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後日談4

式を終えたシオンとリシェルは、神竜エルメキアの力を借りてベレアスへ戻ってきていた。


本来なら式後すぐに戻る予定だったが、滞在が思いのほか長引き、妊娠中のリシェルの長距離移動に不安が出たためだ。そこでエルメキアが提案し、神龍の姿となって二人を背に乗せ、保護魔法で包み込んだ。


魔法の内側は二畳ほどの小さな空間で、そこに身を置くと揺れもなく穏やかだった。ゆったりと過ごしているうちに、気づけばベレアスへ到着していた。移動時間は半日ほどだったらしい。


その日、空に白銀の軌跡が走ったという噂は各地で確認された。


馬の管理はクリスティアナとエレナに任せ、シオンたち三人は一足先に帰還した。当初は二人から抗議の声が上がったが、ちょうどその頃、王城へクリスティアナの護衛より問い合わせが入った。『そちらにうちの姫がご厄介になっていませんか?』と。もちろん王城は大パニック。


エルシェリアとエルファリアしかクリスティアナのことを詳しく知らず、王や王妃に至ってはエルシェリアの友人としか聞かされていなかった。


クリスティアナと言えば北のラトリアの第一王女。滞在時の待遇はエルシェリアの友人。一国の王女としてもてなされていたわけでもないからさぁ大変。


そんな中でクリスティアナが友人の式に参列したかっただけのお忍びなので大事にしないでほしいとなり、渋々護衛と帰還することになった。リシェルとエルメキアに十分すぎるくるいに釘を差された上でだ。


ベレアスに戻ってから一月半。リシェルのお腹はすくすくと大きくなり、出産も間近となっていた。今ではクリスティアナ、エレナ、そしてエルメキアが同じ部屋に暮らし、各国から送られてきた娘の数はすでに三十を超えていた。


ある日、珍しくリシェルからクリスティアナとエレナに呼び出しがかかった。


茶菓子と飲み物が用意され、シオンは同席していない。むしろリシェルの希望で外に出てもらっていた。二人にとっては珍しい環境だった。もちろん、エルメキアはいつものように部屋の片隅でくつろいでいる。


「二人とも、少し聞きたいことがあってね。」


「なんでしょうか?」

クリスティアナが問い返す。


「人、すごく増えたよね?」


その一言でクリスティアナが察する。


「そうですね。わたくしが把握している限りで三十二名です。」


「はぁー、いくらなんでも多すぎない?」


「まあ、シオン様ですし。それに今回の一件で神龍様までシオン様を認められましたから…。」


「断ってるわよね?」


「はい。」


「じゃあ、なんで帰らないの?」


「それはまぁ…帰れないと言うか……」


「政治が絡むと?」


「そう…ですね。ですが!」

クリスティアナは胸を張った。

「結婚するからには妻としての責務は果たします。なので、わたくしは二番目に……」


上目遣いでリシェルを見上げる。


「んー、で。あんたは?」


リシェルは菓子を食べながら聞き流しているエレナに話を振った。


「え?私はシオン様の妹ですよ?リシェルお姉様、何を言ってるんですか?兄妹で結婚はできませんよ?」


「あっそ……」


リシェルは思わず脱力した。エレナは当初シオンの嫁入りを望んでいたはずなのに、いつの間にか「妹」として収まり安定している。


スキンシップや不思議な触れ合いを求めるが、それ以上は望まない。結婚相手というより親族のような距離感で、従順であるため邪険にもできない。害もないので、結局そのまま受け入れてしまっていた。


「わかった。妹でいいのよね?」


「はい!末永く可愛がってください。」


にっこり微笑むエレナに、リシェルは内心本気で恐怖を覚えたが、話を進めることにした。


「じゃあ、クリスティアナは二番目になりたいと?」


「えっ……これは……いいんですか?」


「条件をつけるわ。」


「!!」


「戸籍上は認める。でも最初から言っているように、共有する気はない。シオンとの婚姻という肩書が欲しいならあげる。その代わり、順列はつけない。私以外はすべて二番目。二番目になったら継承権を放棄すること。二番目だからといってシオンを政治利用しないこと。シオンが望まない限り、どの国においても力を借さない。戦争はさせないから。


それと、二番目の嫁は名を変えて、それぞれ自分の幸せを探すこと。愛した人と子をなしてもいい。ただし、必ずシオンに迷惑がかからないように。それを受け入れる国だけ、シオンの二番目の嫁を名乗ることを許す。形式的に挙式が必要なら一年後に一斉に行えばいい。どう?」


「……偽装結婚ってことですか?」


「そうね。そうでもしないと、あなたたち恋愛もできないでしょ?愛した人と一緒にいられるのって幸せなことよ?そんな大切な人生を無駄にさせるのは嫌なの。そのための話よ。嫌なら好きにすればいいわ。」


「お姉様、それでしたら取りまとめは私が行います。その代わり、私を二番目にしていただいて、他は三番目という形でも?」


「あー、そういう順列は必要ね。いいわ。ただし、二番目も三番目も差はつけない。」


「はい!分かりました。父に一度話してみます。それで許可が出るなら、わたくしが取りまとめます。……まあ、確実に進むと思ってくださいませ!」


「わかった。よろしくね、クリス。」


「はい!」


こうして後世に「歴史上最高の好色英雄」と呼ばれる存在が生まれることになる。

実際にはシオンが一途にリシェルだけを愛していたのにも関わらず、歴史の中では五十人以上もの妻を持った英雄と語られる。その真実は、近年発見されたクリスティアナの手記によってようやく明らかになった――とも、ならなかったとも言われている。


ハーレムにはならず、一途なのにハーレムという矛盾。


今日も読んでいただきありがとうございます。

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