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Dark plant  作者: 神崎ミア
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三話

 

 食堂から出てすぐにアイリーンの部屋に赴いたロイルは、鉢合わせたルイスに再び怪訝な表情を見せた。別部隊のことで話があるからと訪れるとは聞いていたが、同じタイミングで鉢合わせたことがロイルは不服でならなかった。ルイスはロイルをちらりと一瞥しると、何事もないようにドアをノックする。ロイルは少しルイスの肩を押して彼の頭付近を見上げた。


「退け。僕の用事は数秒で済む、そこで待っていろ」

「何だねハーゲン。大人げの無いことをするな、君こそそこの寒い廊下で落第生のように立っていたまえ」


ルイスはロイルの胸板をドンと突き飛ばしてドアノブに手をかけた。しかしそれはロイルの両手で阻まれ、ルイスは面倒そうに顔を上げた。


「退け」

「聞き分けのない子供だ」


すらりとルイスがホルスターから拳銃を取り出した。ロイルもそれと同じタイミングで刀を出す。

互いが一触即発の状態で固まっていると、ドアが突然開いて呆れ顔のアイリーンが姿を見せる。

向き合った二人を交互に見つめて、アイリーンは疲れたような声で二人に入室を促した。


「何を子供みたいなことをしているんだ。さっさと入れ馬鹿者が」


ルイスとロイルは互いに暫くにらみ合っていたが、先にルイスが拳銃を収め、ややあってロイルも刀を引っ込めた。




 


 「実は、お前達にこなして欲しい仕事がある」


アイリーンは普段の姿に戻って、前よりは快活さを取り戻していた。

長い髪を色気のある手つきで撫でつけ、ぴしっと立ったルイスと視線を逸らして不遜な態度のロイルを見遣る。


「つまり、ハーゲンとペアを…」

「…レニが…、ロイルとのパートナーの打ち切りを申し立てた。ロイルは腕がいいから前線にはどうしても置いておきたいんだ」

「アイリーン、訓練場はどうなっている?」

「代わりに別な兵を監督としてつけておく。心配はしなくていい」

「それで、任務とは?」


ルイスは気に入らない様子だったが、アイリーンには忠実だったため、ロイルの横顔を一瞬嫌そうに見つめていたが、あまり顔色は変えた様子も無い。一方のロイルは病み上がりで信頼していたパートナーが一方的にいなくなってしまって意気消沈しているのはあからさまであった。

アイリーンは一枚の写真を机の引き出しから取り出して、ロイルに向かって投げた。


「そいつの顔、見覚えがあるだろう」

「…こいつは…エックス…?」


ロイルは手に取った写真を見つめて、写っていた少年の顔に驚いた。

アイリーンは引き出しを開けたついでに葉巻を取り出し、側にあったランプから火を借りて煙を燻らせた。


「そいつはとある実験の被験体だった。数十年前に失踪していたが、非常に危険な為、我々で駆除をしることが決定した」

「…駆除って…こいつは人間…だろ?」


ロイルの問いかけにアイリーンは答えなかった。暫く写真に視線を落としていたが、ルイスがその写真を覗き込んだのでロイルは写真をルイスに押し付けた。


「任務は明日。仮とはいえ、互いにパートナーの掟は必ず守ること。いいな」


ロイルは煮え切らないものを抱えたまま、頷かずに一人ただアイリーンの顔を見つめた。

ルイスは早々に写真をアイリーンに返却すると部屋を出ようと踵を返した。

考え顔のロイルに、ルイスは去り際一言吐いて部屋を出た。


「せいぜい、足手まといになるなよ」


ロイルは言い返すことも忘れて、ルイスの顔を見遣った。何の反応が無いのも面白くないのか、ルイスは肩をすくめて出て行った。

ロイルはまだ何か用かと尋ねるアイリーンの顔を見つめ、ようやく一言搾り出した。



「…いや、なんでもない。すぐに出て行こう」


レニは何か言っていたか?レニが何者か知っているのか?はたまた、自分が誰なのかを知っているのか?そういったわだかまりを全て飲み込んで、ロイルはアイリーンの部屋を後にした。

アイリーンは机に残されたエックスの写真を見下ろして、苦しげな表情をするばかりだった。




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