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死神といっしょ!  作者: 是音
114/116

第114話 死神と準で料理

《はっけよい、のこったー! のこったのこったー!》


「のこったー!」


 今日の死神さんはテレビで相撲観戦です。

 手に汗握る熱戦に見入ってます。

 同じように居間に座ったオレはテレビではなく、家計簿と睨み合っていた。


 ………むむむ。


 やっぱ食費すっげぇなオイ。

 育ち盛りとはいえここまで食べるとは。

 でも最近はあの高額な雑誌を買っていないからよしとしよう。


「のこったのこったー!」


《のこったのこったー!》


「のこったのこったー!」


 のこった連呼中。

 ちなみに奴が注目しているのは屈強な力士ではなく、行司のオジサンだったり。

 相撲観戦というより、行司観戦だ。


「のこったのこったー! のこったのこったー!」


《のこったのこったー!》


「………」


《のこったのこったー!》


 死神は突然硬直し、ずりずりとテレビの傍まで移動する。目を細め、画面中心で声を張る行司のオッサンを指差した。


「ねえ準くん」


「どうした?」


「このオジサン誰?」


 お前知らずに叫んでたのか!


「さっきからうるさいオジサンなんだけど」


 しかも悪印象。

 だったらなんで同調して叫んでたんだ。


「つーかお前、楽しそうに叫んでたじゃん」


「うん。なにが《のこった》のかなぁって。別に人生はたいして残ってないくせに」


「クォラァァァ!!」


 オレは素早く死神の頭を鷲掴みにした。

 リンゴをも砕く握力だぜ。


「みぎゃぁぁぁ! 痛いよー!」


「言って良いことと、悪いことの区別もつかないのかしら?」


「口調が変だっちゃー!」


 そりゃ口調も変わるわ。暴言にも程があるぞ貴様。

 足をばたつかせて抵抗する金髪頭をテレビに向ける。


「《ごめんなさいでした》と言いなさい!」


「にゃぁぁぁ! 準くんがお母さんみたいだよー!」


「いいから!」


「うー。……《ご愁傷さまでした》」


「まだ言うか貴様ァァァァァ!!」


「みぎゃぁぁぁ! ごめんなさい、ごめんなさい! 冗談だからごめんなさいー!」


――――――――


―――――


―――


「イヤー、ソレニシテモ相撲ガ日本ノ国技ダッタトハ、知ラナカッタネ! AHAHAHAHAHA!」


 誰だよお前。

 相撲なめんなよ。


 死神は外人っぽい口調で喋りながら頭をさすっていた。


 おっと、そういえば今日は冬音さんとナイトメアが遊びにくる予定だったな。昼はうちで食べて行くだろうから今のうちに支度しておかないと。


「今日は私も料理を手伝うぜー!」


「冗談はヒゲだけにしてくれ」


「私ヒゲ生えてねーー!」


 おおっ。突っ込んだな。

 しかし死神が料理の手伝いねぇ。珍しいこともあるもんだ。


「大丈夫なのか?」


「もちろん! 私だって準くんが料理するのをずっと見てきたんだからね!」


 ほー。

 一応学んではいたのか。てっきり腰にぶらさがるばっかりでやる気0だと思ってたよ。

 ちなみにコイツは一年間、何かに夢中な時以外は料理する時いっつも腰にぶらさがり続けやがった。

 いまだに何がしたいのかは不明。


「んー。じゃあ手伝ってもらおうかな」


 居間に座っていたオレは立ち上がり、追うように死神も飛びあがった。


「お安い御用だぜー!」


 さて。死神が手伝うとなると、簡単なものを作るかね。

 二人でエプロンを装着し、キッチンに並ぶ。

 オレの愛用エプロンは黒色。改めて自分のエプロンを眺めてみると、ずっと使ってきたものだから色褪せが見られる。

 つーか、いつも死神が邪魔をする為、小麦粉を始めとする食材から一年間オレを守り続けてきたエプロンだ。頻繁に洗うからどうしても色褪せちまうよな。

 ビバ! オレのエプロン!


 対して死神のピンク色エプロンは綺麗なものだった。

 コイツが料理する時といえばオレが熱を出した時と、ヨーグルトを焼く時くらいだから。

 あとオレの見ていない隙に色々やってるみたいだが、恐いから考えないようにしよう。


「さあさあ! どれから切り刻めばいいのかな!?」


「うん、大鎌を持っている時点でアウトだ」


 一体どんな巨大生物を材料にするつもりだ。


「………《デスカイザー》とか」


 どこのラスボス?


「ちなみに弟の方ね」


 しかも兄弟でした。

 コイツに刃物を持たせるのはとても心配だが、大鎌とか振り回してるし。まぁ大丈夫だろう。

 とか考えつつ包丁を取り出し、死神に手渡す。


「今回は包丁でお願いします死神さん」


「包丁!?」


「おう」


「包丁じゃザコしか倒せないぜ準くん! あまり旅をナメちゃいけないよ!」


 じゃあRPGでもやってろコノヤロー!


「でも包丁だけというのもマニアック……」


 ゲーマーキター!

 もういいや。無視♪


 さてさて、今日は簡単にトマトスパにしよう。手軽に作れるからパスタ系は便利だね。うん。

 麺の消費量は激しいけどね。


「じゃあ死神はトマトを切ってくれ」


「《トマトLv5》が襲ってきた」


 まだゲームの世界に居ました。

 トマトくらいならどう切っても問題ないからな。大丈夫だろう。


「ロシュの攻撃! ズバッ! トマトLv5に大ダメージ! トマトLv5を倒した。チャッチャラーン♪ ロシュのLvが98上がった」


 いきなり最強!

 包丁最強!


 じ、じゃあトマトは伝説の勇者様に任せてオレはパスタを茹でよう。


「トマトが終わったらタマネギも頼むな」


「はーい♪」


 えーと、茹で鍋はどこにしまっただろうか。

 オレはしゃがんで戸棚を開き、鍋を探す。


「《グレートタマネギLv99》が現れた!」


 んー。こっちの棚じゃなかったかな?

 隣の棚を開き、再び鍋を探す。


「グレートタマネギLv99の攻撃! ロシュに大ダメージ! ロシュの目にタマネギの汁が入った! ピーンチ! ロシュ、ピーンチ!!」


 うっせぇなあ。

 あっ、これか!? やっと見つけたー。そういえばしばらくパスタは作ってなかったかもなぁ。

 オレはぐいっ、と戸棚の中からパスタ用の茹で鍋を取り出した。


「ぎゃー! ピーンチ! ロシュ、ピーンチ!!」


〈ドタバタドタバタ〉


 さ、騒がしい。

 鍋を抱えて立ち上がると、死神は包丁を握っていない方の手で目を押さえて苦しんでいた。

 なにやってんだよ。


「うーっ、タマネギの汁が目に入ったよー!」


 わかったから包丁を振り回すんじゃない。危ないから。


〈ザク♪〉


 ……あっ。


「みぎゃあぁぁぁ! 指ちょっと切っちゃったー! うえぇぇぇん!」


 ほらみろ言わんこっちゃない!

 さすがに慌てたオレは鍋を置いて死神の手を取った。

 確かに親指から少し血がにじんでいる。


「ほらまずは包丁を置け」


「うえぇぇぇん!」


「泣くな!」


「うえぇぇぇん!」


「グラマラスなお姉さんはこのくらいじゃ泣かないぞ」


「………ぐす」


 まさか本当に泣き止むとは。

 ちょっと指を切っただけだったから、手早く処置を済ませる。

 絆創膏を指に巻いて……と。


「ほら、終了」


「……ありがと」


「包丁を扱う時はもう少し落ち着きなさい。危ないから」


「……はぁい」


 もー。

 子供に料理を手伝わせる母親の心境ってこんな感じなのかなー。

 こりゃ大変だぜ。

 全国のお母様方、ファイトだ。


「さ、《グレートタマネギLv99》はオレが倒しておいてやるから。お前は《パスタLv72》の相手をしてくれ。余裕だろ?」


「うんっ、余裕♪」


 よしよし。

 死神にはパスタを茹でてもらうことにし、オレは包丁を手に取る。

 見れば、トマトLv5はちゃんと切ってあった。

 オレが料理するのを見ていたというのも、あながち冗談というわけではなさそうだ。


「おおっ。うまく切れてる!」


「でしょ〜? いいお嫁さんになれるー?」


「うーん。もうちょい頑張れ」


「もうちょい頑張ったら、いいお嫁さんになれるー?」


「なれるんじゃないか?」


「頑張る!」


 ぐっ、と拳を握り締めた死神はやる気を増加させた。

 ……茹でているパスタを勢い良くかきまぜるという見事な空回りっぷりを見せるだけだったけど。


 ……お嫁さんねぇ。


 頑張れよ。


――――――――


―――――


―――


 というわけで、パスタ完成っ。

 冬音さん達が来る時間に合わせて作ったから、もうそろそろ……。


〈ピンポーン!〉


 ほら来た。


〈ピンポーン! ピンポピンポピンポーン!〉


 一回でいいよ。

 連打早ぇよ。


 モニター付きの受話器を取ると、やっぱり冬音さんが映った。

 でもなぜか一人。


《おーい準! 準ってば! おーいおーい!》


 なんかすっげぇ慌ててる。

 どうしたんだろ。


「いらっしゃい冬音さん。メアちゃんは?」


《メア? メアは……。あーっ、もう! いいから早く開けろ! メアはすぐに来るから!》


「は、はい!」


 どうやらとても急いでいるみたいだ。トイレを貸してほしいのだろうか。

 フロントの扉を開けると、冬音さんは画面から消えてしまった。


「んー?」


「どうしたの準くん?」


 気が付くとオレの隣に死神が立っており、一緒にモニターの前で首を傾げていた。

 フロントの扉を開けてから、本当に短時間。ウチのインターホンが連打される。


〈ピンポピンポピンポーン! ピポピポピンポピンポーン!〉


 フロントからこんな短時間でここまで来たのは、間違いなく彼女が最高記録だ。


 死神がふわふわと玄関まで飛んでいき、扉を開ける。


「いらっしゃい冬音姉さーん! ……って、どうしたの!? すっごい汗!」


 きっと自宅から猛ダッシュで来たのだろう。この人が汗だくになるなんて滅多にない。


「……はぁ、はぁ、はぁ」


 死神は息を切らす冬音さんの手を取り、居間へつれて行く。オレはキッチンへ水を汲みに行った。


「はい冬音さん、水」


 オレはコップ一杯の水を差し出し、三人は居間へ腰を下ろした。


「あ……あぁ。ありがと」


 コップに入った水を一気に飲み干す。

 その様子に死神は心配そうな眼差しを向けていた。


「ねー、どうしたの冬音姉さん?」


「!」


 冬音さんは思い出したように目を見開く。


「そ、そうだ! 大変なんだよ。私にもよくわからんが、大変なんだよ!」


「?」

「?」


「多分、そろそろメアが連れてくる筈だ」


「?」

「?」


 オレと死神は首を傾げるしかない。

 ナイトメアが連れてくる? 意味がよくわからんが、とりあえず待てばいいのか。


 冬音さんは汗だくだったので風呂を貸してくれと言って居間を離れ、残された死神とオレは顔を見合わせた。


「とりあえずメアちゃんを待てばいいんだな」


「そうみたい。冬音姉さんお風呂かぁ。私も入ってこようかな〜」


 そんな会話を何分かしていると、ナイトメアがやってきた。

 居間の天井がぐにゃりと歪み、死神業者達がいつも我が家乱入に使用するワープゲートが開く。


 先に出てきたのはダークピエロ少女のスカートだった。


「こんにちはです準くん!」


「こ、こんにちはメアちゃん……」


「どうしたんですかー?」


「アハハハハ! メアったら、スカートだからパンツ丸見えー!」


「ギャーーーー!」


 一気に部屋の騒がしさがアップした。


「あ、あれ? 冬音さんはどこですか?」


 スカートを押さえながら着地したナイトメアは部屋をキョロキョロと見回す。


「冬音さんは風呂に入ってるよ」


「あ、そうですかー」


「メアのパンツは黒……」

〈ベギャァ!〉

「みぎゃあぁぁぁ!」


 後頭部に夢魔チョップをくらった死神は頭を押さえて転がり回る。

 お前はしばらくそうしてろ。


「………」


 ナイトメアの白い顔は今や真っ赤だった。


「で、なんか冬音さんはメチャメチャ慌ててたけど。どうした?」


「えっ、あ、はい。そうなんです! そうなんですよ!」


 言いながらナイトメアは顔を上に向け、まだ開いていたワープゲートに向かって叫んだ。


「早く出てきてくださーい!」


 ああ、そういえばナイトメアが誰かを連れてくる筈だ、って冬音さんが言ってたな。


『もー、なんだよメアー。いきなり引っ張ってさー』


『あらあら♪』


 ………。


 どうやら問題となっている人物はヴァンパイアと彩花さんであるらしい。

 ワープゲートから出てきたということは、地獄に居たって事だろ?

 なんで?


「さぁ須藤、バンプ。どういう事か話してもらうぞ」


 首にタオルを巻いた冬音さんが髪の毛を拭きながら居間へ入ってきた。


 バンプと彩花さんは困ったような顔で座っている。

 先に口を開いたのは彩花さんだった。


「えっと……佐久間さんとメアちゃんはもう知ってるみたいだけど。里原くんと死神ちゃんはまだ知らないのよね?」


「?」

「なにをー?」


 彩花さんはニコッと笑い、いつもの調子で宣言した。


「私、須藤彩花は《海外留学》することが決定しましたー!」


 ………。


 ………。


 ………。


「へ?」

「へ?」


 オレはこの人が何を言っているのか、すぐには理解できなかった。

 死神も同じだろう。

 そして間髪入れずに銀髪の少年吸血鬼が付け加える。


「だから僕も彩花さんに付いていく事にしたんだよっ」


 ………。


 ………。


 ………。


「え!?」

「はぇ!?」


「じ、じゃあ……」

「二人は……」


「外国に……」

「行っちゃうって事?」


 恐る恐る頭の中を整理しながら言葉を紡ぐオレと死神。

 そんなオレ達に彩花さんはいつも通りの穏やかな笑みを浮かべて頷いた。


「うん♪ 留学といっても、半年以内には戻ってきちゃうわよ。大学での研究が終わり次第だから♪」


 んな……。


「いきなりのカミングアウトじゃねぇかぁぁぁぁ!」

「いきなりのカミングアウトだにゃあぁぁぁぁぁ!」

次回、第1期の最終話となります!

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