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第三話3

祭りの当日はまるで別の街になったかのような賑わいだった。

昨日まで準備に追われ、木枠の組み立てや品物の陳列で忙しそうだった屋台が、今日は人波に呑まれそうなほどの活気を放っている。

風に揺れる色鮮やかな旗や提灯が陽光を浴びてきらめき、通り全体がひとつの大きな舞台のようだ。


香ばしい肉の匂い、甘い菓子の香り、香草の刺激的な香り――それらが混じり合い、空腹を誘う。

あちこちから威勢のいい呼び声が飛び、子どもたちの笑い声が絶えない。

道端では旅芸人が楽器を奏で、手品師が歓声を集めている。


挿絵(By みてみん)


「ねぇ、あっちからすごくいい匂いがする!」


リシェルが袖を軽く引っ張る。

彼女の視線の先には、鉄板の上で音を立てながら焼かれる肉と野菜。

シオンは小さく笑い、彼女の横に並んで歩き出した。

――これが本番の祭り。昨日までの賑わいが、本当に準備だったのだと感じさせる。


屋台の前に立つと、リシェルは目を輝かせながら網の上の肉をじっと見つめた。


「……旨そうだな」


「ええ、とっても。食べない?」


ふっと笑って、シオンは焼き立ての串肉を二本購入し、ひとつを彼女に差し出した。


「ほら、これ」


差し出された肉串を受け取ったリシェルは、軽く息を吹きかけてから豪快にかぶりつく。

熱さに目を細めながらも頬張ると、香ばしい肉汁とソースが溢れ、口元に小さな跡を残した。


「ん、ありがと」


リシェルは口いっぱいにしながらも、照れたように笑みを浮かべる。


シオンは呆れたように眉を寄せ、彼女の頬を指差した。


「ほら、ソースついてるぞ」


「えっ、どこ?」


指先で頬をそっと拭ってやると、リシェルは一瞬固まる。頬を僅かに赤らめ、視線を逸らすその仕草に、胸の奥がくすぐられる。


「……もう、そういうの、急にやめなさいよ」


「やめないよ」


シオンは笑みを浮かべ、逃がす気はないとばかりに距離を詰める。


「次ついたら、唇で拭おうか?」


「ちょっ……!」


リシェルは言葉を失い、必死に串肉を見つめてごまかそうとする。その小さな指先が串を握りしめる力に、少しだけ緊張が混じっているのが伝わってくる。


「――今回は、俺の勝ちだな」


「……べ、別に負けてないし」


唇を尖らせて抗う彼女の顔を見て、シオンは密かに笑みを噛み殺す。

そして、リシェルの瞳がゆっくりシオンの口元へと向く。


「ん? どうした?」


「ソース……ついてる」


指先をそっと伸ばしてシオンの唇に触れようとする。

だが、シオンはその手を軽くかわし、逆に彼女の指を握る。


「おっと、悪いな。自分で拭ける。唇なら任せるけど?」


わずかに頬を染めて視線を逸らすリシェル。その頬の赤みと、ふと落ちる視線に心が躍る。


「はは、俺の勝ち♪」


「うるさい……」


負けを認めたくない彼女は、串肉を一口かじってごまかす。

その横顔を見つめながら、シオンは胸の奥で小さく笑う。

少しだけ意地悪をしても、彼女の微かな動揺や照れ顔に、どうしようもなく惹かれる自分がいた。


肉を食べ終え、二人は人混みの流れに乗って次の通りへ足を向けた。

色鮮やかな飴細工の屋台が見えてきて、子どもたちが目を輝かせながら列を作っている。


「わぁ……見て、あれすごい」


リシェルが飴細工職人の手元に目を奪われている間に、シオンはこっそり二つ頼んだ。

一つは彼女のイメージで鳥の形を。


「はい、これ、こっちがリシェル」


「……鳥? なんで?」


「普段からちょこちょこ落ち着きなく歩くからな。鳥みたいだと思って」


「はぁ!? そんな理由で……!」


口を尖らせながらも、飴を受け取るリシェル。


「冗談だ。鳥ってさ、風を切るたびに羽根が光を受けて揺れるように輝いて、翼は柔らかでありながら芯の強さを秘めている。ひとたび羽ばたけば、誰も追いつけないほど軽やかに、優雅に空を舞う。しなやかさと気高さを併せ持つ姿はとても美しいだろ? なんか、お前にピッタリだなって思った」


リシェルは一瞬、視線を逸らした。

耳の先がほんのり赤く染まっている。


「……な、何よ。急に詩人みたいになって…」


「はは、確かにな。まっ、照れるなって」


「うるさい! ……ほら、あんたも早く食べなさい」


リシェルは鳥の飴をじっと見つめ、そっと口元に運ぶ。――が、寸前で止まった。


「……」


「どうした? 自分と重ねたのか?」


「ち、違うわよ! ……形が崩れるの、なんかもったいないだけよ」


「へぇー」


「だから違うって言ってるでしょ!」


そう言いながらも、彼女は一口かじるまでに妙に時間がかかった。


その直後、何かを思い出したように顔を上げる。

「――あ、そうだ!」


リシェルはシオンの手をつかむと、屋台の間を小走りで抜け、通りの先を指さした。


「ねぇ! あの広場、夜になると舞があるっていってたわ!」


目を輝かせながら、振り返る。


「舞?」


「そう! それが終わったら花火も上がるの! しかも、街の中ならどこでも見えるくらい大きいんだって!」


両手を広げ、夜空を描くような仕草までして、子どもみたいに笑う。


「だから絶対、いい場所で見たいの! ちょっとでも遅れたら、もう埋まっちゃうかもしれないじゃない?」


「じゃあ、その時間までにギルドの仕事を片付けるか」


「あ……そんな、無理しなくていいわよ……」


「いや、お前がそこまで素直に見たいって言なら間に合わせるさ」


「――っ、な、なによ急に……ずるいじゃない!」

耳まで真っ赤にしながら視線を泳がせ、手元の袋をぎゅっと握りしめる。


その直後、通りのざわめきが一段と賑やかになり、人波が押し寄せてくる。


「っと……人が増えてきたな」


 すれ違いざま、誰かが軽くリシェルの肩をかすめる。


「平気か?」


「うん、大丈夫」


 短く答えた後、リシェルは少し息を整えるように視線を前に戻した。

 騒がしくしてぶつかっても迷惑になると思ったのか、歩調を落としてシオンの半歩うしろをついてくる。

 笑みはまだ浮かべているが、声の調子はわずかに落ち着いていた。


祭りをリシェルと楽しみながらも仕事は忘れない。警戒は解かずに喧噪の中、二人は並んで歩いていた。

 シオンは視線を絶えず巡らせ、通りに潜む危険を探っている。人混みの中では、敵も味方も見分けにくい。彼は油断していなかった――少なくとも、そのつもりだった。


 一方、リシェルの胸奥には、唐突に響く命令の声が落ちていた。

 それは彼女の意思など容易く押し流し、隷属紋を熱く脈打たせる。命令を拒む選択肢は存在しない。

 その瞬間、彼女の瞳の奥から光がすっと薄れた。


 足取りを変えるのは一瞬だった。屋台の呼び込み、酒瓶のぶつかる音、子供の笑い声――それらに紛れるように、彼女は人波へと身を滑り込ませる。

 黒いジャケットの背中はすぐそこにあったが、その距離はじわじわと広がっていく。


 次の瞬間、褐色の肌も金の髪も、まるで空気に溶けたかのように掻き消えた。

 魔力による気配隠蔽――視覚も感覚も欺くその術が、彼女を完全に覆い隠す。

元一流冒険者、蒼刃と言う二つ名持ちの英雄。卓越した魔法と扱える種類の多さ。そこに達人レベルの剣技。相性差はあれどシオンと同格の冒険者だった。そして、この手の事象には彼女に軍配が上がる。戦闘や殺し合いとなれば別だが身を隠すためだけの本気の気配隠蔽はシオンには見破れなかった。


 シオンはまだ気づかない。

 隣の温もりが消えたことに、今は。

 その理由が命令による強制だとも、彼女が別の通りへ向かっているとも、まだ――。


 だが、間もなく彼は知ることになる。


祭りの熱気と灯りが、通りをぎゅうぎゅうに詰めていた。

 シオンは人波をかき分けていたが、ふと横を見やる――いない。


 一瞬、見落としただけだと自分に言い聞かせ、視線を左右に走らせる。だが褐色の肌も淡い金の髪も、どこにもない。


 胸の奥で何かが嫌な音を立てた。

 腰の“魔導感知器”が、低く不吉な振動を刻み始める。

 祭りの管理局に登録されていない、強力な魔導具の発動反応――


 ――やられた。違和感はあった。あの人込みの中で肩が触れた瞬間のリシェルに…油断していたわけじゃないがあの瞬間に何ができると侮っていた…俺のミスだ…彼女を危険にさらした…守ると言っていたのに…


 目の奥が灼けるように熱くなる。


 ……俺の一番大切なものを、よくも。


 瞬間、全身に限界を超える強化魔法を叩き込む。

 筋肉が悲鳴を上げ、骨が軋む音が耳の奥で響く。

 だが躊躇はなかった。


 地面を蹴った瞬間、石畳が爆ぜ、破片と衝撃波が四方に散った。

 爆音に群衆が一斉に振り返り悲鳴が上がる。


 シオンの姿はすでに宙にあった。


 民家の屋根に着地――着地衝撃で膝が悲鳴を上げる。

 それでも構わず、次の屋根へと飛び移る。

 検知した場所まで距離はある。呼吸が荒くなる、しかし、血の味が喉に広がっても、速度は緩まない。


 祭りの喧噪を眼下に、風を裂く勢いで駆け抜けた。

 遅れれば、二度と間に合わないそんな気がした。


 だから、彼女を取り戻すまでは、体が壊れても止まらない――。


〜???Side〜


薄暗い倉庫の奥、油と埃の匂いがこもった空気を、魔力のざわめきが満たしていた。

 ゆっくりと歩み入ってくるのは、一人の女。


 金糸のような髪が灯りを受け、淡く光を返す。

 だが、その瞳は虚ろで、感情の色を欠いていた。

 鎖骨の上から胸元へ、そして衣服の下、腹の中心へ――二つの魔紋が脈動し、かすかに紅く輝いている。


 「……ほう」


 奥に座していた、やせ細った老幹部が口の端を歪めた。

 皮膚は紙のように薄く、骨ばった指先には古びた指輪が嵌まっている。

 その濁った瞳が、リシェルの体を上から下まで舐め回すように動く。


 「なんと美しい……宝石などより価値がある。

  その肌、その髪……そして、強気な女がこうして従順に歩み寄る姿――実に、たまらん」


 幹部の脇には、水晶玉を抱えた若い部下が控えている。

 水晶の奥底で、暗い波紋が幾重にも揺れた。


 「所有者の書き換え……始めるぞ」


 部下が頷き、水晶を両手で高く掲げる。魔力が低く唸りを上げ、倉庫の影が揺らめき始めた――。


 少しして轟音が、壁を震わせた。


 外からは、怒号と金属のぶつかり合う激しい音が響き渡る。

 鋭い足音、短い悲鳴、武器が弾かれる甲高い音――それらが幾重にも重なり合い、まるで戦場のようだった。


 だが幹部は口の端を吊り上げる。

 「ふん……外には十数人の戦闘員を配置してある。侵入者など、すぐに片付く」


 安堵が胸に広がった、その瞬間――。

 戦闘音が唐突に途絶えた。

 耳鳴りがするほどの、不自然な沈黙が倉庫を満たす。


 次の刹那、扉が爆ぜるように内側へ吹き飛び、細切れとなった扉の破片が舞った。

 夕陽を背に現れた黒衣の男――シオン。

 その眼光は、奥に立つリシェルだけを寸分違わず射抜いている。


 幹部の口から、思わず低い声が漏れた。

 「……英雄クラスが混じっていたか」


 シオンは獣のように突進。

 背後から駆け込んだ数人の戦闘員が引き留めようとするが、二秒と持たずに床へ沈む。

 足止めなど、もはや時間稼ぎにもならない。


 幹部の喉が冷たくなる。

 ――これほどまでとは……!


 「そやつをつかえ!そやつもたしか英雄クラスの冒険者じゃ!」

 鋭い命令に、部下が即座に反応し、水晶を抱えて儀式を中断。

 印を組み替え、紫の光がリシェルの瞳に走った。


 シオンが戦闘員を蹴り飛ばし、剣を構えたまま幹部へ殺到する。

 あと二歩――


 甲高い金属音が響く。

 刃は目前で止められていた。

 阻んでいたのはリシェルだった。


 幹部はその光景に息を吐き、かすれた声で言い捨てた。

 「……殺せ」


〜シオンSide〜


剣を受け止めた瞬間、金髪が短く揺れ、褐色の肌が灯りを反射する。

 琥珀色の瞳は感情を欠き、ただ命令だけをなぞるようにシオンを見据えていた。


 シオンは刃を弾き返し、幹部へ斬りかかる。

 しかし、腰の短刀が閃き、その全てを阻まれる。

 しなやかな体捌きと魔法が織り交ぜられ、わずかな隙すら許さない。


 強化魔法を抑えたまま、双剣を盾に変え、槍に変え――狙うはリシェルの背後、腕に水晶を抱える部下だ。

 槍を投げ放つ瞬間、短刀が閃き、槍は弾かれて壁へ突き刺さりきえた。

 すぐさま盾を投げ、水晶持ちの視界を奪おうとするが、半歩踏み込んだリシェルが刃と魔法障壁で軌道を変える。


 「……くそっ」

 吐き捨てるように言い、シオンは武器を鎖鎌に変える。

 鎌を水晶へ、鎖をリシェルの動きに絡める――だが、その全てを短刀が断ち切った。

 背後の部下は距離もとらず、水晶を掲げ続ける。


 刃と刃がぶつかるたび、金属音が耳を裂いた。

 褐色の肌が一瞬ごとに灯りを返し、冷たい琥珀の瞳がわずかも逸れない。

 "殺せ"という命令を受けた彼女の刃には、迷いのない殺意だけが宿っていた。


そこで強化魔法の効果が途切れる。一度にかけれる効果時間の限界だ。膝がわずかに重くなり、息が胸の奥で詰まる。一瞬の隙。その瞬間、銀色の軌跡が脇腹をかすめた。浅い傷――しかし、熱を帯びた血が飛び、リシェルの頬に細く散る。

 金色の髪が揺れ、琥珀の瞳は氷のように無機質。けれど頬を伝うのは、涙と血が混ざったしずく。


「……いや……やめて……」

 短く、押し殺した声。

「……いや……やめて……!」

 もう一度、必死に縫うような声で繰り返す。短刀の動きは止まらない。

「……やめて……お願い……止まって」

 三度目。刃が交差し、火花が散る。動きは鋭く、声だけが必死に自分の手を止めようとしている。


 だが――その抑制は、効かない。足が、腕が、命令通りに動いてしまう。リシェルの胸奥で、何かが諦めに変わった。


「……あなたは……私を……殺せない……」

 無表情のまま、涙を零しながら告げる。

「……そうでしょ……?」


 幹部と、後方の部下が嘲るように笑う。

「ははっ……良い見世物だ」


 リシェルの声が上ずり、叫びに変わる。

「私を殺して……! 殺してよ……! お願いだから……私を殺して……」

リシェルにすがるような声が響く。

 短刀が翻り、シオンの喉元を狙う。彼は刃を逸らし、盾を錬成して受け流す。脇腹の傷がずきりと疼くが、視線は彼女から逸らさない。


「あなたが……本気になれば……できるでしょ……?」


「私なんて……たやすく…」


「お願い…やめて…私にあなたを…殺させないで!!!」


 涙の粒が途切れず落ち、声はさらにかすれた。

「……私は……あなたを愛してるの……!」

今までまともに口にしたことがない言葉だった。


「愛してるのよ……愛してるの……!」

何度も叫び心を気持ちをシオンに伝える


「だから……だから…私にあなたを殺させないで……!」

それはまさに懇願だった。


「もう…ひとりでなんて…生きていけない…」

リシェルの哀哭が倉庫に響く


「あなたがいないと……」

リシェルが言葉を発す度に激しく剣をうち合う

「あなたじゃないとあなたがいないと私はもうダメなの!!!」

 無表情のまま、必死に叫び続ける。涙だけが感情の奔流を物語っていた。


 その言葉を聞いた瞬間、シオンはほんの僅かに口角を上げた。

「……そんなこと言われたら、尚更殺せねーし……死ねねーだろ……」

シオンも行動の限界は近い。無理な強化の影響で体中が悲鳴を上げている。


「……どうにか…してやるから…少し待ってろ…」


 次の瞬間、軸足を切り替え、みぞおちへ蹴りを叩き込む。力加減は寸分違わず、彼女を傷つけぬ程度。リシェルの身体がふわりと後ろへ飛び短刀の軌道が空を切る。


 その隙に、シオンは手首を返して小さなナイフを錬成・投擲。狙いは彼女の肩越し――水晶。


 シオンの放った刃が一直線に飛ぶ。

 空気を裂く音とともに、それはリシェルの背後にある水晶を直撃した。

 硬質な破砕音が響き、光を帯びた破片が宙に舞う。


 幹部の口元が歪む。

「……ははっ、やっと壊したか。いい見世物だった」

 しかしその笑みは、すぐに狂気じみたものに変わる。

「壊せば終わりじゃねぇんだよ……むしろ、ここからが本番だ」


 破壊された水晶から、じわりと重苦しい波動が漏れ出す。

 それは周囲の空気を歪ませ、リシェルの身体を縛るように絡みついた。

 褐色の肌に冷たい汗が滲み、陽光を思わせる金髪が微かに揺れる。

 琥珀色の瞳は一瞬曇り、鋭く研ぎ澄まされた気配が一層強まる。


「こいつは、壊された瞬間に発動する……深層催眠の罠だ」

 幹部が舌なめずりしながら言う。


 シオンの顔に焦りが生まれる。想定外の事だった。


 しかし、その時。

 リシェルの胸元で、小さな光が瞬く。

 それは祭りの前にシオンが何の前触れもなく差し出したネックレスだった。

 リシェルが見ていたからという理由で贈られた、何気ない贈り物――けれど、リシェルが胸の奥で密かに大切にしていたものだ。


 温かな輝きが、重く淀んだ空気を押しのけるように広がる。

 それはリシェルを優しく包み込み、闇色に染まっていた光をゆっくりと澄み渡らせていった。

 深く、静かに、清らかな紺碧がリシェルに瞳の色を取り戻した。


この時ばかりはシオンも神に感謝した…


まさかホントに効果があるとは思っていなかった。

シオンはリシェルの顔を見て安堵する


これで大丈夫だと…


「……清浄なる……紺碧……」

 幹部が息を呑む間に、シオンは無駄のない動きで彼らを魔法の鎖で捕縛する。

 鎖が床を打つ鈍い音が響いた時には、二人とも身動き一つできなくなっていた。


鎖が床に叩きつけられる金属音と同時に、全ての視線は彼女に集まった。

 幹部と部下を拘束したシオンは、もう一瞬たりとも敵には興味を示さない。

 ただ、息を切らせ、まだ小刻みに震えるリシェルへとまっすぐ歩み寄った。


 「……言ったろ?俺に任せろって」

 ギリギリだったとは一切思わせない風に穏やかに伝えた。声は、リシェルの緊張を一瞬で溶かす。

 言葉と同時に、シオンはためらいなく彼女を抱き寄せた。


 リシェルの褐色の頬がシオンの胸に触れた瞬間、温もりが全身に広がる。

 はじめは硬くこわばっていた彼女の肩も、じわじわと力が抜けていき、気づけば小さく震えながらも彼の背中に腕を回していた。


 「…無事でよかった…」

 震える声が、リシェルの耳元で囁かれる。

 「…あの時の言葉に…嘘はないから…」

 リシェルがシオンに告げる。シオンがそれに応えようと顔を上げた瞬間、リシェルも顔を上げ、そっと唇を重ねてきた。


 それは最初、触れるだけの短いキス。

 けれど離れるのが惜しくなり、二度、三度と繰り返すうちに、深いキスとなり時間の感覚が曖昧になっていく。

 金髪がシオンの頬をかすめ、琥珀色の瞳が涙で濡れていた。


 「……私は……あなたを愛してる」

 かすれた声で抱きしめ必死に、何度も。

 「愛してる……愛してる……」

 その言葉はまるで祈りのようで、リシェルの細い指がシオンの服をぎゅっと握りしめる。

 離したくない、失いたくない――そんな想いが痛いほど伝わってくる。


 シオンはその肩を優しく包み、微笑を浮かべた。



恨まれるはずだった。覚悟もしていた。淡く期待もあった…ずっと揺れ惑っていた。彼女のこの感情が隷属紋によって植え付けられたものなのかもしれないと不安にもなる。だけど、これ以上自分を誤魔化すのは無理だった。だから…


「俺もリシェルを愛してる。」 


正直に伝えた……


額を寄せ合う二人の間には、戦場の冷気も血の匂いも、もう入り込めない。

 ただ鼓動と鼓動が寄り添い、沈黙すら甘く満たされていく。


 その静かな時間が、まるで永遠のように長く感じられた。


「……わしら、なに見せられとるんじゃ〜……」

 床に縛られた幹部が、低くぼやいた。

 その声に、シオンとリシェルは一瞬にして動きを止め、ぱっと顔を離す。


 「……っ」


 「……い、今のは、その……」

 互いに視線を逸らし、ほんのり耳まで赤くなる。

 気まずい空気を振り払うように、シオンがわざと咳払いした。


 「……とっととこいつら、ギルドに届けるぞ」


 「そ、そうね」


 二人が動き出そうとしたその時だった。

 シオンの表情が一瞬、強張る。


 「っ……」


 「どうしたの?」


 「……いや、少し……」

 腹部に鋭い痛み。戦いの最中に受けた傷――しかも、それはリシェルが催眠状態で彼を攻撃したときのものだ。


 その事実に気づいた瞬間、リシェルの顔色が変わった。

 「……私が……」

 震える声のまま、彼女はシオンの服をそっと捲り、掌を腹部にかざす。


 淡い光がじわじわと傷口を包み、熱を帯びた痛みが引き、魔法の力で治していく。


 「……ごめんなさい……私……」


 「おい、そんな顔すんな。もう治っただろ。お前が今治してくれただろ?」


 「……でも……」

 抱き寄せようとする仕草に、またもや空気が甘く――


 「もうええからさっさと連れて行ってくれんかぁ〜。 甘さに吐きそうなんじゃ〜。」

 幹部じぃさんの言葉がきれいに割り込んだ。


 シオンとリシェルは一瞬ぽかんとし、それから苦笑し合う。

 「……ほら、行くぞ」

 「……ええ」


            ※


  捕らえた幹部二人を連行し、ギルドの扉を押し開ける。

 その瞬間、奥から低く響く声が飛んできた。


「おう、シオン! やったのか?!」


「ああ、任務達成だ」

 シオンが肩を竦めると、声の主――ギルドマスターのバルドが豪快に笑った。


「ははは! さすがだな。……リシェルもよくやってくれた」

 リシェルは少し戸惑いながらも、静かに礼を返す。


「ふん、こいつらは牢に放り込んでおく。報酬はこれだ。おまえらは休め。

 ……詳しい話はあとで聞くから明日にでも来てくれ。」


「わかった」


 その合間に、捕縛された老人がぼやく。

「もうええからさっさと牢に入れてくれんか……馬鹿にはかてん……」

 バルドが鼻で笑い、シオンは苦笑を隠せなかった。



 外に出ると、リシェルが楽しみにしていた夜の祭り。

 街の上空に、大輪の花火が音を立てて咲き誇る。

 「……最高の場所じゃないけど、なんとか間に合ったな」


 「そんなことないわ。だってあなたがここにいるもの。私にとっての最高の場所はここだってわかったから」


 リシェルが今まで見せたことのない飛び抜けて美しい笑顔を見せる。シオンが思わず見惚れて何も言葉が出ないほどに…。


 人混みの端、少し暗がりになった場所で、二人は肩を並べて空を見上げる。

 花火の光が、リシェルの金髪と琥珀色の瞳を照らし出す。

 「……シオン」


 「ん?」


 「改めて……本当にありがとう。ねぇ、このネックレス知ってたの?」


 「まぁな。今回の事を想定してた訳じゃないけどな。気休め程度にはなるかと思って。」


 「そうなんだ。ありがとね。救ってくれて」


 「ああ。」


 「じゃあ……お礼の続き、してもいい?」


 「……今度はあのじぃさんいないからな」


 花火の轟音の下、そっと唇が重なった。

 夜空に咲く光の花が、二人の影を優しく包み込む。


挿絵(By みてみん)


花火のあとに〜リシェルSide〜


 夜空を裂く最後の花火が、音もなく色の欠片を散らして消えた。

 賑やかだった広場は、名残惜しそうな人々の声と、屋台を片付ける音だけが残っている。

私たち2人は賑わいを見せていた人達がまばらになるまで肩を寄せ合い夜の街を眺めて帰路についた。


 私は……ようやく、自分が何を言ったのかを思い出していた。

 さっきまでの私は、たぶん熱に浮かされていたのだ。祭りの空気に、再会の安堵に、そしてまた一緒に居れることに。


 「……あなたを、愛してる」


 胸の奥で、自分の声が何度も反響する。

 嘘じゃない。ひとつも間違ってなんかない。

 でも、普段の私なら、あんなに何度も、しかも人前で口にするなんて……絶対にできなかった。


 横を歩くシオンは、まるで何事もなかったかのように平然としている。

 少しだけ前を歩く背中、その肩越しに見える横顔――怖くて、今は直視できなかった。

 もし目が合えば、あの瞬間の自分を思い出してしまい、顔が熱くなるのがわかってしまうから。


 (……こんなに誰かを想ったのは、初めてだ)


 胸に渦巻く感情は、嬉しさと恥ずかしさ、それからほんの少しの怖さを混ぜ合わせたものだった。

 自分の中にこんなにも強い感情があったなんて知らなかった。

 ただ側にいてくれるだけで、こんなにも心が満たされるなん思っても見なかった…。


石畳を踏みしめる足音が、ふたりだけの世界に響く。

 夏の夜風が頬を撫で、熱くなった顔を冷やしてくれる。

 それでも、シオンの手の温もりだけは、しっかりと私の掌に残っていた。


 ……そして、気づく。


 また、聞きたい――彼の「愛してる」を。

 今まで何度も耳にしてきたはずの言葉なのに、あの事件の後からはなぜか違って響く。

 耳から心へ、そしてもっと深く、私の奥底まで届くような感覚。照れるだけじゃ済ませられない形容しがたい感情…。

 その変化は、きっと彼のせいじゃない。全部、私の中で起きたことだ。


 でも、今の私には、それを乞う事はできない。

 いつもの意地っ張りで強がりな私が戻ってきてしまっている。

 それでも、心の奥では――ずっと、その言葉を待っていた。


そんな時、ふいにシオンが立ち止まった。

 振り向いた彼が、わずかに照れたような笑みを浮かべて口を開く。


 「……リシェル、もう一度ちゃんと言っておく。俺はお前を愛してる。非常時だからいったわけじゃない。ちゃんと今のリシェル知って感じて思ったことだから。ちゃんと伝えとこうと思った。」


 胸が震える。たった一言で、鼓動が速まる。

 続けざまに、彼が問いかけてきた。


 「……お前は?」


 (言わなきゃ――)

 愛してる、と返そうとしたその瞬間、体の奥底から稲妻のような衝撃が走った。


 ――まずい。これは隷属紋の力だ。


前回もそうだ。認められたいと願った時に彼が私を認めてくれた。今回も愛してると言う言葉を聞きたいと願っていたから発動したんだ。

 たぶん、鍵は「望んだ時に、望んだ言葉をかけられること」

 

 この時の快楽は、普段のものとは比べ物にならない。

 幸い今は周囲に誰もいない。

 シオンだけなら……もう、いい。彼ならこんな私を見ても、きっと側にいてくれる…。

 初めてのことでもないのだから。


 明日は一日、きっと彼と爛れた時間を過ごすことになるだろう。

 この感情のままなら、それはどれだけ甘美で幸せなことか。

 このあとの自分の世話を彼にまかせる形になることにほんの少しの申し訳なさを胸に抱きながら、私は耐えることもなく――早々に意識を手放した。


 「……まじかよ? 『愛してる』もだめなのか?」


 かすかに聞こえたその呟き。

 その言葉はこれからも聞いていたいから…――明日、ちゃんとキーワードの話をしよう。

 そう思ったところで、意識はぷつりと途切れた。


気絶のあとに〜シオンSide〜


「……まじかよ? 『愛してる』もだめなのか?」


 気をやる寸前に咄嗟に支え、腕の中でぐったりとしたリシェルの様子を見てすぐに悟った。


 ――隷属紋が発動したんだ、と。


 幸い、辺りに人影はない。

 これが広場や大通りだったらと思うと、ぞっとする。

 醜態を晒すことにならなかったのは、本当に運がよかった。

 あれは……正直、見ていて胸が痛む。

 だから、今回はそうはなりそうになくて安堵した。


 一刻も早く連れ帰り、休ませないと…。

 

 華奢な体をできるだけ触れる面積が少なくなるよう抱きかかえながら家路を急いだ。

 彼女の髪からかすかに香る祭りの匂いを感じる。

 少しだけ汗と屋台の香りが混じった、それでもどこか落ち着く。彼女を助けられたのだと。


 アパートの灯りが見えてくると、ふっと息を吐いた。

 無意識に抱く腕の力が緩む。

 ――帰ってきた。


 扉を開け、暗い部屋の中に足を踏み入れる。

 そっとベッドに寝かせ靴を脱がせる。

 次に服を脱がせると湿らせたタオルで体をぬぐっていき部屋着へと着替えさせ毛布をかけた。


 胸の奥に、安堵と、わずかな名残惜しさが同居する。

 静かな寝息を立てる彼女を見下ろしながら、シオンは小さく安堵の息を吐いた。

 

 明日は忙しくなるだろう。自分としても望むところだから喜ばしいことなのだが。明日の朝、彼女が少しでもつらい思いをしなければ幸いだ。


静かな朝〜リシェルSide〜


目を覚ました瞬間、いつもと違う空気を感じた。

 ここはベレリア。商人たちの呼び声、行き交う荷馬車の車輪の音、路上で交わされる値切りの笑い声。そんな雑踏が、この街に来てから毎朝のように聞こえていたはずだ。

 けれど今朝は違う。窓の外から響いてくるのは、遠くで屋台を片付ける小さな音や、石畳を歩く足音がときおり混ざるだけ。どこか香ばしいパンの匂いと、朝の冷たい空気が部屋に満ちている。


 祭りが終わって二日目、喧騒の波が引いた街はこんなにも静かになるのかと、少し不思議な感覚に包まれた。


 ゆっくりと上体を起こし、膝を抱えてベッドの上で丸くなる。

 そして、膝の上に頬をのせたまま、隣で眠るシオンを見下ろした。

 柔らかな黒髪が、まだ朝を拒むように少し乱れて額にかかっている。まつ毛の影が頬に落ち、呼吸に合わせて胸が上下していた。

 そっと指先を伸ばし、その髪に触れる。指先をすべらせるたび、髪が静かに揺れ、私の胸の奥が温かく満たされていく。微笑みは自然とこぼれ、止めようとしても止まらなかった。


 昨日は、朝から夜まで愛し合った。

 それ自体は初めてではない。けれど昨日は、決定的に違っていた。――行為の最中に、私から「愛してる」と口にしたのは初めてだったから。

 今までだって、シオンへの愛情は確かにあった。けれど、その言葉を口にすることには妙な抵抗があった。


 今までずっと彼は妙な優しさを見せ、私が隷属紋へ逃げられるように理由を毎回用意してくれていた。私はそこに甘えてずっと隷属紋のせいにし続けていた。それもあって自身から愛を囁くの強い抵抗を感じていた。


 ――でも、シオンは受け入れ続けてくれた。

 嫌悪も、恥も、欲望も、すべて。

 拒むこともなく、私を抱きしめてくれた。

 

 昨日、ようやくはっきりと理解した。この人は私から離れない。私を否定しない。むしろ、私を丸ごと抱きとめ、そこに愛を注いでくれる。私がどんな言い訳をしても、たとえ言い訳をしなくても彼は私を愛してくれる。

心の中で安堵が広がっていた。自分をさらけ出していいんだと肯定された気がした。


 だから、私はあの瞬間、初めてためらいなく愛を口にできた。


 昨日、その言葉は色彩を持って私たちの間を行き交った。

 葛藤も、自己嫌悪もなく、ただ幸福感だけが胸いっぱいに広がっていった。

 

 膝の上から見る、彼の寝顔は、無防備で、優しくて、愛しい。

 つい、愛してると呟きたくなる衝動が喉元までこみ上げてくる。

 でも知っている。このまま言葉を漏らせば、彼はきっと目を覚まし、いつものように口元を歪めてからかってくるだろう。

 だから、今日は言わない。この時間は私だけのもの。まだ終わらせたくない。


 静かな呼吸と、柔らかな体温。

 窓から差し込む光が少しずつ強くなり、部屋の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせる。

 ベレリアで迎える初めての静かな朝。祭りのざわめきが遠くに消え、喧騒のない時間が、まるで贈り物のように私たちを包み込む。

 このぬくもりと静けさは、きっと二度と同じ形では訪れない。

 だから今は――この人といることの喜びを、心の底から抱きしめていたい。


そう思っていた…



「……今日は囁かないのか?」



 シオンの声が、静かな部屋の空気を破った。

 リシェルはびくりと肩を跳ねさせ、思わず振り返る。

「なっ……起きてたの!?」

 まだ眠っていると思っていた男は、ベッドに横になったまま薄く笑みを浮かべていた。

「さっきな。こないだは“愛してる”って小声で言ってくらたのに、今日はやけに静かだなって思って。」

「……っ……」


 以前に囁いたとき、寝ていると思っていた彼が目を開けて「俺も愛してる」と返してきたことがあった。

 その瞬間、思考は真っ白になり、胸の奥が熱くなったのを覚えている。


「リシェルの声でいつも目が覚めるから」

 悪びれもせずに告げる声は、からかいの色を隠そうともしない。ただ私の声で目を覚ましているのだとしたら、なんだかうれしい気持ちもあってとても複雑な心境になる。


「ほんっと、朝から……!」


「別に言いたくないなら言わなくてもいいけど……」


「……なによ?」


「我慢してるなら、後でまとめて言わせるけど?」


「はあ!? そんなの――」


 言い返しかけて、リシェルは頬がさらに熱くなるのを感じ、慌てて顔を背けた。


 結局こうなる――そう分かっていながら、心の奥ではそのやり取りすら心地よい。からかわれるのは悔しいはずなのに、そこにあるのは確かな安心感だった。


「もういい!」


 ベッドから降りた私は朝の準備をして鏡台の前に座ると、髪を軽く整える。

 背後では、シオンがふふっと笑いながら椅子に腰掛け窓の外を眺めはじめた。

 ――化粧の最中は、視線を向けない。それはいつも彼が続けてくれている習慣だった。

 毎朝のことだから、もう特別に意識はしないはずなのに。私が化粧をしてるところをあまり見られたくないと言うことをわかっているんだろう。その何気ない気遣いに気づくたび、胸の奥が温かくなる


 粉をのせ、色を差し、最後に香りの薄い香水を首筋にひと吹き。

 その音に反応したように、シオンの声が背後から届く。


「……今日は香水つけるんだな。」


「ええ。昨日は必要なかったし。」


「……そっか。そういえば昨日も、すごく綺麗だった。」


 唐突な褒め言葉に、リシェルの手がぴたりと止まる。

 頬が熱を帯び、視線が思わず鏡越しに揺れる。

(……何を思い出して言ってるのよ、この人は……!)

 心の中で鋭く突っ込みつつも、言葉にはせず、小さく咳払いして誤魔化した。


 シオンとの行為は嫌じゃない。むしろその時間は心地良い。

 でも、その時の自分をまるごと肯定されると、どうしても照れくさくなる。


 シオンはその反応を面白がるように、口元に薄く笑みを浮かべた。


「……まあ、昨日は一日中一緒だったからな。」


「……っ、だから、そういう言い方やめてってば。」

 ぱたん、と化粧道具を閉じる音が、小さな抗議のように響く。


「そんなに恥ずかしがらなくてもいいだろ。」


「……そういう問題じゃないの。」


「じゃあ、どういう問題だ?」


「……朝からそれを説明させる気?」


「説明しなくても、だいたい分かってるけどな。」

 ニヤリと笑うその顔が癪に障って、リシェルはそっぽを向いた。――まったく、こういう絡みは少しうざったい…でも、不思議と嫌悪はない…むしろ私は…こう言うやり取りこそ好きなのかもしれない…


 窓から差し込む光が、淡く部屋を満たしている。

 外では小鳥がさえずり、どこかの家からはパンを焼く香りが漂ってきた。

 一昨日の祭りの喧騒が嘘のように、ベレリアの朝は穏やかだ。


 支度を終えた二人は、玄関へ向かう。

 廊下に足音が響き、扉の向こうに広がる新しい一日が、静かに待っていた。



読んでくれてありがとうございます!

次回で最終話となります。

最終話も分割して掲載します。


その後一旦完結とさせていただき、後日談を掲載したいと思います。

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