第1話 死神or泥棒?
そいつは突然やってきた。
「ただいまー」
高校から帰ってきたオレは家に入った。家といってもオレが住んでいるのは高級マンションの五階だ。父も母も仕事で外国へ行っているからいつも一人だ。
一人のはずだ。
「ゥアッハハハハハ!」
うん、誰かいるわこりゃ。警察に通報しようか?
でも人の部屋にあがりこんで勝手に爆笑してる野郎はぶちのめしてぇ。それに警察ってのはどうも好きじゃない。ま、オレは世間一般でいうところのヤンキーってやつだから仕方ないけど。
とりあえずそいつはオレの部屋にいるみたいだ。高級マンションのセキュリティを突破してきたんだ。相当凄腕の泥棒かもしれない。っつーか泥棒ならもっとこっそりしろよ。
オレは音を立てないように部屋のドアに近付き、耳をくっつけた。
「ジェ、ジェイソンくん! ヨーグルトは焼いて食べるもんじゃないって! え……? あ、そっち!? なぁんだそっちのカロリー表かよ! 早く言ってよぉ! アハハハハハ!!」
……ん、何コレ?
やっべぇ、すげぇ怖いんだけど。色んな意味で。ってか内容わけわかんないんだけど。
オレは勇気を振り絞って部屋に飛び込んだ。
「おいてめぇ! 人の部屋に勝手に上がり込んでどういうつもりだ! あぁ!?」
勢い良く入ったオレだが、部屋の中にいたそいつを見た瞬間、顔面が蒼白になった。
そこには黒く、所々に鎖のついたボロボロのローブを羽織り、手に大鎌を持ったドクロの仮面をつけた奴がいたからだ。見た目は完璧に死神だった。
オレはビビった。
マジでビビった。
だってそいつ……オレのベッドに寝転んで漫画読んでんだもん。
オレに気付いた死神が鎌を持った手を上げた。ヤッベ、殺されるわオレ。
「はぁい、君が準くんだね♪」
……は?
なんでオレの名前知ってるの? ちなみにオレの名前は[里原 準]だ。
あっ、そうか。こいつ死神じゃなくてただの泥棒だな。だから事前調査してオレの名前知ってるんだ。とりあえず……
「とりあえず居間行こうよ!」
そう言って死神風泥棒は……浮いた。
……浮いた?
……浮いた!?
「泥棒が浮くなぁ!!」
「え? 私死神だけど?」
自分から自己紹介してくれました。