序章〜旅立ちの朝〜
翌朝。
ルツとアスリルは、城門の前に立っていた。
見送りに来た兵士たちが、静かに敬礼をする。
「本当に行くのか?」
アスリルが問う。ルツは力強く頷いた。
「うん。ティース姉様を助けなきゃ」
「……そうだな」
「ありがとう、アスリル。一緒に来てくれて」
「一人で行かせるわけにはいかないだろ? クーロお姉様のご命令でもあるしな」
アスリルは少しだけ笑って見せた。
その穏やかな笑顔に、ルツの緊張がほどけていく。
「ふふっ……ありがとう」
そして、二人は城門をくぐろうとした――その時。
「ルツ!」
振り向くと、クーロが駆け寄ってきた。
息を切らしながら、手の中に小さなものを握っている。
「これを――」
差し出されたのは、小さなペンダント。
オレンジ色の石が、朝日を受けてやわらかく光っていた。
「姉様、これ……」
「私が使ってた魔力緩衝石。お守り代わりに持っていって」
クーロはルツの首に、そっとそれをかけた。
石から、微かに温もりが伝わってくる。
きっと、クーロの魔力が残っているのだ。
「姉様……」
「一緒に行けないけれど、無事を祈ってるわ」
クーロは笑った。
けれど、その瞳には涙が浮かんでいる。
本当は、一緒に行きたい。
妹を危険な旅に出したくなんてない。
でも――城を離れられない。
ティースを探すためにも、この国を守るためにも。
「……ありがとう、姉様。必ずティース姉様と一緒に帰ってきます」
ルツはクーロに抱きついた。
クーロもぎゅっと抱きしめ返す。
「待ってるから。絶対に無事に帰ってきてね。約束よ」
「……うん」
抱擁を解き、ルツとアスリルはゆっくりと城門をくぐった。
背後で、クーロが静かに見送っている。
オレンジ色のペンダントが、ルツの胸元で小さく揺れた。
まるで、クーロが傍にいるように。
朝日が二人の背を照らし、城の姿は次第に遠ざかっていく。
―――
城門の前。
クーロは一人、立ち尽くしていた。
ルツの背が見えなくなるまで、ずっとその場を離れなかった。
「……ごめんね、ルツ」
小さく呟く。
首元が、少し寒い。
いつも身につけていたペンダントが、もうない。
けれど、それでいい。
あの石が、ルツを守ってくれるはずだから。
「無事でいて……お願い」
クーロは振り返り、ゆっくりと城へ戻っていった。
彼女の戦いは、まだ始まったばかりだ。
―――
こうして、ルツの旅が始まった。
姉を救うために――
そして、まだ知らぬ真実へと向かうために。
――序章 了――
序章終わりました!
読んでくれてありがとうございます。
続きは随筆中です、サクッと読める長さで出して行きたいです!よろしくお願いいたします!




