第13話 死神と準とワル餓鬼達
地獄編の続きです☆
ピンク袴の男が歩いている姿は地獄でもやはり目立つのだろうか、オレは魂や仲居さん、掃除係さん達のたくさんの視線を浴びながらマップに目を落として旅館の廊下を歩いていた。
廊下といっても都市クラスの旅館の廊下だ。その横幅の広さは車二台がすれ違うこともできるだろう。ホテル街も地獄街も全てが旅館内にあるのだ。ちなみにオレ達が今いるのは五階。面積も高さも規格外で正直ワクワクさえする。
隣では同じくピンク袴姿の死神がフワフワ浮いて辺りの店を見回している。時折定食屋で立ち(浮き)止まるが無視して進むオレを見て渋々諦めていた。
目的地から大分離れた場所で、オレを先導していた死神が超方向音痴だということが判明したせいで、結果オレがマップを見ながら《地獄街》へ向かうことになってしまっていた。
「このまま進めば《八大地獄温泉》だ。そこを通り抜けたら《地獄街》に着くぞ。」
「え!!?準くん今どこを通り抜けるって言った!?」
「ん?《八大地獄温泉》だけど?」
「何で何で!?私あそこの餓鬼嫌いだって言ったじゃんか!」
「あぁ、そんなようなこと言ってたな。でもこれが一番近いルートだし、早くしないと漠さんに枕届ける前に一日が終わっちまうぞ。」
「むー。あいつら絡んでこなきゃいいけど・・・」
「どんな連中か知らないが通路で温泉の前を通るだけだろ、それにこの広さじゃあ会う方が難しいと思うぜ?お前も迷子にならないようにちゃんとオレにくっついてろよ。」
「うんっ!よいしょっ」
「ちょっ、オイコラ!そのくっつくじゃねぇ!だぁー降りろー!」
オレ達は《八大地獄温泉》と書いてある部屋の前に着いた。周りからの視線は余計にオレ達に集中している。つーかピンク袴姿の男が同じくピンク袴姿の女を肩車してるんだからそりゃあ目立つぜ・・・。
しかしこの部屋に着くまで周りには一切部屋がなかったからこの温泉の規模は大体想像がつく。
『んぉ!おい見ろよ、アレ死神野郎じゃねぇの?』
『キヒヒヒ、ホントだ。ローブ着てねぇから見落とすところだったぜ。』
『下の奴は誰だ?彼氏か?』
『知るかよ、これから調べれば良いんじゃね?つーかアイツに彼氏ができるわけねぇよ。』
『違ぇねぇ!ヒャハハハハハ』
どこからかそんな言葉が聞こえてきた。肩車している死神を見上げるとその顔はかなり不機嫌だった。多分会いたくないと言っていた餓鬼なのだろう、事務室で見た餓鬼とは違い、包帯姿に作業服を着たそいつらは廊下に出て来ながら笑っていた。八人と聞いていたが今は四人だけか。
『ようロシュ!紅しょうがアレルギーは治ったのかい?』
『ヒャハハハハハ!』
フン、どこかのやんちゃ坊主みたいな奴らだな。こんな連中が温泉長?
オレは死神を肩から降ろした。死神の手にはいつの間にか大鎌が握られている。
「おのれ餓鬼の分際で生意気なぁ!その首たたっ切ってくれるわ!!」
『おお怖い怖い、そんなに怒るなって。久しぶりの再開じゃんか。』
「あんた達になんか会いたくもなかったわよ!」
『おーすごい言われようだな。・・・ん?ところで何で仲居服なんか着てるんだ?』
「関係ないでしょ!私たち急ぐから、行こっ準くん。」
「ん、おぅ。」
『あっ、わかったぞ!もしかしてお前さ、今の身分は仲居なんじゃね?』
「・・・っ!」
『ほら当たりだ!また罰くらったのかよ!』
『てことはオレ達がこき使っても良いってことじゃない?』
『じゃあ風呂掃除でも頼もうか!』
「何で私がこき使われなきゃいけないのよ!このツルッパゲ!!」
『アゥ!カッチーン!!それ言っちゃう!?』
『ツルッパゲは傷つくから・・・。』
『お前マジでヘコんでんじゃねぇよ!』
『だってハゲにツルついちゃったよ?』
『包帯姿だから誰にもわからねぇって!』
どいつもこいつも全く同じ格好だから誰が誰だかわかんねぇ。もう『』の前にA、B、Cとかつけよっかなぁ?つーか餓鬼ってハゲなんだ。
餓鬼A『んなことはどーでもいいんだよ!』
B『とにかく、今身分はお前よりオレ達のほうが上なんだよ!』
C『そうだ!夜叉様達に言い付けるぞ!!』
D『ツルが付いたハゲに未来はあるのだろうか・・・』
ABC『てめえ・・・そろそろ黙らねえと包帯にエタノール染み込ませて燃やすぞ。』
あ、こいつら面白いわ。
じゃなかった、夜叉さん達に何か誇張してチクられたら課題不合格じゃん。
「死神、こいつらがカブキさんに悪いように陰口したらお前マジでお仕置きだぜ?ここは言うこと聞いておいたほうが良いんじゃねぇの?」
「・・・むー。」
A『ハハハハハ、決まりだな!』
B『オラさっさと温泉部屋いくぞ!』
C『八ヶ所も掃除だなんて大変だな、ヒャハハハハハ!』
D『よしみんな、オレ達八人のチーム名は温泉戦隊に決定し・・・』
シュボッ
D『ギャァァァァ尻が熱いよ〜!水水水をくれー!!!』
ライターで尻に火を点けられた餓鬼Dは温泉部屋の中に走っていった。
死神はチクショーだのいつか殺すだの言いながら餓鬼達に続いてオレと温泉部屋の中へ入って行った。
中に入るとさらに四人の餓鬼がそれぞれの温泉部屋の前の番頭台に座って帳簿をつけていた。
E『ん?源泉装置の調子を見に行ったんじゃなかったのか?』
A『まぁチビ共のイタズラだろ。』
E『そうか、困ったもんだ。』
オレ達に気付いた餓鬼Fが番頭台から降りて近づいてきた。
F『おやおや!小生意気な死神娘が仲居の格好してるぜ!?』
B『今日一日仲居係やらされてるらしいから、風呂掃除でもさせようと思って連れてきたんだよ。』
F『ギャハハハそいつぁいい!』
さっきから無言の死神を横目で見るとか・な・りご機嫌斜めのご様子だった。
G『そう言えば今尻に火が点いた奴が猛スピードで風呂に飛び込んでいったぞ?』
C『まぁ気にするな。』
H『じゃあ早速ヘボ仲居さん達にゃオレの風呂から掃除して貰おうかね。』
というわけでオレ達は一つの温泉部屋に入って掃除を始めた。八人がニヤつきながらオレ達が作業する様子を見ているのは結構ムカつく。めんどくさいからもう『』の前に記号つけてやらねぇ。
それから浴槽周りを掃除しおわった後、今度は浴槽の中を掃除する。すでに二時間が経過していた。死神が言うには普段ここの温泉掃除は十数人で行うらしい。ふざけんなマジで。
「死神、あんまイライラするなよ?」
「うん、準くんだって我慢してるんだもんね!・・・でも準くん眉間に皺寄ってるよ?」
「・・・気にするな。」
『オラオラ!手が止まってんぞ!』
『浴槽掃除が終わったら次は桶洗えよ。』
『つっても五十個近くあるけどな!アハハハハ』
こいつら調子に乗りやがって。
『おい兄ちゃん、何だよその反抗的な目は?』
『夜叉様達に言い付けちまってもいいの?』
『兄ちゃんの可愛い顔に傷つけちゃうぜ?ヒャハハハハハ!』
パカーン!
「じ、準くん!」
餓鬼の投げた風呂桶がオレの頭にクリーンヒットした。
『やりー、命中〜♪』
『それ面白そうだな!』
「準くん大丈夫!?あいつら・・・っ!」
「よせ死神、・・・大丈夫だ。もうしばらくは耐えられるから。」
「準くん・・・。ごめんね。」
次の瞬間、大量の風呂桶がオレに向かって飛んできた。
次々と後頭部や顔に当たる。やれやれ、まぁいいさ。あとちょっとやらせとけば飽きるだろうから。
『そら当たりぃ!』
『兄ちゃんもヘボいよなぁ。だっせぇ女物の仲居服なんか着てよぉ。』
餓鬼の一人がオレの近くまで来て頭を思いっきり叩いた。
スパァン!!
その瞬間オレの頭の中で何かがプツンと切れた。
『オラ何とか言え・・・』
「・・・貴様、宙を舞ったことはあるか?」
『え?うわあぁぁぁぁ!!!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ドカァン!
おー、すごーい!餓鬼がぶん投げられて壁に激突したよ。
「オラァァァァ!!!身体の一部でも置いていきやがれクズ野郎共!!」
『ひっ・・・やめてぇぇぇぇ!!!』
『ぐっ・・・ギャァァァァ!!』
準くん怖〜い。・・・あ、そうだ!
こんにちは読者の皆様☆《セクシー死神》こと《ロシュケンプライメーダ・ヘルツェモナイーグルスペカタマラス七世》でぇす!!
ちょっと準くんが解説不能な状態になっちゃったのでしばらく私の視点でお楽しみくださいませ☆
今風呂場は地獄絵図みたいなの。私はスカッとして別に良いんだけどね☆
何でこんなことになってるかってゆぅと、
最初餓鬼の奴らが準くんに向かって風呂桶をぶつけて楽しんでたの。ムカつくよねっ!準くんはずっと耐えててすごかったんだから!で、餓鬼の中の一人が準くんに近づいたかと思ったらスパァン!!って頭を思いっきり叩いたのよ!!最低!!
でもその瞬間から準くんの様子が変になったの。何か餓鬼に向かって呟いたかと思ったらいきなり腕をつかんで天井に放り投げて叩きつけたのよ!すごい怪力でしょ?
最近は忘れてたけど、私が調べた準くんのデータの中に備考として《大規模な武闘派不良集団の元リーダー》って書いてあった事を思い出したの。怖すぎ!でも何故か普段は優しいのよねっ。
あっそれでね、気絶した餓鬼を見た他の餓鬼達も〈この野郎!〉とか〈ぶっ飛ばしてやる!〉とか言って準くんに襲い掛かったの。でも結果は
『うぅ・・・痛ぇ。』
堅い壁にヒビが入るほどの勢いで叩きつけられて倒れこんだ奴や、隣の温泉でプカプカ浮いてる奴、壁を貫通して廊下でうずくまってる奴、全員死んじゃうんじゃないかと思うくらいボコボコに殴られて動けなくなってたり。
準くんはというと・・・うわぁ一人の首を掴んで持ち上げてるよ。目が怖いよぉ・・・。てゆぅか多分カブキさんに勝てるよ準くんっ。
「てめぇら人が黙ってりゃ調子ぶっこきやがって。いっぺん死ぬか?ん?ここ地獄だしよ。まぁそう簡単には死なせねぇけどなぁ!!」
『ひぃ・・・!ぐふっ・・・す・・・すいませんでした・・・ゲホッ』
準くんはドサッと餓鬼を乱暴に降ろした。
そろそろ我に返る頃だね、じゃあ読者の皆様、今度私視点のお話があったときにまたお会いしましょうね〜!あっ、最後に私のお薦め料理はヨーグルトを強火で・・・
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やべ、やっちまった。
気が付くと温泉部屋はボロボロに破壊されており、辺りには気絶した餓鬼が転がっている。
そうだ、死神は?
「おーい、死神?」
「何で途中で途切れるのよ!!せっかく私が最後に美味しい食べ方を・・・」
何言ってんのコイツ?
「おい死神、大丈夫かお前?」
「あ・・・準くん。」
少し怯えた目でオレを見る死神。
「ほら、さっさと獏さんの枕買いにいこうぜ。雑用係終わって家に帰ったらすぐに晩飯作ってやるから。」
そう言った途端に表情を明るくする死神。わかりやすい奴だなぁ。
「うん!今日の夕飯何にする〜?」
「そうだな〜、クラムチャウダーでも作ってやるよ。」
「やったー!」
そんな会話をしながらオレ達は浴室を出て、さらに温泉部屋から廊下へ出て地獄街へ向かった。途中で廊下にうずくまっていた餓鬼を死神に気付かれないように部屋のなかへ蹴り飛ばしながら。
ま、もし課題が不合格でも一緒にお仕置きを受けてやるさ。
次回で地獄編は終わりです☆