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塔は静かに崩れる


若い女「憎くて憎くて・・・」


泣きながら自分の感情を口にしているこの女の子は

彼氏に浮気をされて復讐をしようと考えていると

相談をしてきた。


「そう。」


私は静かに呟き

机の上にタロットカードを混ぜる

3枚並べる


ワンド7

ペンタクルペイジ

___隠者


「復讐しろって出ました・・・?」


若い女は少し目を輝かせて聞いてきた


「いえ、感情的な復讐はお勧めしないわ」


「・・・え」


先ほどとは変わって目の輝きは消え落ち込んでいる


「あなた、復讐したいと思ってないでしょ」


彼女は目に涙を溜めうつむいた


「自分自身の価値を守ることが一番の復讐よ」


彼女へティッシュと隠者の絵柄が描かれていカードを渡した

その紙の裏にはお店の名前と連絡先を書いている


「また何かあれば」


彼女は決意を固めたようでカードを受け取り涙を拭って帰っていった



『はぁ、憎しみは憎しみしか生まないのに』


机を浄化しながら独り言を言っていると次の相談者が入ってくる




目の前に座った相談者は落ち着きがなかった


「・・・当たりますか?」

彼女はようやく声を出した


私はカードを混ぜながら少し間を置いて


「当たるかどうかは、あなた次第です」

「カードは未来を決めるものではなく、選択肢を与えるだけです」


彼女は眉をひそめる


「じゃあやっても意味ないんじゃ・・・」


「ある」


目を合わせる


「“知らないまま選ぶ”のと“知った上で選ぶ”のは違う」


カードをめくり、出たのは

——塔。


「・・・悪いカード、ですか?」


「ええ、かなり」


空気が一気に冷える

彼女の血の気が引いていくのがわかる


「でも安心して。この未来は確定したわけではない」


カードを目の前にかざして続ける


「貴方自身が壊れる、でも選択を変えれば壊れるのは“間違った前提”だけ」


「・・・どういう意味ですか?」


机の上にカードを置き指で叩く


「あなた、誰かを信じすぎている。その人はあなたを守らない」


沈黙になり

彼女の呼吸が浅くなる


「・・・そんなこと」


「あります」


彼女に逃げ場を与えず、続ける


「このままだとあなたは“壊される側”になる」


目を伏せ小さく呟く


「・・・どうすれば・・・」


彼女はゆっくりと顔をあげ、わたしを見つめる

少し微笑み


『簡単です、選び直す』



「女性が一名倒れているのを発見。死亡を確認。」


現場に着くと既に人だかりができていた


「おう」


「あ、榊警部、お疲れ様です」


「瀬名、状況は」


「はい、害者は小野ゆうな、25歳。自宅のベランダから落ちた模様」


榊恒一は周囲を一瞥いちべつした


割れたガラスや散乱した家具

綺麗に崩れている部屋をみて



「まるで・・・・演出だな」


誰にも聞こえない声で呟く


「え?」


部下の瀬名が振り返るが

榊はしゃがみ込み、床を指でなぞる

違和感。


崩れ方が “綺麗すぎる”


「誰かが意図的にやっている・・・」



「自殺でしょうか。」


榊に近づいて声をかける瀬名


「自殺にしては不自然すぎることが多い。」


その時別の刑事が声をかけた

「害者の手にはこんなカードが握られていました。携帯を調べたら昨日占いに行っていますね」



「タロットカード・・・占いか。」


「関係ないだろ」


何かと突っかかってくる黒崎の肩に手を置き


「可能性がゼロではない限り、捜査するんですよ。瀬名、車出せ」





カラン


「警察です」


「…礼儀って習わなかった?」


ノックもせずドアを開ける男に

顔も上げずに机の上のタロットを混ぜる


「急いでるんで」


男は部屋に入り、私の目の前に座った

目線はタロットカードに向いている。


「占い師、か。」


「“選択を見せる人”よ」


「便利な言い換えだな」


鼻で笑った


一緒にきた若い刑事は少しピリついた空気に

緊張しているのがわかる。


「まぁ、いい。本題に入ろう。昨日来た女」


少しため息をついて


「・・・死んだ」


「そう。」


「それで終わりか?」


「事実はそれ以上でもそれ以下でもないでしょ」


男は立ち上がって、一歩近づく


「未来が見えるなら、止められただろ」


その言葉に反応して目を合わせ睨む


「見えるのは“分岐”、選択肢よ。どれを選ぶかは本人」


私は感情を抑え静かに返す


「責任逃れか」


「違う」


間髪入れずに返す


「人の人生を“操作できる”と思ってるなら、あなたの方が傲慢」


空気が張り詰め

若い刑事は息を呑む


私の目の前にいるこの男はじっと観察するように見つめている


「・・・あんた、嘘はついてないな」


「当たり前でしょ」


男は少し笑いながら


「気に入らないが、使えるかもしれない」


「は?」


その時、机の端にあったカードが、ひらりと落ちた


床に滑り、裏返る


 ——愚者。


「・・・」


それを拾い上げ、しばらく見つめて小さく笑った


「何笑ってる」


眉をひそめる男にカードを軽く掲げる


「あなたとの相性、最悪」


「・・・は?」


「計画性ゼロ、衝動的、常識外れ。最も組みたくないタイプ」


淡々と並べる


「言いたい放題だな」


「でも、一番“予測できない未来”を引き寄せる」


「つまり?」


私はカードを机の上に置き指をさす


「最悪で、最高の組み合わせ」


視線がぶつかる




先に笑ったのは男だった


「いいな」


「何が」


「面白そうだ、俺は榊恒一」


ため息をつく


「・・・ほんと嫌いなタイプ」




榊はまた目の前に座り

この事件についてどう考えるかと聞いてきた


「あなた、占いは嫌いなんじゃ」


「嫌いだ、だが占いの結果が現実となっている、彼女は自殺でも、事故でもないと俺は思う」


「そう、でも私には関係ない」


「ある。死人が出てる」


ため息をつく

「警察でやれば?」


「証拠は揃える、次の被害者が出ないよう犯人を一刻も早く捕まえたい」


沈黙が続き、折れるしかなかった


「可能性でもいい、使えるものは使う」


「・・・最悪。」




昨日彼女のカードは“塔”だった


1枚引いてみる


——悪魔


もう1枚


——月


「何が出た」


「この人、誰かに縛られていた。」


「具体的に」


「そうね、この悪魔のカードは“支配関係”。そしてこの月は“嘘、隠される”。つまり日常的接触があり、彼女を支配しやすい人」


「恋人か」


「そう。しかも、その人・・・“正しいことをしてる”と思っている」


榊は眉をしかめて、口を開いた


「現場は不自然だった、壊し方が綺麗すぎた」


「それは意味を持たせてるから。事故でも自殺でもない彼女は“壊された”のよ」


榊はため息をつき


「瀬名、車回せ」


「はい」


「あんた、ついてきてもらうぞ」


刑事たちと車に乗った



「ここか」


「はい」


榊と瀬名と呼ばれる若い刑事に連れられ

被害者の恋人、斉藤のところへ


警察手帳をかざし、恋人が死んだことを伝え

話を聞きたいと伝えると斉藤はうつむいた


「あれは事故なんです」


「どういうことですか?」


瀬名が斎藤へ聞くと同時に

私は言葉を遮るように


「違う」


「おい」


榊は止めようとしたが

斎藤は“違う”と言った私の顔を見て少し口角が上がり

それに気づいたのか私を止めるのをやめた


「あなたが彼女を殺したんです」


様子を伺う、榊と瀬名


「何を根拠に・・・」


続けようとするのを遮り


「あなた、“正しいことした”って思っているでしょ。彼女を守ったって。それは間違いよ」


また口角がピクッと動いた


「・・・は?」


「彼女、間違ってたのよね?だから正す為、殺したんでしょ?」


その言葉を聞いた瞬間

斉藤はボロボロと涙を流した


「「!?」」


榊と瀬名は驚いて、顔を見合わせる

そして斉藤は口を開いた


「・・・彼女を、守るためだったんだ」


少しの沈黙


「俺から離れる事は間違ってる!だから彼女がいなくなる前に、俺がこの手で殺すのが正しかったんだ」


「それは守ったんじゃない。支配よ。ただの独占欲。」


斉藤はその場で崩れた


カチッ

「終わりだ」


榊は手錠をかけた



取り調べで斉藤はおかしなことを言っていた


「・・・言われたんです」


「誰に、何をだ」


「・・・正しい未来を選択しろって」


それ以上は話さなかった



机に並べたカードを見る


 ——月


「・・・嘘は優しい顔をしている」


「で?」


私はため息をつき


「面倒なことになる」


「だろうな」


そして私は、次の事件へと巻き込まれる


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