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死神といっしょ!  作者: 是音
107/116

第107話 《ゲヘナ・ワールド》 VS 《リゾルヴ・パウダー》

【彩花&バンプ in メインストリート出口二番塔前】


――――――――


〈―――ィィィィィン〉


 うぅー。


 ビルに挟まれた大通り。

 僕と彩花さんはビルと向かい合う形で背中合わせに目を左右させていた。

 僕達の敵、タイタンという女性は二番塔の前に陣取っている。

 つまり僕も彩花さんもタイタンさんを視界に入れてはいないわけで。

 なのに僕が警戒するのは正面のビル。


 何故かってゆぅと……。


「来るわよバンプ!」


「う、うん!」


 僕は赤い針を無数に浮かべる。

 彩花さんは僕が作り出した赤い剣を両手に握ってる。

 僕の能力はスバリ赤魔法!

 多種多様の武器や防具、飛び道具みたいな、とにかく戦う道具を精製する事ができるんだよっ!

 えへへ、僕のお父さんやお母さんが精製すれば魔斬刀っていう凄い刀に負けないものだってできるんだよーっ!


「ヤバかったら言いなさいよバンプ♪」


「彩花さんこそ!」


 僕と彩花さんはそれぞれ駆け出した。

 直後、ビルの一部が爆発し、中から糸が五本飛び出してくる。

 先端には鋭い爪がくっついた糸。


「ブラッド・ニードル!」


 襲い来る爪に向けて僕は針を飛ばす。

 でも、まるでそれら全てに意志があるかのように五本の糸は針を全て躱した。

 糸を針で攻撃するなんて浅はかだったかな。

 ゆったりと風に身を任せるような動きをしていた爪糸は、次の瞬間ピンと張られ、勢い良く僕へ向かって爪を振り下ろしてくる。


「ブラッド・シールド……」

「ダメよバンプ!」


 赤い盾を精製して爪を防ごうとした僕は彩花さんに後襟を引っ張られた。


「ふぎゃ!」


 そのまま彩花さんに抱えられて後退。

 十本の爪糸はシュルシュルとビルの中に引っ込み、地面の下を進み、最後にアーマーを纏った女性の手甲にパチンと納まった。


 あ、あのタイタンって人、とんでもない能力だよぉ。


 本当にとんでもないんだよ。今見た通り、十ある爪は全てタイタンさんの指に糸で繋がっていて、つまり彼女の意志で動いているのだー!


 十本の糸をだよ!?

 すっげー!


 しかも爪なんかでビルを掘り進む事なんてできるわけがないのに。


 彩花さんはというと、それを見て

「うーん?」

 とか言ってる。

 このままじゃタイタンさんに近づく事すらできないよ〜。


「よし、彩花お姉さんは考えたわよバンプ」


「へ?」


 鞭のようにしなりながら次々と襲い来る爪に対して、彩花さんが何やら思いついたらしい。


「ここは一つ、バンプがボコボコにやられる様子を観察してみて……」


「ぶっ飛ばすよ!」


 僕に餌になれという提案でした。

 僕がボコボコにやられる様を冷静に観察するんだってさ。

 この悪魔!!


「まぁ! ぶっ飛ばすだなんて……。あの可愛いバンプが私に向かってそんな事を……ぐすっ」


 うわ、落ち込んでる。

 でも泣いてる彩花さんって80%は嘘泣きなんだよね。

 残り19%はワサビなんだよね。


「レディの精神を分析してはいけません!」


ベシィ!


 痛いー! 彩花さんが叩いたー!

 ひどいー!


「バンプを叩くと見せかけて〜……」


 今もう叩いたじゃん!


 僕を叩いた彩花さんは、遠くで爪をジャリジャリ鳴らすタイタンさんに向かって、持っていた赤い剣を二本とも投げた。


 回転しながら二本はタイタンさんに切り掛かる。


『おっと、甘いわよ』


 タイタンさんは腕を振って人差し指の爪糸を一本だけピュンと飛ばした。

 ワイヤーで繋がった一本の爪が空を切って進む。

 タイミングよくタイタンさんがクイッと人差し指を動かすと爪は起動を変え、二本の剣の前にワイヤーを張った。

 その糸で剣を二本とも防ごうというのかなぁ。

 それとも絡め取るのかな。

 どっちにしたって糸なんかすぐに切れちゃうよ?


「見てなさいよバンプ」


 彩花さんが言う。

 さっき彩花さんが僕を引っ張ったのは、防ぐより避けろという意思があっての事だとおもう。

 つまりあの爪糸に当たってはいけないってこと?

 言われた通り僕は剣の様子をじっと見ていることにした。


 回転しながら飛んでいく剣と、その前に張られた一本の糸。

 当然剣が易々と断ち切ってしまうと思っていた僕はびっくりした。


 糸に触れた剣が、二本とも粉々になってしまったんだ。


 なんで!?


『これが無限粉末師である私の技術、《リゾルヴ・パウダー》よ』


 人差し指の糸を巻き戻し、ほんの少し前は赤い剣だった粉をつまんだタイタンさんはそれをフッ、と吹いて飛ばした。


 リゾルヴ・パウダー。

 あの爪糸を操る技術の事かな?

 じっとそれを見ていた彩花さんは黒い皮手袋がはめられた手をポンと胸の前で叩いた。


「リゾルヴ・パウダー。つまり《粉末分解》ね。なるほどね〜♪」


 彩花さんは一人でうんうんと頷いてはぶつぶつ呟いている。


「って事は私の勝ちは決定ね♪」


 自信過剰もイイトコだこの人。


『余裕見せてると、痛い目見るわよ』


「痛いのはイヤ!」


 僕あまりツッコミ得意じゃないよ彩花さん。

 ニコニコ顔の彩花さんに対して、タイタンさんは憮然とした顔をしていると思う。フェイスガードでわかんないけど。


『なるほどって勝手に納得したみたいだけど、たった一度見ただけで私の《リゾルヴ・パウダー》を見切ったような言い方をされるのは心外ね』


 うん。僕も今見ただけじゃあいまいちわかんなかった。

 けれど彩花さんはコホンと咳払いなんてしている。


『一度見ただけで納得? 私も嘗められたものよね。私の技術はそんなに――』


「両腕に装着された手甲。その中におそらく高圧高速度伸縮機構に似た装置が仕込まれているわね♪それによって超高振動を生み出す事が可能となる。その振動率は物質を分子レベルにまで分解してしまう程。つまるところその手甲と繋がっている糸、爪にも振動は伝わるわけね。さらにビルや地中を粉々にするのはもちろん、その振動を利用して爪を掘り進める事だって出来る。まぁ糸を操る技術は驚くほど凄いとは思うけど私の知っている神楽という子の抜線術には遠く及ばないわ。アナタの言う《リゾルヴ・パウダー》とは技術ではなく正確にはその手甲に施されたシステムの事を指すのであってペラペラぺラぺ〜ラ……」


 う、うわ。

 こ、この人すげぇよ!

 っていうかやばいよぉぉぉぉぉぉ!!!


 彩花さんは笑顔のままペラペラと僕にはサッパリわかんない単語やら数値やらを、物凄い滑らかさで言い続け、しかもタイタンさんは時々ビクビクッて反応してたりする。


「……というわけでこれがアナタの《リゾルヴ・パウダー》の全容ね♪」

『………ガーーーーン!』


【須藤彩花は《リゾルヴ・パウダー》を見破った】

〈チャッチャラ〜ン♪〉


 効果音キターーー!

 彩花さんは腰に手を当てて胸を張り、対照的にタイタンさんの方は上半身を曲げて沈んでいる。

 技を看破されてしまった証拠だった。

 ひ、ひどい。


「さてさて♪」


 彩花さんが柔軟をする。

 とことんまで相手を凹ませたところで。

 彼女はやっと柔軟をしたのだ。

 つまり――


 彩花さんにしたら今からが《戦闘開始》なのだという態度なのだ。


 自分の絶対領域、ゲヘナ・ワールドに相手をトコトン引きこんでからの戦闘。

 そういえば死神業者最強決定戦の時もエリート餓鬼達はみんな地面に膝をついて泣いてたような……。

 白狐さんとカブキさんまで追い込んだ絶対領域だもん。

 目の前で凹むアーマー女さんも、必然といえば必然だよ。

 

「《ゲヘナ・ワールド・第二地獄》へご招待〜♪」


 うわぁ第二段階キターーーー!!


『う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!』


――――――――


―――――


―――


【数分後 二番塔前】


 ……。


 えっと。


 こんにちはヴァンパイアだよー。


 ……じゃなくて。


 その、ですね。


〈シュゥゥゥゥ……〉


『う、うぅ……』


 前代未聞の事態で、僕もどうしたらいいのかわからないんだけど……。


「ふふっ♪」


 ………。


 彩花さんが敵を倒しちゃいました。


『な、なんで……。この人……何者……?』


 アーマーに罅が入りまくり、両腕から煙をあげながら仰向けに倒れたタイタンさん。

 割れたフェイスガードから見えるお姉さんの顔。

 ちょっと涙が出てた。


『わ、私……全然技とか見せてないのに……ぐすっ』


 だから彩花さんは前代未聞だった。

 あっさりと倒しちゃったから。

 タイタンさんも、僕も全然力を発揮していないうちに。


 バトルのセオリーを完璧に無視し、相手が全力を出す前に駆逐しちゃった。


 笑いながら。


 本当に、いろんな意味で悪魔のような人だよ。

 当の彩花さん本人は、タイタンさんの指から伸びた十本の爪糸を束ねて片手に握り、何事もなかったかのような普段どおりの笑顔で倒れたタイタンさんの前に立っていた。

 無傷で。


「あ、彩花さんって何者?」


「ふふっ♪ 私はラスボス級だから♪」


 ダメだこの人。

 多分伝説の死神業者より強いよ。


【《彩花&バンプ》 VS 《タイタン》 まさかの戦闘終了】


――――――――


―――――


―――


『ぐすっ……ひっく』


 膝を抱えて座り、身体を丸めて泣き続けるタイタンさん。

 そりゃそうだよ。


 破壊業者といえば戦闘においては負け知らずとも言われる人達だもん。

 まさか瞬殺されるとは思ってもいなかっただろうからショックを受けるのは当然だよね。


『ぐす、うぇぇん……ひっく』


 僕までもらい泣きしちゃいそう。


 そして彼女を短時間でボロボロにし、大きなショックを与えた張本人は………。


「ほら泣かないの♪ 《タイたん》はお姉ちゃんでしょう?」


『《タイたん》って言うなー!』


 まるで子供をあやすかのような対応。


『うぅ……こんなことならベルと変わってもらえば良かったわよ〜』


 鼻をすすりながらぶつぶつと呟くタイタンさん、もといタイたん。


「ベルって誰ですか?」


『ぐすっ、あぁベル? ベルゼルガっていう奴で、今回雇われた三人の内でダントツに強いの』


 うわぁ、二番塔選んで良かったー。

 タイたんは先程までの強気な態度はどこかへ行ってしまったらしくて、今はおとなしくなっていた。

 閻魔さんあたりが好きそうなタイプかも。


「ベルゼルガ? ベルゼブブじゃなくて?」


 僕は今の話に興味を持って食い付いた。


『有名な蝿王ベルゼブブはアイツの父親ね』


 ふーん。

 ベルゼブブって名前はお父さんに聞いた事がある。


「バンプ知ってるの?」


「うん。元死神業者で、ヨーロッパ本部の魔導高炉暴走事件が起こった後、引退したらしいよ」


「引退?」


「うん。あっ、現役を引退しただけだから僕のお父さん達と同じだねっ」


『……まぁ、本部所属だったから相当な実力者だった事は間違いないわね。今は行方知れずらしいけど』


 本部所属の元死神業者達はほとんど伝説的な存在なんだよね。


「ところでタイたん♪」


『もうタイたんで良いわよ』


 ついにアーマー姉さんが折れた!


「私、お腹空いちゃったな♪」


『知るかーーー!』


 出たゲヘナ・ワールド……。

 しっかし、良かったな〜。ベルゼブブの息子が相手だなんて絶対に嫌だもんな〜。


〈ゴゴゴゴゴゴゴ〉


「?」

「?」

『?』


 何故かのんびりと二番塔の前で腰を下ろしていた僕達だったけど、突然の地響きには驚いた。


「彩花さん、これ何の音?」


「さぁ? 佐久間さんあたりが暴れてるんじゃない?」


「あ、そっか」


「アハハハハ」


『アハハじゃないわよーーーーー!!』


 後ろを向き、顔を上げたタイたんが急に叫んだので僕も塔を見上げてみる。


〈ゴゴゴゴゴゴゴ〉


 ………。


〈ゴゴゴゴゴゴゴ〉


 う、うわ……。


〈ゴゴゴゴゴゴゴ〉


「うわぁぁぁぁ! 一番塔が傾いてるよぉぉぉぉぉ!!」


 そう。中枢塔を支える三本の塔のうち一本が、折れて傾いていた。

 って、一番塔って冬音さんとメアの担当じゃん!


「あらあら♪ 佐久間さんったら大ハッスルね♪」


『呑気な事言ってる場合じゃないわ!』


 タイたんが立ち上がる。

 そっか。一番塔には彼女の仲間も居るはずだもんね。


 ………。


「って、彩花さん! 冬音さん達も危ないんじゃないの!?」


「まぁ大変! 早く行きましょう♪」


「うん!」


「ラーメン屋へ♪」


「冗談は場をわきまえろー!」


ベシッ!


「あーん! バンプがぶったー!」


『何してんのよ!』


 タイたんを先頭に、僕と、頭を押さえる彩花さんは崩れ行く一番塔へ駆け出したのでした。

 ……どうやったらあんな巨大な塔を崩せるんだよ〜。


――――――――


―――――


―――


 一番塔はガラガラと激しい音をたてながら崩れ落ち始めていた。

 僕は危ないからと彩花さんに腕を掴まれて遠くからその様子を見るばかり。


 冬音さんとメアが心配だよぉ!


 彩花さんは神妙な面持ちで無限粉末師と話している。


「じゃあお願いして良いのね?」


『ええ。きっとアナタ達の仲間もイダと一緒に居た筈だから』


 両手に備わった特殊な手甲を開き閉じし、まだそれが動くことを確認して走りだす。


『イダ! 無事でいてよね!』


 ひび割れたアーマーに身を包んだタイタンさんは危険を顧みずに崩れゆく一番塔へ駆けて行ってしまった。

 その両手の指から駆動音が響く。


『リゾルヴ・パウダー!!』


 降ってくる瓦礫を粉々にしながらタイたんは見えなくなった。


 ……。


 うー。いくら冬音さんが一緒でもさすがにこれはヤバいよぉ。


「里原くん達も気付いているとは思うけど……。来られないという事は……」


「うん。きっと戦闘中だよ」


 準くんとロシュが苦戦するような敵かぁ。


「バンプ。里原くん達が心配?」


 彩花さんは僕の心中を見透かしたように言った。

 そりゃあ今は冬音さんとメアの方が心配だけど……。


「うん、準くん達も心配」


「ふふっ、死神ちゃんなら大丈夫よ♪ 里原くんがついてるし♪」


「うん……」


「バンプは里原くんが大好きだものね〜♪」


「うん……って、そんなんじゃないよ!」


「あら♪ じゃあやっぱり彩花お姉さんを選んでくれるのかしら?」


「〜〜〜っ! こんな時に何言ってんのーー!」


「アハハハハ♪ でも私だって心配だもの。笑ってないと落ち着かないわよ」


 もー!


 僕はプンプン怒りながら、そいでもって彩花さんはニコニコ笑いながら、砂埃に包まれる一番塔周辺でひらすらタイタンさんを待った。


 そしてしばらく経って――


 晴れ始めた砂埃の中から音が聞こえてきた。


〈ギギィ……バチバチバチバチッ……ガシャンガシャン〉


 現れたのは巨大な影。


 ロ、ロボット!?


 大きなロボットがふらつきながらタイタンさんと一緒に出てきたのだ。


〈バチバチバチバチッ……バチッ〉


 ロボットの片腕は無く、その断面や身体中から火花を散らしている。

 そしてもう片方の腕の中に――


 冬音さんとメアが抱えられていた。


「佐久間さん、無事だったのね!」

「メアー!」


 安全な場所まで来てロボットは二人を降ろし、僕と彩花さんは気絶する二人に駆け寄った。


〈ジジ……バチッ、バチバチッ〉


《へへ、落石の直撃は防いだよ。衝撃で気絶してはいるけどすぐに目を覚ますと思うよー》


 もはや装甲や間接部分が破損しまくってズタボロになったロボットから声がした。


『ありがとうね、イダ』


《タイタンが来て粉末化してくれなきゃ危なかったよ》


 このロボットがタイタンさんの仲間で、冬音さん達の相手だったのかぁ。

 すごいなぁ。


「う……ん」

「あ……。助かった……みたいです」


 二人が目を覚ますのと同時に彩花さんが飛び付いていた。


「キャー! もう、バンプと心配したんだからね佐久間さん、メアちゃん!」


「うぎゃあぁぁ! 苦しいぞ須藤ー!」

「い、息ができないです彩花さんー!」


 苦しむ二人の横で、ロボットの胸部分のハッチが音をたてて開いた。


〈プシュウ〉


『いやー! 防御型のセメタリーキーパーを持ってきてて良かったよー! アハハハハ、さすがボクだねっ』


 ぐっ、と背伸びをしながら出てきたのは……小さな女の子。


「えぇぇぇぇぇぇ!? おいパッキャラマオてめぇ! 女だったのかぁ!?」


「びっくりですーーー!」


 彩花さんの腕から逃れた冬音さんとメアが叫び声をあげる。ロボットの中に居て、しかも自分の事をボクって言ってたから男だと思っていたらしい。


『だからパッキャラマオって言うな……むぐぅ!』


 怒鳴りかけでイダという子は犠牲者と化した。

 冬音さん、メア、彩花さんの玩具という犠牲者に。


「うひゃー、ちっちゃいなぁ!」

「可愛いですー! こんな子がセメタリーキーパーのパイロットだなんてー!」

「ほっぺがプニプニー♪」


『ちょっ、ボクの話……ちょ、おぉい!』


 イダは三人を弾き飛ばし、ビシッと冬音さんを指差した。


『い、いいかい!? ボクが助けてやったんだから勝負は引き分けだぞー!』


「な、なにぃ! じゃあ魔斬刀は……」


『ふふん、おあずけだね〜♪』


「ふざけんなよー!」


「冬音さん、冬音さん、準くん一日独占権はどうなるんですかー!?」


「全部なしじゃー!」


「えー! ひどいですよー!」


『ざまーみろー!』


〈ボカスカボカスカボカスカボカスカボカスカボカスカ!〉


 めちゃくちゃにもみ合う三人を呆れ顔で見る僕とタイタンさん。

 彩花さんはケラケラ笑ってるし。


「あーあ。一番塔が壊れちゃったね」


 僕は倒壊した巨大な建物の残骸を見てため息をついた。残りの二本で中枢塔は支えられている。

 タイタンさんも同じくため息を漏らしていた。


『やれやれね。この損害は凄いわ。ボスも今頃は撤退を考えてるでしょうね〜』


「そういえばタイタンさん」


『なにかしら? 吸血鬼くん』


「狼男さんが全然居ないみたいだよ? というか僕は最初から少なかったような気がするよ」


 ふむ、とタイタンさんは腕を組む。


『私達はただ塔を守るだけだったから気にしていなかったけど、明らかに少ないわね。刃狼隊は人海戦術で真価を発揮すると言われるくらい大規模な部隊なのだけれど……』


 けれど僕と彩花さんを襲ってきたのはたったの二人だったから、どうも変だよ。


『イレギュラーが、他にも居たのかしら?』


 言いながらまだ争っている三人の所へ行き、その中からイダという子を引っ張りだす。


『イダ、一番塔も二番塔も墜ちたから我々の仕事は終わりよ』


『そうだねー。こちらとしても式神十二式が来る前に引き上げたいところだったし』


 タイタンさんと話しながらもその目はまだ冬音さん達に敵意を向けていた。


 冬音さんとメアはというと、準くんを独占だとかなんだとかで言い争っていて、彩花さんが仲裁に入ってる。


『タイタン、ベルはどうするの?』


『ほっときなさい。どうせ撤退すると言っても〈デストローイ!〉とか言ってきかないんだから』


『アハハ、それもそうだね〜』


『ところでセメタリーキーパーは壊れちゃったみたいだけど、退路は確保してあるの?』


『へへん、高機動型の大傀儡の方は無事だったから隠してあるよ』


 あ、あんなロボットがもう一機あるの!?


『そういえばそうだったわ。でも攻撃型はラビット戦で大破しちゃったわよね』


 合計三機あったらしいよ……。


『仕方ないよ〜。相手がジョーカー一族だもん』


 よくわかんない会話だけど、とりあえずラビットさんがとんでもない人だというのだけはわかったよ。


 撤退するとか言いながら二人はその場に座り込んでしまった。


『疲れたからちょっと休憩ー』

『そうねぇ』


 僕達も進攻はここまでかな? 冬音さんとメアはかなりボロボロだし。

 準くんとロシュも大丈夫だと思う。あと………。


 うん、とにかく僕達の魔導社での戦いはここまでだね!

 パラダイス・ロストのボスも撤退するかもってタイタンさん言ってたし。


 ……みんな座り込んじゃってるし。


「おらパッキャラマオ、かかってこいよー!」

「かかってこいですー!」


『コノヤロー!!』


「あらあら♪」

『まったく。懲りない人達ねぇ』


 ……みんな元気いっぱいだけどね♪


―――――――――


【《冬音&メア》 VS 《韋駄天&セメタリーキーパー》】


【《彩花&バンプ》 VS 《タイタン》】


【戦闘終結♪】

ゲヘナ・ワールド相手にあっさりと敗れて(看破されて)しまったリゾルヴ・パウダー。 しかしこのシステム、実はとっても強かったりします。笑

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