表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀の三姫  作者: suzuyumi
7/12

序章〜夕暮れのお茶会〜

姉妹は約束通り、ティースの私室でお茶をしていた。


優雅な家具が並ぶ部屋の中央には、白いテーブルクロスがかけられたティーテーブル。

その上には、城下町の新しい店から取り寄せたケーキと、香り高い紅茶が並んでいる。


「このケーキ美味しい!」

ルツが幸せそうに頬張る。口の端にクリームをつけたまま、無邪気に笑った。


「城下の新しい店のものよ。評判がいいと聞いて取り寄せたの」


ティースが優雅に紅茶を口に運ぶ。


「ティース、あなた本当に何でも知ってるわね」


クーロが感心したように言う。


「姉様には敵いません。朝から訓練して、昼は政務に、夜はパトロール…いつ休んでるんですか?」


「えー、ちゃんと寝てるよ?多分」


「多分って…」


三人は笑い合った。

部屋の空気が、ほんの少しだけ和らぐ。


「…そういえば、最近気になることがあって」

クーロの声のトーンが少し落ちる。


「気になること?」


ルツがカップを置き、姉を見た。


「市中に、粗悪品の魔力緩衝石が出回ってるらしいの」

「粗悪品…?」

「そう。それが原因で体調を崩す人が増えてるって。今、調査中だけど出所が分からないのよ」


ティースの表情が険しくなる。紅茶を持つ手が、わずかに止まった。


「ヴェルナー…クラウゼ殿に調査を任せてるのね?」

「ええ」


小さな沈黙が落ちる。

カップの中で紅茶の表面が、静かに揺れた。


「実は、私も気になることがあります」


ティースが静かに口を開いた。


「何?」


クーロとルツが同時にティースを見る。


「防壁システムに、僅かな淀みを感じるんです。数値上は正常ですが…どこか違う」

「淀み…」

「危険なの?」


ルツの声が小さくなる。


「大丈夫よ、ルツ。まだ小さな異常だから」

ティースは優しく微笑んだ。だが、その笑みはどこか硬い。


「でも…」


彼女は窓の外に視線を向けた。

夕日が傾き、長い影が床を染めている。


「念のため、今日のうちにもう一度、現地を確認してきます」


「今から?」


クーロが驚いたように声を上げる。


「ええ。明日に再検査を予定していたんですが、気になって…」


ティースは立ち上がった。青いドレスの裾が、優雅に揺れる。


「ティース?」


クーロが心配そうに声をかける。立ち上がりかけたが、ティースが手で制した。


「夕飯までには戻りますから」


「気をつけてね」


「はい」


ティースはドアに向かって歩き出した。

クーロとルツは、その背中を見送る。


「姉様…最近、何か変ですよね」


ルツが小さな声で呟く。不安そうに、クーロを見上げた。


「…そうね。けど、大丈夫よ」


クーロはそう言いながらも、心の奥に小さなざわめきを感じていた。


窓の外では、陽がゆっくりと沈みかけている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ