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死神といっしょ!  作者: 是音
112/116

第112話 死神と学校(もひーん♪)

 二月!

 うーん、まだまだ寒いねぇ。

 でも陽が登れば日差しはあったかいし、洗濯物もよく乾く。

 水を触るのが嫌だけどな。

 朝から水を見るのは嫌だよね。見てるだけで冷気を感じるし。

 全国のお母様方。〈朝の冷水撲滅同盟〉を結成しましょう。


 ………。


 というわけで朝です。

 今朝もキッチンという戦場でオレと水との戦いが始まる。朝食というゴールを目指して。


 きゅっ、と蛇口をひねる。


 当然、水が出てくる。


 この棒のように流れる水がビームブレードに見えるぜ。

 触ったら死んじゃうぜ。


 深呼吸をして、息を止めて、透明のビームブレードに手を差し出す……。ゆっくりと。


 んんん〜……。


「アハハハ! おはようパ〜ンチ!!」


〈ばしゃーん〉


 うぎゃあーーーー!


 フェイス・イン・水!


 フェイス・イン・水!!


 フェイス・イン・水ーー!!


「おはよう死神コラァァァァ!!」


 黒ローブを引っ掴んで水の中へ♪


〈ばしゃーん〉


「みぎゃぁぁぁ! フェイス・イン・水ー!」


 えっと、しばらくこんな争いが続きました。


――――――――


―――――


―――


「いっくしゅっ!」


 箸を片手にくしゃみをする死神。

 首にはタオルを巻いてい……。


「いっきしっ!」


 む、くしゃみが出た。

 冬の朝っぱらから水のかけ合いをしてりゃあ当然の結果だろう。


「で、お前はなんで朝からパンチなんだ?」


 おはようパーンチ! なんて節操のない挨拶もありえねぇよ。


「最近パンチの研究をしてるの!」


 いきいきとスポーツ研究家魂を見せる。


「ほほう。で、《おはようパンチ》の研究結果はどうだった?」


「うん、まるで冷水を顔にかけられたような衝撃だったよ〜! アハハハハ」


「………」


〈ビシッ〉


「ふぎゃ!」


 わはは、オレもデコピンの研究を始めようかな。


「痛いよー!」


「パンチの研究なんてやめなさい!」


「やだ!」


 うわぁ研究熱心!

 打撃攻撃研究家にでもなるつもりだろうか?


「今日は学校で美香ちゃんと《コンソメパンチ》の威力について語るんだから!」


 味覚攻撃キター!

 そりゃあもう手が止まらないだろうな。


 ………。


 おっと、のんびりしてる場合じゃない! 遅刻してしまう。

 オレは慌てて新聞を折りたたみ、食器を片付けてキッチンを出る。


「うゅんひゅん!」


 口を食物でいっぱいにしたままの死神に呼ばれた。


「へへうほ、うゅんひゅんあーいふひ!」


 う〜ん、未知の言語♪


 適当に答えとこう。


「それは光栄至極です」


「うふふ〜♪」


 会話が成立した。

 アホはほっといて洗濯物を干さなきゃ。


「デストロイごちそうさまだぜー!」


 まさかの破壊愛好家の口グセが背後から聞こえた。


――――――――


―――三十分後


 ……。


 ………。


 走らないと完璧に遅刻だ。

 オレは玄関でため息を吐きながら立っている。


「うっひょー! 寝グセすっごーい!」


 コイツの所為だ。

 朝食を終えた後、まさかの二度寝を決行し、さらにその時についた寝グセがまたスゲェ。


 もうボッサボサ。


 金髪ボッサボサ。


 ボッサボサ金髪。


 ボッパツ


 何言ってんだろオレ。


「死神ー! 早くしろよ遅れちまうだろー!」


「待って、待ってよ」


 ドタバタと室内を走り回る音。

 携帯の時計を見たオレの焦りは増すばかり。


「やべぇって! 時間やべぇって!」


「髪だけは直すのー!」


「学校で渡瀬や美香にやってもらえばいいだろー!」


「私に《ガッツァボムヘアー》で外を歩けって言うの!?」


 ガッツァボムヘアー!?


 あのボッサボサ寝グセの事らしい。

 確かに爆弾ボムっぽい。


――――――――


―――それから更に七分後


 ガッツァボムヘアーを七分で直した死神と部屋を出る。

 エレベーターを呼ぶ際、無意味にボタンを連打してしまうのは遅刻しそうな時によくある。

 階段を使えば早いだろうと思うかもしれんが、七階だから実際はエレベーターの方が早い。体力も節約できる。


〈ウィーン〉


 上からエレベーターが降りてきた。


〈チン〉


〈ガーー〉


 エレベーターの扉が開く。


〈ポチポチポチポチポチポチポチポチ〉


『あうーヤバいー。遅れちゃうよー!』


 ………。


 中で渡瀬由良がボタンを連打していた。


〈ガーー〉


「閉めるな渡瀬ー!」

「由良ちゃーん!」


「はわっ!?」


 オレ達に気付いた渡瀬はギリギリで扉を開け、オレ達を中へ入れた。

 危ねぇ……。


「おはよう由良ちゃん!」


「おはよっ、死神ちゃん」


 挨拶を交わす二人を横に、オレはただただ階を示すランプを睨み続ける。

 スムーズに一階までノンストップで降りてくれと祈りながら。


〈チン〉


 ぐぁ! 途中で止まりやがった。


〈ガーー〉


 扉が開く。


〈ポチポチポチポチポチポチポチポチ〉


『やっべ! これマジ遅刻じゃない! バイク壊れてるのよー』


 高坂早苗先生が、外でボタンを連打していた。


『……あ』

「……あ」


 ………。


 オレと目が合う。


 ………。


〈ポチポチポチポチポチポチポチポチ!!〉


 オレは全力で《閉まる》のボタンを連打した。


『お、おいコラ、待て里原ー!』


〈ガーー〉


 ふはは。

 あー、今朝も平和だぁ……。


〈ガンッ〉


 うわっ、閉まる扉の間に足を突っ込みやがった!


〈ガーー〉


 再び、扉オープン♪


 オレに逃げ場ナッスィン♪


「おはようクソ原くん♪ 今日は雨が降るよ、傘は持ってきたかい?」


 すっげぇ。

 オーラすっげぇ。


「《血の雨》は室内でも降りますのでお気を付け下さーい」


 ひっ。


「さ、早苗ちゃんが……」

「あ、朝から恐いです」


 よし。

 このホラー映画のタイトルは《スプラッタエレベーター》で決まりだ。


「悲鳴のような突風が吹くことでしょーう♪」


「うわぁぁぁぁぁ!」


――――――――


―――――


―――


 遅刻しました。


 オレだけ遅刻しました。


 戦争から逃げ帰ってきたような姿のオレだけ遅刻しました。


 仕方なく一現目は遅刻原因にもなった高坂先生の居る保健室で過ごし、教室へ向かったのだった。


 教室へ入ると、オレの席に三笠が座らされていた。


 死神と美香と渡瀬が目を輝かせてその周りを囲んでいる。


 今日は死神にとって特別な日なのだ!


 そして三笠の頭は………《モヒカン》だった。


「いやぁ、なかなか良い伸び具合でしょう死神さん」


 誇らしげに自分のモヒカンを撫でる。


「うん! 良い良い! 育毛剤を一部分に塗り続けた甲斐があったねっ!」


 褒めちぎる死神。


「アハハハハ!」

「アハハハハ!」


 笑う渡瀬&美香。ってオイ。

 つーか何でオレの席なんだ。死神の席と化しているのは事実だけどさ。


「もひーー!」


 変な掛け声でモヒカンをひっぱるのはやめろ死神。

 グラサンモヒカンも笑いながら頭揺らしてんじゃねぇよ。


「いやぁ里原くん。僕が一部分の髪をこれだけ伸ばすまでの苦労話を聞きますか?」


 いや、いいよ。


「聞きたいぜー!」

「聞くー!」

「聞きますよー!」


 もう聞く気まんまんな三人。つーかキャッキャッ言いながらモヒカン触りまくってる。


――――――――


―――――


―――


三笠:【えー、まず僕のスキンヘッドに育毛剤を塗る作業からなんですが……】


〈ぐいぐいぐいぐいぐいぐい〉


死神:【もひーーん!】

美香:【もひーーん!】

由良:【もひーーん!】


(三人でモヒカン引っ張ってる!)


三笠:【……であるからして、薬液を頭頂部から順番に……】


〈ビシバシッ! ピシッ、パァン! スパァン〉


死神:【もひーーん!】

美香:【もひーーん!】

由良:【もひーーん!】


(今度は側頭部を叩いてる!)


(………)


(《もひーーん!》って何?)


三笠:【……そういうわけで生えてきたのが年末。それからが早かったですよ。ええ、まさに魔法のように僕の頭部には見事なモヒカンが………】


〈ヴィィィィィィン〉


死神:【もひーーん!】

美香:【もひーーん!】

由良:【もひーーん!】


〈ジョリジョリジョリジョリ!〉


三笠:【……え?】


〈ジョリジョリジョリジョリ!〉


準:【うわぁぁぁ! バリカンで早速モヒカン剃ってるーー!!】


三笠:【どわぁぁぁ! 頭がジョリジョリいってますよーー!!】


――――――――


―――――


―――


 《モヒカン三笠》は、ものの数分で《スキンヘッド三笠》に戻りました。

 やっべ、涙出てきそう。


「いやー快感だよー。アハハ」

「三笠くんに苦労してもらった甲斐があったわねっ!」

「ですね〜」


 満足気にバリカンを片付ける悪魔が三人。


 愛情をこめて育てた髪を、一瞬で刈り取られた三笠は……。


「どすこい、どすこーい……」


 めっちゃヘコんでた。

 よくわからんけどめっちゃヘコんでた。


 あ、やっべぇ。目頭が熱い……!

 三笠の落ち込みっぷりにはさすがの死神も動揺したらしく、慌てて肩を叩いた。


「あ。ご、ごめんね三笠くんっ! 一度やってみたかったの」


 続いて美香も三笠の肩を叩く。


「う、うんうん! 私も一度やってみたくて……。ほら由良ちゃんも何か言ってあげて!」


『《悲観的モヒカン》』


 おいコラ何言ってんだ渡瀬ぇぇぇぇぇ!!


 ………。


 結局三笠は今日一日、髪の毛の為に念仏を唱えていました。(?)


 ……ところで。


 後頭部の一部分だけ剃り残してあるのはわざとなんだろうか?

 海苔が張りついたような感じになってる。


「ぷふっ!」

「ぷふっ!」

「ぷふっ!」


 あ、わざとでした。

まことに勝手ながら、少しの間お休みさせて頂きます。申し訳ありません。二月中には復帰できるようにしますので、御了承下さいませ。

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