第104話 冬音とメアと傀儡製作者
【冬音&ナイトメア in 《???》】
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「冬音さぁぁぁん!」
「どうしたメアー!?」
「ここは何処ですかー!?」
「わかんなーい!」
とりあえず魔導社の敷地内には入ったみたいです。
つーか迷ったのは絶対にロシュの所為よ!
だって地図と全然違うじゃないの!
一番塔へ行く為の駅から降りた私と冬音さんは、ロシュの用意した地図のデタラメぶりに激怒していたのですが……。
激怒したのも束の間。私達を出迎えてくれたのは大量の狼男さん達でした。
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狼男:『ガルルルル!』
狼男:『グルルルル!』
狼男:『ウゥゥゥゥ!』
冬音:
「んぁっ! 見ろよメア。わんこだ、わんこ!」
メア:
「そんな可愛い外見じゃないです!」
冬音:
「えー? 首の毛とかフチャフチャしてるぞー」
狼男:『侵入者ァァァ!』
狼男:『侵入者ァァァ!』
狼男:『撃破撃破撃破ァ!』
メア:
「逃げましょうよ冬音さん!」
冬音:
「毛並みフチャフチャ〜♪」
メア:
「冬音さん!?」
冬音:
「フチャフチャな毛並み〜♪」
メア:
「(まさか動物好き!?)」
冬音:
「フチャフチャだから……」
メア:
「………」
悪冬音:『うひゃひゃひゃひゃ! 全部刈り取る!!』
メア:
「(やっぱりキターー!)」
狼男:『!?』
狼男:『!?』
狼男:『!?』
悪冬音:『バリカン無いからむしり取らせて貰うわよぉぉぉぉ!!』
狼男:『貴様ァァァ!』
狼男:『上等ォォォ!』
狼男:『刃狼隊をナメるなァァァ!』
メア:
「あぁぁぁぁぁ」
悪冬音:『おらメア! 援護しやがれ!』
メア:
「は、はい!」
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というわけでしばらくの間は駅周辺で暴れ回っていたのですが、以外に狼男さん達がタフなんです。
しかも次から次ぎへと現れるからキリが無かったです。
なので大暴れする冬音さんを引っ張ってなんとか魔導社の敷地内へ来る事はできたのですが、この魔導社、中がハイテク都市のような風景と構造をしていて……見事に迷ってしまいました。
やっぱりロシュの所為!
ここは多分メインストリートだと思います。かなり広い道だし、両側には大きな建物が(きっと重要なビルです)並んでいますし。
いつもは賑やかなのでしょうけど、今は物静かです。猛スピードでその道を走る私達以外は。
「おりゃー! かかって来いよ、わんこーーー!」
冬音さんは後向きに走りながら叫ぶという高等技術……に見えるけど私が引っ張って走っているだけだったりします。
『グルルルルル、なら逃げるなァ!』
『わんこって言うなァ!』
背後からは大量の狼男さんが四足歩行で追ってくる。
狼は追うことに長けているから、追い付かれるのは時間の問題です。
「メア、逃げても仕方ないって! やっぱ戦うぞ!」
「冬音さんは少し黙ってて下さい!」
「ガァァァァン」
ちょっと言い過ぎたかもです。
「メアは厳しいよ……準」
………。
「別人格でも良いですから」
『わかったでし』
誰!?
『弟子、川原で水を1デシリットル汲んでこいでし! 川原は川原でも勅使川原を探す奴はアホでし!』
「うっせーです冬音さん」
「わはは」
全力疾走でこの会話は……キツいです。私は浮いてますけど一応疲れるんですよ。
「おいメアー」
「ちょっとは静かにして下さい」
「いいじゃんかー」
「考え事してるんです」
「むー。……今回メアの視点だからって調子乗んなー!」
ぶはっ!
「おとなげないですよ!」
「ふーんだ」
たくさんの人に怖れられる冬音さんだけど、普段はこんな感じです。
お茶目というか、幼いというか……。
「………」
急におとなしく走るようになった冬音さん。
こういう時は何かよからぬ事を考えている時だったりします。
「………(ふふん、ツッコミの難しさをメアに教えてやる)」
「何か言いましたか?」
「…………」
「?」
『ご馳走できるモイ』
ぎゃぁぁぁレベル高ぇーーー!
準くんの苦労がすごくわかる!
『ガルルルルルルル! 追い付いたぞ!』
アホな事やってるから追い付かれちゃったじゃないの!
「わははは、これでいいのよ!」
立ち止まった冬音さんは指の間接を鳴らした。
メインストリートのど真ん中。
やっと一番塔が見え始めたのに……。
やるっきゃないみたいです。
「メア、準備は良い?」
「……はい」
「怒っちゃダメよ、可愛い奴だなぁ」
「だってー」
「じゃあ、一番多く敵を倒した方が《準を一日独占権》を手に入れられるってのはどうだ?」
マ、マジ?
「ふっふ〜ん、実はもう約束はこじつけてある」
マジだーー!
「わはは、これは今後作品タイトルが《冬音お姉さんといっしょ!》になるか《ナイトメアといっしょ!》になるかが決まってしまうくらい重大なイベントだ!」
「やりまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!!!」
【ナイトメアのモチベーションが〈7段階くらい〉上がった(10段階中)】
これはやるっきゃないです!
本気でいきますよー!
もう、準くんに〈強いよメアちゃん!〉って言わせるくらい暴れ回ってやる!
〈ゴゴゴゴゴゴゴ………〉
ほら、私のあまりの本気さに地響きが……。
〈ゴゴゴゴゴゴゴ………〉
へ?
〈ゴゴゴゴゴゴゴ………〉
地響き?
「なんで地響きが?」
私が首を傾げていると、冬音さんも眉を寄せながら怪訝な顔をしていた。笑ってるけど。
「わははははっ! うーん、これは嫌な予感が――」
『――するねぇ! ぇえ!? 気配と香りでバリバリわかるぜぇ! すんげぇ《力》だって事くらいさぁ!』
悪人格が反応して出てくるくらいですから、相当ヤバそうですね。
「何かが近づいてくるんですか? 冬音さん」
『ひゃひゃひゃ、そうだねぇ。何かが近づいてくるねぇ。何が出てくるかはお楽しみ〜♪ ってな!』
高らかに笑いつつ、冬音さんは正面を指差した。
『それに、あのわんこ共まで動揺してやがる』
見れば、確かに私達を攻撃しようとしていた狼男さん達も、キョロキョロと周囲を見回していました。
イレギュラーという事かしら?
〈ゴゴゴゴゴゴゴ………〉
『グルル。何だこの地響きは?』
『チィ、ボスの雇った奴……か』
『獲物の横取りだとォ!?』
『よせ! 《仕事》に巻き込まれるぞ』
『二番、三番塔方面にも侵入者ありとの報告!』
『よし、そちらへ向かおう!』
『グルァァァァァァ! 畜生ォォォ!!』
むぅ、様子が変です。
狼男さん達がみんな撤退していきます。
メインストリートで私達と対峙していた無数の敵はついに一人も居なくなってしまい、私と冬音さんだけになった。
ひっそりとなる筈のメインストリートにはただ一つの異常。
〈ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ〉
地響きはどんどん大きくなる。
『メア』
「冬音さん、これ――」
『メア!!』
「は、はい!」
突然怒鳴られてビックリした私は固まってしまったのですが、固まった私はいつの間にか冬音さんの腕に抱えられてました。
その冬音さんは横へ跳躍。
そして次の瞬間。
〈ドゴォォォォォォォン!!〉
凄まじい轟音と共に地面が爆発した。
……。
ば、爆発!?
火山の噴火かと思ったー。
〈キィィィ――――ン〉
地面深くから飛び出してきた人型のその物体は、背中と足から光と高音を吐き出しながら浮いていた。
おっきな、人型の機械。
爆発から逃れた私と冬音さんは茫然とそれを見上げていた。
「すごい……」
『うおー! メカだー! 格好良いー! 強そー!』
冬音さんは少年のような眼差しで大興奮。
《あー、あー、聞こえますかー?》
!?
「喋った!」
『喋るメカだ!』
んなわけないでしょ。
中に誰かが入ってるんですよ。
「あなたは誰ですかー?」
《こら! ボクが先に質問したんだぞー!》
怒られた!
「ごめんなさい、聞こえてます」
《よしよし。えー、これは忠告でーす》
忠告?
私は上の方で浮かぶ人型機械を見上げながら首を傾げた。つーかボディが銀色だから光が反射して眩しいです。
それを凝視する冬音さんも凄いです。
《この魔導社は現在、パラダイス・ロストによって占拠されてまーす》
どうやら敵集団の名前はパラダイス・ロストというらしいです。
《占拠されてまーす》
「……知ってます」
《占拠されてまーす》
?
「知ってますよ」
《侵入者ですかー?》
うー。はっきり訊かれると逆に答えづらいですー。
『おうよ! 侵入者だ! 綺麗なお姉さん侵入者だ! 文句あっか!?』
冬音さんは大胆!
《うひゃー、大胆なお姉ちゃんだよー!》
強そうな人型機械が両手を挙げてリアクションするのは滑稽です。
『てめぇは何者だ!』
すると人型機械は待ってましたとばかりに両手を開き、空中で大の字になった。
《ボクは傀儡製作者の〈韋駄天〉。そんでこいつはボクの最新作、大傀儡〈セメタリーキーパー〉だよ》
いだてん。ですか。
「冬音さん、くぐつって何ですか?」
『ん、簡単に言えば人形だな』
あんな機械が人形だなんて、どんな神経ですか。
加えて悪冬音さんはとても楽しそうに腰に手を当て、しっかし、と呟く。
『でっけぇ人形だなぁオイ。しかも名前が〈墓守〉だと? 小粋な名前を付けやがって』
墓守……。なんか名前からして強そうですよ。
《ほら、今度は君達が名乗りなよ!》
「あ、私はナイト――」
『誰が名乗るかぁ! バァァァカ!』
挑発キターーー!
《な、なんだとー! ボクに名乗らせといて自分は名乗らないなんて! ……はっ! さては君達、〈策士〉だな!?》
すごい解釈!
《まぁなんでもいいや! とにかくボクは侵入者という存在を破壊するだけだからね!》
セメタリーキーパーという名の人型機械の駆動音が大きくなる。
『わははははっ! 私達が勝ったらそのメカは貰うぞ!』
「欲しいんですか冬音さん!?」
『私メカ欲しいもん!』
《アハハハハ! ボクに勝てたらね!》
もうっ。言いだしたら聞かない人なんですから。
つーかよそ見してる場合じゃないです。セメタリーキーパーの口が
〈ガシュン〉
と開き、おっきなレンズが出てきたです。
『おぉ!』
「アレって……」
次の瞬間、光の柱が……放たれた。
《閃光砲ファイヤーーーーーー!!》
ネーミングだせぇぇぇ!
〈バガガガガガガガガガァァァァン!〉
つーかやっぱりビーム撃ちやがったですーー!
『格好いい! 格好いいぞメカメカー!』
「避けて冬音さん!」
セメタリーキーパーの口から放たれた光の柱はメインストリートの地面をえぐり、ひたすらバンザイのポーズではしゃぐ冬音さんを引っ張って横へ逃げるのはしんどいです。
《さぁどうする? 撤退するなら今のうちだよん》
……うー。
撤退するのもアリですけど、そんなのイヤです。
《どうする?どうする? ナイスバディのお姉ちゃん》
『なれなれしいぞクソガキ。お前は今から〈パッキャラマオ〉と呼んでやる』
《うぜぇー!》
このパイロット、テンション高いです。
《じ、じゃあそっちの〈未発育チビ子ちゃん〉は?》
殺す!
『よし。メア、さっきの約束覚えてるな』
約束。
準くん独占権の事?
「覚えてます!」
『うっし。わんこ達は居なくなったから、あのセメタリーキーパーの中からパッキャラマオを引きずり出した方が勝ちにしようぜ』
韋駄天というあの人の名前がパッキャラマオに変わってます。
「受けて立ちます」
私はブラックマターボールを周囲に浮かべた。
私の能力は、ロシュの重力系魔法やバンプの赤魔法なんかよりもずっと使い勝手が良いんですから!
《あ。ねぇねぇ、ボクが勝ったらどうする?》
『ふん、ありえねぇが何でも言う事を聞いてやるよ』
冬音さん、そういうアバウトな約束はしない方が……。
《ふぅん。本当に?》
『おうよ!』
《じゃあ逆立ちをしながら〈イヤ〜ン天地逆転〜♪〉って叫んでね》
『絶対勝つぞメアー!』
「ほらみろです!」
敵に向かって突撃する冬音さんを私も追い掛けた。
【《冬音&メア》VS《韋駄天&セメタリーキーパー》 戦闘開始♪】




