第102話 序章:波乱の幕開け 《パラダイス・ロスト》
企画話、本始動前の序章でございます。
ウフ♪
ウフフフフフフ♪
青い空!
白い雲!
異界の空は快晴。
風という波に乗る私の船も、今日は普段よりも調子が良さそうです♪
私の船。飛空艇、《ダイダロス》。
そのあまりの大きさに私の部下達はこの船を〈空中要塞〉とも呼ぶわね。
その、ダイダロスの一室。
私は自分の部屋から雲を見下ろしていた。
この高度なら雲に隠れて移動がしやすいです。
『ボス』
入り口に立った部下が私を呼ぶ。
レディに向かってボスだなんて、やめて欲しいのだけれど。仕方ないわよね。
ちなみにその部下は狼男。この船内には狼男がたくさん居るわ♪
強いんだから♪
『ボス、《彼等》の出撃準備が整ったようです』
「わかりました。管制室へ向かうわ」
『しかし、よろしいのですか?』
「なにがです?」
『我々は傭兵集団。それがさらに人を雇うなど……』
「ウフフフ♪気にすることなんて無いですよ。それに我々だけでは少々てこずるかもしれませんし」
『そんな! 我々が居ればあんな会社の支部一つくらい……』
この者の言う我々とはこの狼男達で構成される軍隊の事。
私の主力。
誰にも負けない自慢の軍隊。
「何事もあらゆる状況を想定して挑まなくてはいけないの。貴方達の強さは勿論知っているわ♪他の隊を差し置いて、白兵戦で右に出る隊は居ないと思っています」
『……なら何故!? 連中の私設部隊は全員不在だという情報まであります。占拠してしまえば……』
「それが問題なのですよね〜」
私が腕を組むと、狼男は首を傾げる。
「あのズル賢いオカマ野郎に手を出すのはなかなか危険なのですよ」
『……ボスと同じ一族。でしたね?』
「そう。あんにゃろーに手を出して無事で居よう等とはハナから考えていません」
ここで狼男が一歩前に出る。
『我々が一人でも動ける限り、全力でボスをお守りします』
私は彼らのこういうトコが大好きなの。
忠実で献身的。礼儀正しく、そして凶暴。
「私ではなく、占拠後は今度は魔導社を砦として守らなければいけないですよ」
『グル……』
困ったように喉を鳴らす。
「大体クライアントの方が占拠後どれだけ維持していれば良いかを明確に提示してきていないのが最大の懸念です」
『た、確かに。依頼者は一体何を考えているのか皆目見当がつきません。これでは無制限の持久戦を覚悟しなくてはなりません』
「ウフフフ♪ ま、それらは全て占拠が完了してから考えましょう。リスクが発生したら撤退すれば良いのです」
『は、はぁ……』
「さて、管制室へ向かいましょうか♪」
私がゆっくりと立ち上がると、慌てて狼男が先導する。
さてさて、雇った子達はなかなかクセの強い子ばかり。
管制室に入った瞬間、私に対しての罵声がモニターの先から飛んできた。
〈てめぇ! デストロイ遅ぇんだよこのアマ!〉
聞いた瞬間、管制室の中に居た部下達がモニターに向かってグルルル、と敵意をむき出しにするが、私が片手をかざしてなだめる。
「ウフフフ♪お待たせして申し訳ありません。出撃準備はよろしいですか?」
〈オレはバイクで出るだけだからいつでもデストロイOKなんだよ!〉
ここでモニターの先に映っていた人物が切り替わる。
〈ベルの口調は気にしないで頂戴ボス。あと変な口癖も。私はイダの兵器に同乗するから。ね、イダ?〉
次にイダという名の者に画面が切り替わる。
〈うんっ!大丈夫だよタイタン!〉
「ウフフフ♪ しかし貴方の持ってきた兵器には驚きましたよ。機動歩兵……とでも言うのでしょうか?」
〈ボクの最新作だよっ! 説明聞くかい?〉
「ウフフフ♪ 遠慮しておきます」
ここで再び管制室に怒号が響く。
〈おいコラァ! とっとと行くぞ、このデストロイボケ共!〉
〈うっさいわねー、わかってるわよ。イダ、おねがい〉
〈はいよー。FCS起動。生体センサー起動。推進スラスター起動っと。魔導動力問題なーし! ボス、ハッチ開けてね〜〉
「承知しました」
部下に命じて出撃用ハッチを開けさせる。
さて。
私が雇った三人の者達。
戦場では名の通った者達。
通称《破壊業者》。
こと戦う事に関しては卓越した能力を発揮する。
あの馬鹿ウサギ野郎も、さぞビックリする事でしょうね♪
我らが狙うのは《魔導会社マジック・コーポレーション》アジア支社。
ウフ♪
ウフフフ♪
ウッフフフフフフ♪
愛と白兵戦と温泉巡りだけは誰にも負けない大部隊。その名も《パラダイス・ロスト》!!
そしてそれを率いますはジョーカー一族最大の異端児♪
万物を破砕するハウリングを持つ女♪
私、《ジャッカル・ジョーカー》が
素敵に
無敵に
華麗に
美麗に
優雅に
大胆に
制圧してみせましょう♪
〈ギャハハハハハハハハハ! 《ベルゼルガ》……〉
〈やれやれ。《タイタン》……〉
〈へへへ。《韋駄天》……〉
〈出る!!!〉×3