一話
「お前は、どうしてこの町が廃墟になったか知っているか?」
少年突然の質問に、足場の悪い下ばかり注視していたリックは思わず足を止める。
もう一度リックが聞き返す間もなく、少年は同じ事を尋ねた。
「どうしてこの町が廃墟になったか…、分かるか?」
「いや、知らないけど…ねえ、お前はやめてくれる?俺は君より年上なんだしさあ…」
「じゃあ、名前を教えてくれ」
「俺はリック。リック・ウィーゲル。君は?」
「…僕は、ロイル…」
「そうか、改めてよろしく」
リックはさわやかな笑顔と共に、少年、ロイルに右手を差し出した。
ロイルは暫くその右手を見つめていたが、やがてすぐに背をむいて
とげとげしく返した。
「僕はそうゆう馴れ合いが嫌いなんだ」
リックは一度差し出した行き場のない右手をそっと下ろし、生意気なガキという言葉と共に
唇をきゅっとかみ締めた。
「この町は、数年前最初に人形が暴走した町だといわれている。おかしい話だ人間が作ったものだというのに、未だに世の中は殺戮兵器の言いなりだ。」
ロイルがそう呟くのを、リックは感慨深く聞いていた。
彼にもまた、思うことがあったのだ。
「…そうだよね、俺も両親を殺されたんだ…俺はいいとこのお坊ちゃんでさ、しかも長男だったんだ。ほら、そうゆう生まれの長男はなにかと期待されるんだ、それで仕方なく、軍人に…ねえ!」
「なんだ?」
リックはロイルの側まで駆け、片方の腕をやんわり掴む。
ロイルは嫌そうな顔をしてリックを見上げたが、腕は振り払わなかった。
「君、夢はある?」
「夢?」
「俺はね、あるよ。仇をとりたいんだ…両親の…。今回の任務が終わったら俺、レイディアンに入隊するんだ!」
「…正気か、お前」
「えっ?な、何でだよ?だってレイディアンは人形駆除の特殊部隊だろ?合ってるじゃないか」
「いや、そういうことを言っているんじゃ―」
ロイルが言いかけた瞬間、廃墟に広がる林から、大きな叫び声が聞こえて二人はハッと息を止めた。
いくつかの発砲音が響き、リックは思わず体が震えた。
「サジュ曹長の声だ…!た、助けに行かないと…!」
「待て!リック!」
ロイルの制止を振り切り、リックは走り出した。肩に提げていたライフルを構え、
銃声響く林を駆け抜ける。
ロイルは暫く唖然として立ち止まっていたが、すぐさまリックを追って走り出した。