表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/37

後日談2-1

エレナSide


ヴァンパイアロード討伐戦から5ヶ月。

私は宣言通りにやってきた。シオン様のお力になるために。

王国の職務を辞し、一人の冒険者としてベレリアへ。


本来ならば、この雪深い地に訪れるのは冬が明け春になる頃だ。けれど私は待てなかった。雪山を越え、寒さに震えながらも足を運んだ。私を慕う親衛隊を連れて。


まずはギルドでシオン様の所在を尋ねた。だが当然のことながら、個人情報は明かされない。


未来の妻ですよ?おしえてくれてもいいではないですか、まったく。


私は仕方なく街で情報を探すことにする。

とはいえ、この極寒の地で外を歩き回るのは私にはつらい。寒さは大の苦手だ。すると親衛隊のひとりが「探してまいります」と言って出ていった。その心遣いがとても嬉しく、胸が温かくなった。素直な感謝の気持ちを告げると、さらに三人も加わって外へ向かっていく。私を守る護衛とともに、近くの喫茶店でお茶をいただきながら待つことにした。


夕方になってようやく親衛隊が戻ってきた。

……はっきり言って、遅すぎる。シオン様ならばもっと早く見つけ、すぐにそのもとへと導いてくださっただろう。


それに比べて、この方々ときたら……口先ばかりで実に無能。

――だが、責めても仕方ない。済んだことは済んだこと。私は笑顔を作り、礼を言った。


どうやらシオン様は近くのアパートにお住まいらしい。しかも、あのお人形さんと一緒に暮らしていると。

もしかすると、私を迎える準備をしてくださっているのかもしれない。そう思うと胸が高鳴った。待たせてはいけないと、その足でアパートへ向かう。


扉をノックすると、中から女性の声がした。――あのお人形だろう。出迎えてくれるとは、なかなか可愛らしくて愛らしい。

やがて扉が開く。


出てきたのは、プラチナブロンドの髪に褐色の肌、琥珀色の瞳を持つ、隔絶した美を持つ人形。どれだけ美しくても、所詮は玩具。


シオン様もそれをわかっているはず。彼女を傍に置くのは、きっと事情があるのだろう。もしかしたら私の愛を試すためかもしれない――なんて素直じゃないないんだろうか。そんなとこすら愛しく思える。


最初は国のためにと思っていた。だが、彼の笑顔がしぐさが言葉がそしてその強さが、会えないうちにどんどんと昂った。だから認めよう。


彼が私を愛するように、今私は彼を愛していると。


……ところが。


扉の向こうに立つその姿を見て、私は目を疑った。

――お腹が……大きい?


あれ……? あれれれ?

 お腹……膨らんでいるような? 

え……ワンピース……? 

あなた、もっと薄着ではなかったかしら?


妊娠……? いや、隷属紋があれば妊娠は不可能なはず。


そうか、きっとお太りになったのね。

そうよね?……そうに違いない。


「……えっと、エレナさま?」


思わず「はい」と返事をしてしまった。人形に返事をするなんてはしたない。貴族の嗜みがしれてしまうわ。でも、これは仕方がないんじゃないかな?

誰だって驚けば口を滑らせるもの。


「あの……それは……?」


――本当はシオン様の居場所を尋ねるつもりだったのに、気づけば問いかけていた。


「あ、妊娠しちゃって…。5か月目になるんです」


……妊娠しちゃって?5か月!?


ヴァンパイアロードを討伐したのが、ちょうど5か月前。


は? 


え?


王都で耳にした噂が脳裏に蘇る。莫大な報奨金と爵位を捨て、一人の隷属紋を刻まれた者を救った男の話。その隷属紋を刻まれた罪人は冤罪であり、その無実を証明するため奔走し、見事に叶えた男と女ラブストーリー…。


その噂は美談となり、どこからともなく演劇が、公開されるようになった。――実際に私も見て、感動し、涙を流し素晴らしいと称えた。そして、こんな男性と一緒になりたいと…


……まさか、あの英雄こそシオン様で? そのヒロインが――このお人形?


ある意味、私の願望は叶ったが…矛先が違いませんか?リシェルさん、そこ私の位置ですよね?


あれ?あれれれれ?


まさか……まさか、本当に私は断られていたの? 愛の試練などではなく?


よもやよもや?

なんだかしらないけど熱苦しい人の顔が浮かんだ…


私は二度、シオン様に婚姻を申し出た。二度とも断られたがそのとき彼は、助けを求めるような複雑な表情を浮かべていた。だから、てっきり……。

もしあれが、ただ「困っていた」だけだったとしたら?


いや、そんなはずは――。


「大丈夫ですか?」


金髪の美女――リシェルが恐る恐る尋ねる。

隷属紋がない今彼女は人だ。無礼な振る舞いは許されない。って、そうじゃない。そうじゃなくて…

あれ?いまどんな状況???

あ、そうだ。大丈夫かと尋ねられたんだ。

大丈夫? 私は大丈夫。……いや、大丈夫って何が? 私はここに何をしに来たんだっけ?


ああ、そうだ。シオン様に会いに。全てを捨てて。伝えなければ。


「大丈夫です。あの、シオン様は……?」


「エレナ? エレナよね?」


不意に呼ばれ、振り向いた。そこにいたのは――クリスティアナ王女殿下。


は? へ? なぜ?


「……クリスティアナ王女殿下……」


「ええ、久しぶりね! ああ、わかった。あなたもお父様のご命令ね?」


「お父様……? 国王陛下ですか?」


「ええ! 私と同じようにシオン様との婚姻を命じられたのでは?」


婚姻を打診された!? 高位の継承権をもつ王女様まで!?


「……聞いておりませんが……」


「え? そうなの? ならよかったわ。私は命じられて来たけれど、シオン様に『聞いてない。それは断る』と……。あまりのことに、泣いてしまいましたの」


――王姫の婚姻を断った!? シオン様、何を……!?


「急いでお父様に文を出したら、『籠絡するまで帰ってくるな』ですって。ひどいと思いません?」


はぁ!? 何がどうなって……?


「クリスゥ〜?私の前で旦那を籠絡するとか言わないでくれるかな?」


「お姉様、私は二番目で構いませんのに。どうか無碍にしないでくださいまし。」


「シオンが断ったでしょ?」


「ならば、お姉様から口添えを……」


「嫌よ。一夫多妻なんて無理だから」


「むぅー……お姉様もその必要性をわかってらっしゃるはずでは?」


「はぁ……それが嫌で国を出たんだって。まっ、無茶さえしなければ好きにすればいいわよ。」


「正妻の貫禄ですねぇ〜」


「クリス達の立場もわかるしね。」


……ちょっと待って。


「旦那様……? 一夫多妻……? どういうことです?」


「……あー、シオンと結婚いたしまして。旦那っていうのは……シオンのことです」


真っ赤になるリシェル。


半年近く経ってるんだろ、このクソアマ!! 今さら照れて煽ってんじゃねぇぞ!!


なぜか――笑顔を作ろうとしても、口元が引きつった。

初めての感情が噴き出した瞬間でもあった。


こうして私は――すべてを捨てて来て、待っていたのは完全なる独り相撲。王女までいるこの状況。


意味がわからない、だが一つわかる。

私の自尊心は砕け落ちたと。


呆然とする私をクリスティアナ様が手を引き、隣室へと連れて行く。


そこで『はっ』意識が覚醒した


……なぜ、隣の部屋!? 一国の王女がアパートの一室に!?

もう、すべてに理解が追いつかない。


あ、シオン様とも会えなかった……


「あ、そうだ、エレナ。貴方でシオン様の第二夫人候補は26番目よ。またみんなに紹介するから仲良くしましょうね。」


は?26番目?いやちょっとまって!!


「そこは私が絶対一番目ですからぁーーーーー!!!」


と、不毛な叫びを上げた

読んでくれありがとございます。

後日談、結構続くかも…です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ