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レベル-99の大佐が異世界転生したら、身体の耐久度が水に濡れたティッシュ並みだった件〜天才的な脳だけで生き残る〜  作者: ティラピア池
第2章: 希少素材の街への旅

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第26話 戦争の影と、待ち受ける長大な塹壕

はじめましての方も、お馴染みの方も、お越しいただきありがとうございます!作者のティラピア池です。今日も皆様に楽しんでいただけるよう、気合を入れてお届けします!


アルブレヒトの領地へ向けて、大軍が動き始めたという情報が広まってから、数日が経っていた。


ヴァルテリス邸では、それまでの穏やかな空気が徐々に変わり始めていた。


兵士たちは街の各所に配置され、警戒を強めている。


門を出入りする兵士たちも増え、敵軍の動向を知らせる報告が次々と届いていた。


アルブレヒト・ヴァルテリスは、邸宅のバルコニーから遠くの地平線を見つめていた。


そこに敵軍の姿はない。


それでも、彼の胸には嫌な予感があった。


何か大きなものが、確実に近づいている。


「……危険が近づいている。」


背後に立っていた一人の指揮官が、すぐに頭を下げる。


「アルブレヒト様、門の警備を増やしますか?」


アルブレヒトはしばらく黙り込んだ。


そして、静かにうなずく。


「そうだ。今使える戦力をすべて集めろ。」


「承知しました。」


「それと、もう一つ。」


アルブレヒトが振り返る。


「まだ少し時間はあるはずだ。」


指揮官が顔を上げる。


「少し……ですか?」


「すぐに中央政府へ向かえ。」


アルブレヒトは街道の方を指差した。


「大規模な攻撃が迫っていると伝えろ。そして、援軍を要請するんだ。」


「どれほどの兵力を?」


アルブレヒトは深く息を吐いた。


「可能な限りだ。」


「だが、もし五千しか送れないというのなら……それでもいい。」


「承知しました!」


指揮官は敬礼すると、すぐにその場を離れた。


しばらくして、アルブレヒトの部下の一人が馬に乗り、中央政府へ向けて出発した。


その手には、正式な援軍要請書が握られている。


アルブレヒトは再び地平線へ視線を戻した。


どうか、間に合ってくれ。



---


POV――敵軍


ヴァルテリス領から遠く離れた場所。


そこには、巨大な軍営が築かれていた。


広大な平原には無数のテントが並び、補給用の荷車が長い列を作っている。


戦馬は複数の場所に分けて配置され、兵士たちは武器や防具を一つずつ確認していた。


魔法兵たちも、それぞれの装備や魔法陣を入念に確認している。


軍営の中央には、ひときわ大きな指揮用テントがあった。


その中で、アークデューク・ルシウス・フォン・アークタヴィエルが、大きな地図を前に立っていた。


周囲には複数の指揮官が並んでいる。


ルシウスは地図の一部を指差した。


「我々の兵站状況は?」


一人の兵站担当者が前へ出る。


「すべて順調です、閣下。」


「説明しろ。」


「食料は複数の補給路に分散しております。水も十分な量を確保しています。」


担当者は地図上の印を指差した。


「補給用の荷車は主力軍に合わせて移動させます。一つの補給路が使えなくなった場合でも、別の補給路へ切り替えられるようになっています。」


ルシウスはうなずいた。


「武器は?」


「すべて点検済みです。矢、槍、剣、盾、そして攻城用の装備も十分に揃っています。」


「魔法兵は?」


「準備完了しております。都市の防衛を突破するための魔法陣も、すでに準備済みです。」


「医療部隊は?」


「主力部隊の後方に配置しております。大量のPotionも確保しています。」


ルシウスは薄く笑った。


「馬と輸送車は?」


「すべて準備済みです。疲労した馬を交換するための予備馬も用意しております。」


ルシウスは両手を机についた。


すべてが計画通りに進んでいる。


食料もある。


武器もある。


輸送手段もある。


長期間の進軍を支える補給路も確保されている。


テントの外には、すでに数万もの兵士が整列していた。


その大半はルシウス率いる貴族軍だ。


そして、その隣にはGenesis Demon軍が独自の隊列を組んでいる。


二つの軍勢は混ざっていない。


それぞれに独自の指揮官が存在している。


しかし、目指す場所は同じだった。


ヴァルテリス領。


その時、一人の伝令が指揮用テントへ駆け込んできた。


「報告!」


ルシウスが振り返る。


「言え。」


「全軍の準備が完了しました。」


伝令は深く頭を下げる。


「貴族軍、五万。」


「Genesis Demon軍、三万。」


「合計、八万の兵力が出撃可能です。」


ルシウスは満足そうに笑った。


「ようやくか。」


彼はテントの外へ出る。


目の前には、人間と異形の存在によって埋め尽くされた巨大な軍勢が広がっていた。


八万。


その光景は、まるで大地そのものが軍勢に覆われているようだった。


ルシウスは軍勢を見渡す。


そして、右手を上げた。


「進軍を開始せよ!」


その命令が、瞬く間に全軍へ伝わっていく。


長大な隊列が、ゆっくりと動き始めた。


ルシウス率いる貴族軍は街道を進み、Genesis Demon軍も独自の経路から進軍を開始する。


二つの軍。


二つの指揮系統。


そして、一つの目的地。


ヴァルテリス領だった。



---


POV――アルブレヒト


しばらくして、一人の兵士がアルブレヒトの邸宅へ駆け込んできた。


その呼吸は荒く、明らかに急いで来たことが分かる。


「アルブレヒト様!」


「何があった?」


「敵軍が動き始めました!」


アルブレヒトが立ち上がる。


「数は?」


「正確な数は、まだ確認できておりません。」


「しかし、斥候の報告によれば……かなり大規模な軍勢です。」


アルブレヒトは拳を握った。


「……ついに動いたか。」


俺は少し離れた場所で、その報告を聞いていた。


八万。


これほどの軍勢を、個人の戦闘能力だけで止めるのは不可能だ。


俺はアルブレヒトのもとへ歩み寄った。


「アルブレヒト。」


「何だ?」


俺は防衛区域の地図を指差した。


「一つ、考えがある。」


「聞こう。」


「長い塹壕を作る。」


アルブレヒトが地図へ視線を落とした。


「塹壕か?」


「ただ一本掘るだけじゃない。」


俺は敵軍が進んでくる可能性の高い場所を指でなぞった。


「複数の塹壕を繋げるんだ。」


「これほどの大軍なら、移動するための空間が必要になる。」


「そこに塹壕があれば、進軍速度を落とせる。」


「飛び越えるか、迂回する必要も出てくる。」


俺はさらに数ヶ所を指差した。


「それだけじゃない。」


「ここに魔法式の罠を設置する。」


アルブレヒトが地図を見る。


「魔法兵は?」


「塹壕の後方に配置する。」


「敵が罠にかかったところで、一斉に攻撃する。」


アルブレヒトはしばらく地図を見つめた。


やがて、ゆっくりとうなずく。


「……時間を稼ぐためか。」


「そうだ。」


「敵を正面から止める必要はない。」


「進軍のテンポを崩せれば、それだけで意味がある。」


アルブレヒトが俺を見る。


「分かった。」


「やってくれ。」



---


POV――アラリック


数時間後。


俺は街の外で、複数の指揮官と大勢の作業員たちと共に塹壕を掘っていた。


土が次々と掘り返され、長大な塹壕が地面を横断していく。


「もっと急げ!」


俺は前方を指差す。


「止まるな!」


作業員たちは必死に作業を続けていた。


その近くでは、一人の少年が忙しそうに走り回っている。


エリアス。


彼は現場の指揮を補佐する一人の指揮官だった。


身体能力はそれほど高くない。


だが、動きだけは異常なほど速く、人を動かすことにも長けていた。


「司令官! 東側、もうすぐ終わります!」


「北側は?」


「まだ掘っています!」


俺は北側を指差した。


「もっと急がせろ。」


「了解です!」


エリアスはすぐに走っていった。


俺はその背中を見つめる。


身体は弱そうなのに、妙に動きが速い。


その時――。


ドドドドド……。


遠くから、かすかな音が聞こえてきた。


俺は足を止める。


「……待て。」


周囲の人間も一斉に動きを止めた。


音が徐々に大きくなっていく。


ドン。


ドン。


ドン。


大量の足音。


俺は地平線へ目を向けた。


遠くに砂煙が見える。


まさか……。


俺は完成間近の塹壕を振り返った。


そして、小さく笑う。


「……間に合った。」


一人の指揮官が駆け寄ってくる。


「司令官!」


「報告。」


「塹壕、すべて完成しました!」


「魔法式の罠も、設置完了です!」


俺はうなずいた。


「よし。」


「魔法兵はそのまま配置を維持。」


「了解!」


俺たちは急いで後方へ移動する。


完成した塹壕の後方には、魔法兵たちが配置されていた。


全員が、近づいてくる敵軍を見つめている。


そして――。


敵軍の進路が、突然変わった。


「……何?」


俺は思わず声を漏らした。


敵軍は、塹壕へ向かっていない。


まるで最初からそこに何があるのかを知っていたかのように、巨大な隊列が別の方向へ進み始めた。


「どういうことだ……?」


魔法兵たちの間にも動揺が広がる。


「敵が来ません!」


「罠を避けています!」


「塹壕にも近づいていない!」


俺は敵軍の動きを目で追った。


奴らは迷っていない。


最初から、こちらの防衛線を避けるように進んでいる。


「……まずい。」


俺は即座に判断した。


「全員、撤退!」


「ですが、塹壕は――」


「捨てる!」


俺は即座に言い切った。


「罠も魔法兵も全部だ!」


「ここに残っていても意味がない!」


「了解!」


魔法兵たちは一斉に配置を解除した。


作業員も、指揮官も、魔法兵も、全員が俺たちと共に街へ向かって走り始める。


完成したばかりの長大な塹壕。


設置したばかりの魔法式の罠。


そのすべてが、一度も使われることなく置き去りにされた。


俺は走りながら、何度も後方を振り返った。


敵軍は、こちらの防衛計画を完全に避けている。


「……いつから気づいていた?」


隣を走るエリアスが、ガムを噛みながら答えた。


「Demon側の斥候が、こちらの準備を見つけたのかもしれません。」


俺は黙った。


「……可能性はあるな。」


エリアスは何事もなかったかのようにガムを噛み続ける。


「敵も、なかなか頭がいいですね。」


俺はエリアスを見る。


「エリアス。」


「はい?」


「お前、今は任務中だよな?」


「はい。」


「だったら、なぜガムを噛んでいる?」


エリアスは肩をすくめた。


「緊張しないためです。」


俺は数秒間、無言で彼を見つめた。


そして――。


Telekinesis。


近くにあった盾が、ふわりと浮き上がった。


エリアスが振り返る。


「え?」


ゴンッ!


盾がエリアスの頭に軽くぶつかった。


「痛っ!」


エリアスは頭を押さえた。


「痛いですよ、司令官……。」


俺は冷たい目で彼を見る。


「任務中にガムを噛むからだ。」


「すみません……。」


エリアスは素直に頭を下げる。


これで終わったと思った。


しかし、数秒後。


「司令官……。」


「何だ?」


「この任務が終わったら……ガム、またもらってもいいですか?」


「ダメだ。」


「なんでですか!?」


「任務中に噛んでいたからだ。」


「でも一個だけですよ!?」


「ダメだ。」


「半分!」


「ダメ。」


「四分の一!」


「ダメ。」


エリアスは必死に食い下がる。


「お願いします、司令官。一個だけ……。」


「ダメだ。」


「もっと速く仕事します!」


「お前はもう十分速い。」


「じゃあ、ご褒美にガムを……。」


「ダメ。」


エリアスは悲しそうな顔をした。


「……酷い。」


俺はため息を吐く。


「任務に集中しろ。」


「はい……。」


俺たちは、そのまま撤退を続けた。



---


帰還


塹壕を掘っていた作業員たちと魔法兵たちは、そのまま街へ向かって移動していた。


俺は複数の指揮官と共に、その先頭を歩いていた。


しかし、塹壕から離れるほど、周囲の空気がおかしくなっていく。


人の声が聞こえない。


動物の声も聞こえない。


普段なら鳥の鳴き声が聞こえる森でさえ、異様なほど静かだった。


そして――。


バサッ!


突然、大量の鳥が木々の中から飛び出した。


俺は足を止める。


鳥たちは一斉に空へ逃げていった。


俺はその姿を見つめる。


……おかしい。


大軍の音に驚いたのなら分かる。


だが、まるで別の何かから逃げているようにも見える。


俺は森の奥へ視線を向けた。


何もない。


敵兵もいない。


魔物の姿もない。


ただ、風に揺れる木々だけがそこにあった。


隣では、エリアスが相変わらずガムを噛んでいる。


俺は彼を見る。


「……エリアス。」


「はい?」


「何か変だと思わないか?」


エリアスはガムを噛むのを一瞬だけ止めた。


そして、森へ視線を向ける。


「……少しだけ。」


「何が?」


「鳥たちの逃げ方です。」


俺は黙った。


さっきまでのふざけた態度とは違う。


だが、数秒後には再びガムを噛み始めた。


「でも、理由までは分かりません。」


俺は小さくため息を吐く。


本当に変な奴だ。


俺たちは、そのまま街へ向かった。


やがて、街の壁が見えてくる。


俺たちは足を速め、そのまま街へ入った。


そして、すぐにアルブレヒトのもとへ向かった。


アルブレヒトは、すでに邸宅で俺たちを待っていた。


「戻ったか。」


俺はうなずく。


「はい。」


「塹壕は完成しました。」


アルブレヒトが少しだけ表情を緩める。


「そうか。」


「魔法式の罠も?」


俺は一瞬、言葉を止めた。


「……全部、無駄になりました。」


アルブレヒトの眉がピクリと動く。


「何?」


「敵は塹壕に近づきませんでした。」


「魔法式の罠も、完全に避けられました。」


「そして、こちらの魔法兵も配置を維持する意味がなくなったため、全員撤退しました。」


アルブレヒトは黙っていた。


その表情から、徐々に苛立ちが見えてくる。


「……敵は、最初からこちらの防衛線を知っていたのか?」


「分かりません。」


俺は首を横に振った。


「ただ、敵軍は迷うことなく進路を変えました。」


「まるで、こちらの準備をすべて把握しているように。」


アルブレヒトはしばらく黙り込んだ。


そして――。


「……厄介な敵だ。」


低い声だった。


明らかに苛立っている。


「こちらが準備を整えるより先に、対策を取ってくるとはな……。」


俺は窓の外を見る。


敵は八万。


しかも、ただ力任せに攻めてくるだけではない。


こちらの防衛を読み、進軍ルートまで変えてきた。


俺は小さく息を吐いた。


「……次は、どうする。」


戦争は、まだ始まったばかりだった。


――次回へ続く。

少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部の**【ブックマークに追加】や【評価(★★★★★)】**をいただけると嬉しいです!皆様の応援が執筆の大きな励みになります!もしかしたら「こういう設定の小説は途中でエタる(エピソードが途絶える)んじゃないか……」と思って、ブックマークをためらっている方もいるかもしれません。ですが、断言します。私はこの作品がライトノベル化、コミカライズ、そしてアニメ化するまで絶対にエタりません(更新を止めません)!ぜひ大佐の行く末を、一緒に最後まで見届けてください!

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