第105話 猛攻!機動歩兵セメタリーキーパー
お気に入りのニット帽を片手で押さえながら疾走する私。
つい先刻まですっきりと何もなく、閑散としていたメインストリート。
でも今は整備された道路には無数の大きな亀裂が走り、穴が開き、ビルの破壊された壁が辺り一面に散らばっています。
この状況のほとんどを作り出したのは、あの人達。
『うりゃぁぁぁぁ!』
〈ギィン!〉
戦闘の天才人格、悪冬音さんの拳が敵の装甲にヒットする。
装甲。
そう、私達の敵はなんとロボットなのです!
《わあ! ぴかぴかビームを躱して間合いに入ってきた!》
ロボットから響く声。その声色、無邪気な口調からして多分子供です。
韋駄天というあの子供があんな恐ろしいロボットを作り、動かしているのは信じられないですけど。
宙に浮くその名前はセメタリーキーパー。武装は未知数ですが、今のところ口から出すダサいレーザーだけで攻撃している。
『さすがに堅ぇなぁ。おいメア、動き止めろ!』
「はい!」
トントンとリズム良く瓦礫の上を移動する冬音さん。
もう一度セメタリーキーパーの懐に飛び込むつもりなので、私はブラックマターボールを八つ浮かべた。
通常八つの魔力球による連携。攻守万能。それが私の能力です。
「〈エターナル・8〉!」
自在に操る事のできる黒球をセメタリーキーパーに向けて飛ばす。
《わ、わっ! 何?》
八つの黒球に周囲を囲まれた機体は結界に包まれる。じたばたと暴れても私の結界は壊れないです!
『いいぞメア!』
タイミングに合わせ、冬音さんが跳躍。
《ふ、ふんだ! こんな結界、打ちぬいてやるよ! ぴかぴかビー……》
セメタリーキーパーの口に備わったレンズがエネルギー収束を始めるものの、冬音さんの方が圧倒的に速いです。
それを見計らって私も結界を解く。
『私の拳は超硬度〜♪ わはははは! 剛拳・爆属、〈掛矢軍壊〉!』
〈ボォン!!〉
大きなセメタリーキーパーが後方に弾け飛ぶ。
すごっ!
《うわぁぁぁ!》
セメタリーキーパーは左腕で防御して直撃を避けたのですが、冬音さんの思惑は直撃では無かったのです。
《ふにゃ〜、頭が〜、クラクラ〜》
激しく揺れ動く機体。宙を右往左往する姿から見てもかなり効果があったみたいですよ。
冬音さんの放った打撃は爆属、〈掛矢軍壊〉。
威力ではなく、衝撃に特化した攻撃なのです。
セメタリーキーパーの装甲は異常に堅固で冬音さんのパンチを弾き返す程。ならばと冬音さんがとった攻撃方法は、衝撃で内部に居るパイロットつまり韋駄天さんに直接ダメージを与えるという事だったのです。
こう言う私も実は今気付いただけだったり。
うんっ、一度のコンタクトで戦略を練り上げるとはさすが悪冬音さんですー! さすがファンタズマのヘッドですー!
《ふにゃ〜、ふにゃにゃ〜……》
『やったー! ブイブイ! どうだパッキャラマオ、参ったかー!』
ふらふらと水に浮かぶ浮き輪のように宙をふらつくセメタリーキーパーを見上げた冬音さんは得意気な笑顔でピースしていた。
《パッキャラマオって言うな〜! 君達なんて高高度から攻撃すれば手も足も出せないくせに!》
どうやら追撃する前に回復したらしい韋駄天さんはセメタリーキーパーの背中から出るジェット噴射を更に強め、高く飛び上がった。
のですが。
〈ガクン〉
と機体のバランスが崩れる。
一人で何やってんですか……。
《あ、あれ? おかしいな》
セメタリーキーパーのスピーカーから明らかに異常事態である事に動揺した声が漏れてくる。
それを冬音さんは指差しながらケラケラと笑っていた。って、子供ですか!
《あー、機体の主軸が損傷してる。やっぱラビット・ジョーカーとの戦闘の影響かなぁ……。あと高度計もか。低空飛行しかできないや……まったく……んー、エア・コネクタと空間制御システムをこっちに回して……そんで……》
か、完全に独り言になってる!
機体に異常が見られ、高い高度で飛ぶことができないみたいです。ラッキーです。
セメタリーキーパーがゆっくりと降りてきて、初めて地面に着地した。
《うー、セメタリーキーパーはもうガタが来てる。こりゃ一から作り直しだよー》
『じゃあ私にくれ!』
冬音さん貪欲!
《やだよーだ! まだ君達を蹴散らすくらいは余裕だからね!》
『よし力ずくだ!』
冬音さんが地面を蹴った。敵は着地しているので攻撃がしやすいと思い、私は援護せずに居たのですが。
セメタリーキーパーの変化を見た途端、私もブラックマターボールを作りながら駆け出した。
機体の両肩、胸部、腹部、両膝、そして指先全てからも収納されていたレンズが飛び出したのです。
《閃光砲×17、ファイヤーーーー!》
いっぱいキター!
『な……っ!?』
放たれる十七本の光。
口だけの時とは違いもはや狙いなど定めておらず、照射し続ければいずれは当たるといわんばかりの全方位攻撃です!
一気に粉砕されていく両側のビル。亀裂だらけになるメインストリート。
し、死んでしまうですー!
これはさすがに冬音さんも予想していなかったらしく
『おわー! コイツやべぇー!』
セメタリーキーパーに近付けずにひたすら光線を避けていた。
私も結界を張ったまま冬音さんの盾にまわります。
『あーん、助かったよメアー! 大好きだよメアー!』
うぁぁぁ……!
う、後ろから首を絞めないで欲しいですー!
《ふむ、チビ子ちゃんの能力はなかなか厄介だねー。なら……》
〈ギュォォォォォ!〉
照射を止めたセメタリーキーパーは、次にスラスターを全開にして突撃してきた。
って、えぇぇぇぇ!?
《その結界、押し破ってやる!》
〈ドォン!〉
という物凄い衝撃音と共にセメタリーキーパーが私の前に張られた結界に激突。
い、意識が飛びそうです〜。
そのまま吹き飛ばされていたと思った私は、冬音さんの脇に抱えられている事に気付いた。
『にぎぎ……! おぉ、意外に頑丈だなメアの結界は』
悪冬音さんは背中を結界に当てて吹き飛ぶのを耐えていた。
何者ですかアナターー!
しかし衝撃には耐えたものの、セメタリーキーパーの推進力には耐えられず押され続けており、大きく両手を開いた機体に結界ごと掴まれた私達はメインストリートを凄い速さで進んでます。
進む先には一番塔。
ま、まさか!
〈ギュォォォォォ!〉
《アハハハハ! このまま一番塔に突撃したら君達はどうなるかなぁ?》
このまま……。
サンドイッチ♪とか?
………。
イヤァァァァァ! 嫌ですーー!
『まったくさぁ』
こんな状況なのに冬音さんの口調は悠長です。この人アホかもです。
『まだまだだよお前』
《なんだとー!?》
『うん全然ダメだ。うん。こんなのはまだまだ窮地とは言えねぇよ』
これが窮地と言わず何と言うのですか!
《アハハハハ、これが窮地とは言えないだって!?》
笑われて当然ですよ冬音さん。
風を切りながら恐ろしい速度で進むセメタリーキーパー。一番塔がどんどん大きくなってくる。
『メア、結界を解け』
「えぇ!?」
『もう衝撃は防いだから必要ないだろ』
た、確かに。
「わかりましたです」
言われた通りに結界を解く。
冬音さんは私を抱えたまま、更にセメタリーキーパーの懐に身体を寄せた。
《さぁ質問に答えなよ! なら君にとっての窮地ってのはどんなレベルなのさっ!?》
セメタリーキーパーの腰部分。そこにある太いパイプ管を冬音さんは片手で掴む。
『あん? 窮地なんて、そんなもん……』
そしてそれを
全力で
引きちぎった。
『そんなもん、里原準とケンカすりゃあ一発でわかるよ』
〈ブチィ!〉
ちぎれたパイプ管から白い煙が吹き出す。
それと同時に、セメタリーキーパーはぐらりと揺れ動いた。
《わ、うわ! 右背部スラスターの機能が停止した!?》
バランスを失ったセメタリーキーパーの片足が地面に接触する。
その摩擦に引き摺られるように機体全体がメインストリートを削りながら落下した。
『わはは、脆い脆い♪』
笑いながら片手で私を抱え、もう片方の手でセメタリーキーパーにしがみついていた冬音さんは極端にスピードの落ちた機体から離脱。
『おっとと』
若干バランスを整えながら着地。
ここでやっと降ろされた私が周りを見渡すと、場所はメインストリートを抜けて一番塔の正面広場でした。
あ、危なかったー!
向こうには俯せのまま地面を掘るようにして滑り、停止したセメタリーキーパー。
ふらふらと機体を起こす。
中の韋駄天さんは無事でしょうか?
《チクショー! ヘッドスライディングなんてしたから光学兵器レンズがほとんど壊れちゃったよー!》
ボロボロの機体とは対象的に、パイロットの方は元気いっぱいでした。
『自慢の武装は壊れちまったみたいだが?』
傷だらけになった巨大な傀儡の前で仁王立ちする冬音さん。
でもそれに対し、韋駄天さんは鼻で笑った。
《へん、ぴかぴかビームがボクの自慢? なめてもらっちゃ困るよ》
強がりともとれる言葉を放った後、ふぅ、とため息が聞こえてきた。
《うーん。本当はさ、今回の制圧に対してボクはあまり乗り気じゃなかったんだよ》
『?』
「?」
私と冬音さんは頭に疑問符を浮かべ、首を傾げた。
《君達みたいな侵入者というイレギュラーは予測していたけど、ボクが本当に毛嫌いするのは魔導社の私設部隊さ》
『ん? 魔導社には私設部隊があるのかメア』
「はい」
それはもう良く知っていますよ。
《名前を〈式神十二式〉という。日本好きのラビット・ジョーカーが死神業者の夜叉という人物をモデルにして造った、意志を持つ戦闘型パペット》
そうなのです。魔導社には、夜叉さんをモデルにした少数の、しかし最も有力なパペット部隊があるのです。
『ふぅん。あの夜叉をモデルにねぇ……』
《傀儡製作者のボクとしても感心する出来具合だよ》
式神十二式。
十二人の精鋭。
身体能力はオリジナルに劣るものの、夜叉さんに匹敵する戦闘力を持っていると言われています。
何故なら――
《ボクが怖いのは彼らの持つ武器。〈魔斬刀〉だよ》
それがあるから彼等は強いのです。
魔斬刀。
魔刀鍛冶と呼ばれる刀工群が作り出した名作達。
『メア、魔斬刀ってなんだよ?』
「生前は有名な刀工だった者達の魂によって構成される、魔刀鍛冶の作品ですよ」
『えー! 〈備前〉とか〈相州〉一派に属した人間の魂って事か!?』
冬音さんは以外に刀に詳しかったです。
《そ。だから人間界で実在した有名な日本刀の銘を持つものもあり、それらは異界の名刀と言われてる。異界で魂となった事で生前に作成したものに能力が付加しているしさ》
『だからそれを持つ式神十二式が強いのか』
セメタリーキーパーが頷く。
《そんな武器を持つ奴が十二人も居るんだよ!?》
だからパラダイス・ロストという組織は彼等が居ないタイミングを狙ったのですね。
《で、式神十二式と絡ませて語ったボクだけど。本当は何が言いたいのかってゆぅと……》
言いながらセメタリーキーパーは腕を上げ、冬音さんを指差した。
《君の言った事についてさっ!》
『んー……?』
冬音さんが言った事?
《ボクの自慢の武装》
韋駄天さんがそう言うのと同時に、セメタリーキーパーの背部ハッチが音を上げて開いた。
よく見えないけど、そこから二本の棒が飛び出したのはわかりました。
《へへへー、自慢の武装……》
セメタリーキーパーは背中に両腕を回し、それを引き抜いた。
現れたのは、二つのおっきな刀です。
って、ホントに大きい!
《アハハハハ! ボクは魔斬刀を二振り持っているのさ!!》
『うっわぁぁぁぁ! すげー! 〈太郎太刀〉と〈次郎太刀〉じゃねぇか!』
ふ、冬音さん詳しすぎですよ!
《わかるー!?》
『テメー、戦国時代の名刀を知らない筈があるか!』
《わかるわかるー!?》
『それを二刀同時に持つのが前代未聞なんだよ!』
《うわぁ嬉しいよぉ! そうだよ! この大太刀二振りを同時に持つのが目的でボクはこのセメタリーキーパーを造ったんだよぉ!》
『良いぞ! その発想良いぞー!』
何ですかこの会話!
い、いつの間にか〈悪冬音〉から〈刀冬音〉にチェンジしてる……。
しばらく韋駄天さんと刀冬音のくっだらない刀会話が続くみたいです。
取り残された私は……ロシュに負けないセクシーポーズの練習を……。
だ、駄目ですかー?
むー。
――――――――
――――――――
冬音:『やっぱダノっちの〈不動行光〉だよ』
韋駄天:《あー、ダノっちのそれは有名だよね〜》
(ダノっち!?)
冬:『つーかアイツ集め過ぎだよな』
韋:《それはボクも思ったよ。ダノっちの奴は刀にとどまらずコレクションが多いよね》
メア:『あ、あの〜。ダノっちって誰ですか?』
冬:『織田信長』
韋:《織田信長》
(フレンドリーすぎ!)
冬:『でも大事なのは歴史よね、歴史』
韋:《うん確かにね。魔斬刀は強いけど、ボクは生前に造られた刀の方が素晴らしいと思うよ》
冬:『太郎太刀と次郎太刀にはビックリしたよ』
韋:《魔斬刀だけどねー》
冬:『すっげぇなー。いいなー。欲しいなー』
韋:《約束ではセメタリーキーパーをあげる事になってたけど、壊れかけだから魔斬刀を片方あげても良いよ?》
冬:『マ、マジで?』
韋:《マジマジ〜♪》
冬:『お、おぉ……』
(すごく食い付いてる!)
――――――――
―――――
―――
一番塔のすぐ前。正面広場。
私の隣には刀ばっかり見ている冬音さん。
私達の前には巨大な刀を二振り携えて構える大傀儡セメタリーキーパー。そのパイロットの操作技術は、もう疑う余地もないです。
《うおりゃぁぁぁぁ!!》
スラスターも、ビーム兵器も壊れたセメタリーキーパー。
ドスドスと重い音と共に突進し、右手の大太刀を横薙に振るう。
『メア、空中には絶対避けるな。後退して避けろ』
「了解です」
冬音さんの助言通り、後ろへジャンプして避ける。
ブン!と横に振られた初太刀は空を切り、一番塔の外壁に突っ込んだ。
間髪入れずに今度は上から二撃目!
空中に避けてたら真っ二つでしたよー!
『大太刀は隙ができると言われるが、使い手次第なんだよなぁ』
《その通り!》
〈ボカァァァァァン!〉
壁に突っ込んでいた刀が飛び出してくる。
「じゃあ私が刀の軌道を逸らします!」
『ありがとうメアー! 大好きだよメアー!』
うぐぐぐ……。
く、苦しいです……。
「けほっ。ブラックマターボール!」
回転を加えながら連続で斬撃を繰り出すセメタリーキーパーに黒球をぶつける。
〈ギィン! ギィン!〉
『うっし、隙ができた!』
二振りを軽快なステップで躱して、冬音さんは懐に飛び込む。
もう一度〈掛矢軍解〉を決めれば冬音さんの勝ちです!
『わはははは! 飛べないなら今度ふらついたら終わりだな! 剛拳・爆属……』
《甘〜いよ♪》
『!』
冬音さんの横腹にはセメタリーキーパーの大きな脚があった。
次の瞬間、スタイルの良い身体が吹き飛び、一番塔の壁に突っ込んだ。
『…………うわっ!』
〈ボォォォォン!〉
「ふ、冬音さぁん!」
《逃がさないよ!》
セメタリーキーパーは壁を斬り砕き、一番塔の中へ入っていった。
わ、わたしも――。
入って冬音さんを助けなきゃ。そう思って踏み出そうとした瞬間。
《ぅうわぁぁぁぁぁぁぁ!!》
〈ドォォォォン!〉
………。
何故か悲鳴と共に一瞬だけ塔からセメタリーキーパーが飛び出し、そして何故か吸い込まれるように再び塔の中に突っ込んでしまった。
な、なに? どういう事です!?
塔の内部からは連続する爆発音。
………。
あ。
まさか。
私は慌てて塔の中へ駆け込んだ。
――――――――
―――――
―――
地獄絵図。
これはそう表現したほうが良いかもしれません。
あわわ……。
『廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れ廻れぇぇぇぇぇぇぇ!!!』
〈ボカァン!〉
〈バガァン!〉
〈ズゥン!〉
〈ズドォォォン!〉
は、はわわわわ…………。
まるでハンマーのように振り回される巨大なロボット。
セメタリーキーパーの片足を掴んだ冬音さんは、悪冬音の時よりも数倍は邪悪なオーラを出しながら、一番塔の一階大ホールで暴走していた。
舞っているようにも見えます。
振り回されるセメタリーキーパーは一番塔の壁、柱、地面に何度も激突してそれらを粉砕する。
《うぎゃぁぁぁぁ! 目が、目が回る! あうっ、痛い! 衝撃で頭がクラクラする!》
セメタリーキーパーのコクピット内に居る韋駄天さんは凄い状態だと思います。
〈ボカァン!〉
〈バガァン!〉
〈ズゥン!〉
〈ズドォォォン!〉
………。
じゅ、準くんに聞いた事があります。
悪冬音さんは一定以上のダメージを受けると、更に戦闘狂の人格
〈極悪冬音〉に変貌すると。
気が済むまで破壊の限りを尽くし、誰にも、きっと準くんなら止められるかもですが、極悪冬音さんが出ている間は誰にも止められなくなるらしいです。
短時間らしいですけど。
『撃滅撃滅撃滅撃滅撃滅撃滅撃滅撃滅撃滅、撃滅決定ーーーー!!』
〈ボカァン!〉
〈バガァン!〉
〈ズゥン!〉
〈ズドォォォン!〉
い、一番塔一階が……。救い様の無い有様に……!
《うわーん! 平行感覚が……》
〈ボカァン!〉
《うぎゃぁぁ!》
どんどんセメタリーキーパーの装甲がベコベコに凹んでいってます。
穴が空く壁。残らず叩き折られる柱。
私、今近寄ったら間違いなく死ぬです。
『滅却滅却滅却滅却滅却滅却滅却滅却滅却滅却―――』
「――――って……あり?」
も、元に戻った!
本当に短時間で破壊の限りを尽くした極悪冬音さんは、すぐに元に戻ったです。
抱えていた巨大な脚部を放すと、大きな音をたてながらセメタリーキーパーが落下。
《ふ、ふにゃあぁぁ〜》
満身創痍のセメタリーキーパーと韋駄天さん。
冬音さんは何事も無かったかのように地面にへばりついた機体をポンポン叩いた。
「あーなんかスッキリしたよ。アハハハハ」
《ま、まさか君……破壊業者じゃないだろうね?》
「なんだそりゃ。まぁとにかく、私達の勝ちだな!」
《うぅ〜》
煙を上げる機体は、同時に鈍い音をたてている。もう戦える状態では無いですね。
どうやらこれで決着がついたみたいです。
「やりましたね! 冬音さん!」
私は冬音さんに駆け寄る。
「おうメアー! 当然だろうが、なにせ私は佐久間冬――」
〈ゴゴゴゴゴゴゴ〉
?
「んぁ?」
《何の音だい?》
塔全体から響いてくる音と振動。
壊れた柱、壁、天井を見ればこの振動が何を意味するのかは一目瞭然です。
「冬音さん、韋駄天さん……」
「うむ、こりゃあ暴れすぎたな。一番塔が……」
《く、崩れる……》
逃げ出す間もなく
一気に
私と冬音さんとセメタリーキーパーの上に
高い塔の全ての残骸が崩れ落ちてきた。
「冬音さんのバカァァァァァ!!」
「私の所為じゃなぁぁぁぁい!!」
《思いっきり君の所為だよー!!》
――――――――
【〈冬音&メア&韋駄天〉 ピンチ♪】