第21話 骸骨たちの新たな名と、謎の誕生
はじめましての方も、お馴染みの方も、お越しいただきありがとうございます!作者のティラピア池です。今日も皆様に楽しんでいただけるよう、気合を入れてお届けします!
僕が屋敷へ戻ると、庭で誰かが行ったり来たりしていた。
その人物をしばらく眺めていると、アヤだと気づいた。
「アヤ。」
「えっ!?」
アヤは肩を跳ねさせ、驚いたように振り向いた。
「もう! 驚かせないでよ!」
「驚かせるつもりはなかった。お前は一人で何をしてるんだ?」
「私? えっと……さっき何か考えてたんだけど……。」
アヤは腕を組み、首を傾げる。
「……あ。」
「思い出したのか?」
「そうそう! 昨日進化した私のスケルトンを召喚しようと思ってたんだった!」
「昨日のスケルトンか。」
アヤは庭の奥へ向かい、ゆっくりと魔力を集中させる。
次の瞬間、地面が低く震え、黒い霧が地面から噴き出した。
霧の中から巨大な骸骨が姿を現し、その後ろから二体のスケルトン兵が続いて現れる。
三体のスケルトンは、アヤの前まで歩くと同時に膝をついた。
「お嬢様。」
「……え?」
アヤの目が大きく見開かれる。
「現在の我々へのご命令を。」
「……ちょっと待って。」
アヤは三体を交互に見る。
「私のスケルトン……喋った?」
「はい。」
「喋ってる!?」
僕も思わず固まった。
「……俺にも予想外だ。」
三体のスケルトンは顔を見合わせると、再びアヤへ視線を戻した。
「お嬢様。一つ、お願いがございます。」
「な、何?」
「どうか我々三体に、立派な名をお与えください。」
「名前?」
「はい。我々自身の名を。」
アヤは困ったように僕を見る。
「アラリック、助けて。」
「……俺が?」
「名前、考えてよ。」
アヤが少し困った顔で頼んでくる。
僕は小さくため息をついた。
「はいはい……。」
僕はまず、スケルトン・キング・オブ・デストロイヤーへ視線を向けた。
「じゃあ……レオンハルト。」
しばらく沈黙。
「……否。」
「またかよ!」
僕は頭を抱える。
「これで二回目だぞ……。」
少し考えたあと、僕は別の名前を口にした。
「それなら……アレクサンダー。」
その瞬間、スケルトン・キング・オブ・デストロイヤーの頭蓋骨がゆっくりと上がった。
「アレクサンダー……。」
低い声が庭に響く。
「威厳があり、鋭い気配を感じる名です。」
そして、アヤへ深く頭を下げる。
「お嬢様。どうか、その名を私に。」
アヤは少し驚きながらも頷いた。
「えっと……分かった。今日からあなたはアレクサンダーね。」
「ありがとうございます、お嬢様。」
その瞬間――。
ズゥゥゥン……!
地面が大きく震えた。
「えっ!?」
アヤが驚いて周囲を見る。
アレクサンダーの身体から、先ほどまでとは比較にならないほど濃密な魔力が立ち上っていた。
砂埃が舞い、庭の木々がざわめく。
僕は思わず一歩下がった。
「……名前を与えただけで、ここまで変わるのか?」
アレクサンダーの眼窩に宿る光が、以前よりも強く輝いていた。
その隣にいた二体のスケルトンからも、同じように魔力が溢れ始める。
「……俺たちの番ってことか。」
僕は二体へ視線を向ける。
「じゃあ、お前たちにも名前を付けるか。」
一体目のスケルトンが首を横に振った。
「先ほどの名は、我々には相応しくありません。」
「……お前も拒否するのか。」
僕は額を押さえた。
「分かった。なら……ジュリアス・シーザー。」
一体目はしばらく沈黙した。
やがて、ゆっくりと頭を下げる。
「……その名、気に入りました。」
「よし。一人目は決まりだ。」
僕は二体目を見る。
「じゃあ、お前は……チンギス・ハン。」
二体目も静かに考え込む。
そして――。
「その名を、我が名といたします。」
「よし!」
三体の名前が決まった。
アレクサンダー。
ジュリアス・シーザー。
チンギス・ハン。
その直後、再び空気が震えた。
ズン……!
「な、何……?」
アヤが思わず髪を押さえる。
三体の魔力が重なり、庭全体を覆っていく。
まるで戦場へ向かう軍隊のように、彼らの立ち姿には明確な意志が宿っていた。
そして――。
――同時刻。
遥か遠く。
雲に覆われた山の頂上で、一体の巨大な魔物が目を開いた。
「…………。」
その瞬間、周囲の空気が変わる。
傍らにいた従者が、ゆっくりと顔を上げた。
「……あなた様も、お感じになりましたか?」
巨大な魔物は遠くを見つめる。
「当然だ。」
低く響く声。
「今、この世界のどこかで……強大な力が生まれた。」
従者が驚いたように目を細める。
「まさか……。」
「まだ完全な力ではない。」
巨大な魔物は口元をわずかに歪めた。
「だが、いずれ……。」
山の上を強い風が吹き抜ける。
「我々と肩を並べるほどの存在になる可能性がある。」
「我々と……同等に?」
「ああ。」
巨大な魔物は、遠くの空を見上げた。
「面白い。」
その瞳には、僅かな興味が浮かんでいた。
「一体、何が生まれたというのだ?」
――再び、アヤの屋敷。
「アラリック。」
「ん?」
アレクサンダーが僕の前へ歩いてくる。
「我々に、戦の知識をお教えください。」
「戦の知識?」
「はい。」
アレクサンダーは三体のスケルトン軍を見渡した。
「戦術、罠、部隊運用、地形の利用……敵を倒すために必要な全てを。」
僕は少し考えた。
そして、口元に笑みを浮かべる。
「……分かった。」
元軍人であり、軍事研究者でもあった僕にとって、それは専門分野だった。
僕は地面に簡単な図を描く。
「戦争は、単純に強い奴が勝つわけじゃない。」
「敵の位置。」
「地形。」
「補給。」
「情報。」
「そして、敵が次に何をするかを予測することだ。」
三体のスケルトンは、一言も発さずに僕の説明を聞いていた。
僕が一つ説明するたびに、彼らはその内容をすぐに理解していく。
「……お前ら、本当に頭いいな。」
アヤも少し離れた場所から訓練を眺めていた。
「私のスケルトン……凄すぎない?」
その後、僕は彼らに地形を利用した待ち伏せ、敵の進路を限定する罠、少数の部隊で大軍を錯乱させる方法などを教えていった。
三体は、それぞれ異なる方法で戦術を理解していく。
アレクサンダーは全体の指揮。
ジュリアス・シーザーは部隊の配置。
チンギス・ハンは敵の動きを読む。
「……まるで、本物の軍隊みたいだな。」
そのとき、屋敷の方向から声が聞こえた。
「アラリック!」
僕は顔を上げる。
「アラリック、こちらへ来てください!」
「……俺?」
僕はアヤを見る。
「アヤ、俺はちょっと行ってくる。」
「うん。訓練は私が見ておく。」
「頼んだ。」
僕はその場を離れ、声のした場所へ向かった。
そこにはアルブレヒトが立っていた。
「アラリック殿。」
「何かありましたか?」
アルブレヒトは穏やかに笑う。
「貴殿には、改めて感謝を伝えたい。」
「……え?」
「四つの卵を孵化させることに成功した。」
「……何?」
僕はすぐに部屋へ入った。
そこには、大きな水槽が置かれていた。
水の中では、あの魚がゆっくりと泳いでいる。
時折、水面から身体を出しては、再び水中へ戻っていく。
「……まるで呼吸してるみたいだな。」
僕は水槽へ顔を近づける。
さらに観察すると、その身体には翼のような器官まであった。
「やっぱり普通の魚じゃない……。」
僕はしばらく魚を観察した。
「これを……育てるのか。」
そして、僕は三人の護衛兵とともに、その魚の飼育を任されることになった。
しばらくして、僕は魚へ手を伸ばす。
「ちょっと触ってみるか。」
指先が魚の身体に触れた瞬間――。
「……っ!」
ビリッ!
「痛っ!」
僕は反射的に手を引っ込めた。
「何だ、今の……?」
手を見てから、再び魚を見る。
「電気……?」
しかし、次の瞬間。
「…………。」
頭が急に重くなった。
「……あれ?」
視界がぼやけていく。
「アラリック様!?」
三人の護衛兵が慌てて駆け寄る。
僕の意識は、そのまま途切れた。
「アラリック様!」
僕の身体が床へ倒れる。
三人の護衛兵は急いで僕を助け起こそうとした。
だが――。
「うっ……!」
三人が魚に触れた瞬間、身体が硬直する。
「な、何だ……これ……。」
「…………。」
そして三人も、その場に倒れた。
――一方、その頃。
アヤはまだ庭にいた。
「……アラリック、遅いな。」
アレクサンダーがアヤの足元まで歩いてくる。
そして、そのまま座り込んだ。
「どうしたの?」
「アラリック殿に、もっと戦術を教えていただきたい。」
「えぇ……。」
アヤは頭を抱える。
「もう……アラリック、どこ行ったのよ。」
アレクサンダーは何も言わず、アラリックが去っていった方向を見つめていた。
その姿は、まるで主人の帰りを待つ忠実な兵士のようだった。
そして――。
翌日……。
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