四話
ランガーは夢見の悪さに飛び起きた。いつのまにか肩に掛けられていた毛布を床に落とし、
落ちた毛布を見つめて、ランガーは大きくため息をついた。
度々、ジュリアを亡くしたことを夢見ていたが、こんなに鮮明だったのはランガーにとっても初めてだった。何か飲み物を取ってこようと立ち上がった瞬間、ランガーの脳裏に、ある一点が浮かび上がった。
居なくなってしまったロイルと、最近アクアドームで噂される殺人鬼の話。
まさか、とランガーは青ざめて額に片手をやった。
あの日、結局研究室から逃げ出してしまった試験体。その姿をここ数年間探し続けていたが、
まさかこんな形で会う日が来るとは思わなかった。
ランガーは急いで上着を羽織り、エレベーターへ向かった。
ロイルがいない事態を楽観視していたが、とうとう重要となった。焦る気持ちでエレベーターのボタンを押したランガーの胸には、あの日のことが思い出されていた。
薄暗い室内。
ぽつぽつと何もない空間を歩いていたロイルは、怪我と疲労からついに膝をついた。
つい最近、ここにいつの間にかいて、その前は確か死体を見つけたところまでは覚えていた。
だがその犯人らしき少年に接触してからの記憶がない。ただ処置された怪我だけが痛む。
部屋には窓もなく、おおよそ三日は監禁されているとロイルは考えた。
体がだるく、何もないくせにただただ広い室内に、ロイルは絶望感を抱いていた。
もしかしたらこのまま死んでしまうのでは?そう考えるがとにかくけだるい。
ついに横になったロイルはぼんやりと教会で別れてしまったリックを思い出していた。
あの情けない青年は墓地で何を思ったのか気になった。
あの反応からして、リックとヴァレスが友好関係だったのは明らかだが、
墓場では別に複雑そうな表情を見せていた。ロイルは目を閉じた。
今死ねたなら、ヴァレスは許してくれるんだろうかと、少しだけ考えた。
ふと、目が痛いほどの光が差し込んで、ロイルは閉じたばかりの目を開いた。
逆光で全然誰が立っているのか見えないが、一人、男が立っていた。
目を凝らすと、男は聞き慣れた声でこう言った。
「さて、お帰りロイル」
「貴様…!」
次第に慣れた目が男を捕らえる。
男はロイルに歩み寄って、ロイルと全く同じ顔でにっこりと微笑んだ。
「お腹空いてないか?ご飯にしよう」
そう言った男―レインは冷酷な眼差しでロイルを見下ろした。