくんだなぁ。こっちにしてみたらいい迷惑だ。
コンコン
「死神〜ちゃんと着替えたか〜?」
「着替えたよ〜」
返事をきいたオレは部屋に入った。
ガチャ
うん、ベタに後ろと前が逆だ。
「おい何やってんだよ〜、ほら後ろ前だ。」
「ぬ〜。」
死神の服を戻し、運んできた薬とプリンを死神に渡した。
「ほら、プリン持ってきたぞ。」
「ごちそうさま。」
「早っ!!」
どうやらプリンは喉を通るらしい。
「お前さっきちゃんと朝飯食ったか?」
「食欲ない〜。」
おそらく一生のうちに何度聞けるかわからないくらい貴重な発言だな。とりあえず何か腹に入れないと薬がのめないな。オレは再び部屋を出た。
ん〜おかゆなら喉を通るかな?
死神がベッドからオレを呼ぶ。
「準く〜ん!」
「どうした〜!?」
「おかゆにプリン混ぜ・・・」
「ふざけんな〜」
あいつ最近やたらプリンを好むな。今度作ってやるか。
?
・・・何で?
何で今オレは作ってやるかとか考えたんだ?これはまさかいつもより相手に優しくしてしまう病人効果というやつか!
「ほらおかゆだ。それ食ったら薬飲んで体温計れよ。あとオレは居間で勉強してるから、何かあったら呼べ。」
「準く〜ん!」
「早っ!まだ部屋から出てもねぇよ!なんだ?」
「学校は〜?」
意識を朦朧とさせながら〈血しぶき〉だの〈スプラッタ〉だの叫ばれたら一人にしておけるわけねぇだろうが。
「・・・気分だ。」
そう答えた時すでに死神は寝息をたてていた。勝手な奴だ。
まぁ静かになったからいいか。
オレは寝室を出て居間へ行き、勉強を始めた。平日の昼間だから聞こえるのは微かに車が走る音と鳥の鳴き声だけだ。そういえばこんなに静かな時間を過ごすのは久しぶりだな。あいつが来てから静かに過ごせた事なんてなかったから。
しばらく勉強をした後死神のタオルを取り替えにいく。寝室では顔を赤くした死神が寝ていた。どうやら夢でうなされているようだ。さっき体温を計ったら40度近くあったからな。起こしてやるか?
「う〜ん、バリケード破りは掟破り・・・」
やっぱこのまま悪夢を楽しんでもらいましょ。
「う〜ん、う〜ん、ぅ、うわぁぁぁ!あ、アレ、アレは・・・!」
「お、おい死神、大丈夫かよ!?」
「・・・何だっけ?」
知るか!
その後タオルを替えに行く度ずっとこんな感じだったからたまんねぇよな。
夜になると大分熱は下がった。死神は普通に起き上がり、テーブルで晩飯をがっつり食べていた。
「お昼ご飯寝過ごしちゃったからね!準くんおかわりー!」
コイツこれで飯七杯目だよ〜。
やれやれ、やっと元気が戻ったか。もうこいつの看病は勘弁して欲しいぜ。猛スピードで晩飯を食べる死神の前に座ったオレは頬杖をつきながら溜め息を吐いた。
プルルルルル、プルルルルル
ん?誰だ?
「はい里原です。」
『あ!さ、里原か!?』
この声は担任だ。
「はい。あ、七崎美香に欠席することを伝えたんですけど・・・」
『おう!聞いたぞ!!それよりお前大丈夫なのか!?七崎からは〈里原くんの脳髄がポップコーンみたいに弾け飛んだの〜!〉って聞いたから。そうか、無事か。脳髄以外は。そりゃあ良かったな!ハハハハ・・・』
ブツッ
・・・馬鹿ばっかり。
「準くん晩ご飯まだ〜っ?」
・・・馬鹿ばっかり。