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「カイン様ー!今日も素敵ですわ!さすが私の夫ですね。凛々しいお顔が赤くなっているのも可愛いわ!」
「…シア、お願いだから、今は静かにしてくれないか。君がそんなことを言うと俺の顔が締まらないだろう?」
そう言って赤くなった顔を手で隠しながら抗議する夫、カイン様は私の愛の言葉で、とても可愛らしい反応を見せている。
あれから一年、早く結婚して私がどこにも行かないようにしたい、というカイン様たっての希望で、早急に式の準備が進められた。
相変わらず、薄い色を纏えという意味不明な周りの人に不満を漏らすと、カイン様がその色がいかに私に似合うかを力説するので、折れるしか無かった。
式当日、号泣するお父様を横目に盛大にお祝いされ、とても嬉しかった。途中でカイン様への不躾な視線があったので、見せつけるようにイチャイチャしていると、肩を落としてげんなりとして去っていったので、スッキリした。
それから騎士団の人にも挨拶をしに来たら、思ったよりも歓迎されてびっくりした。質問攻めにはされたけど全てに正直に答えていたら、カイン様の顔が真っ赤になって大変だった。騎士の人達には、私がいかにカイン様が好きか伝わったようで、お幸せにと言って貰えた。
今ではこうやって訓練の様子を見に来るついでに、差し入れを持ってきているが、何も言われない。
「ついに公認ね!」
嬉しくなってつぶやくと、隣から溜息が聞こえる。
「奥様になられたのですから、もう少し落ち着いてくださいませ。」
「いいじゃない、アンナ。」
アンナは私に全く響いていないことを理解して、諦めたような顔をした。
「本当に喋らなければ女神ですのに。」
「いいのよ!私は女神になりたい訳じゃないわ。カイン様の妻になりたかったのよ。願いが叶って最高の気分だわ。あぁ、素敵な旦那様、こっち見てくれないかしら。あの赤い瞳で見られたら、私は嬉しくて飛んでいってしまいそうだわ!」
「…奥様、それ以上はおやめ下さい。旦那様に聞こえております。」
アンナの言葉にカイン様を見ると、耳まで真っ赤にした顔で俯いていた。
「ああ、どうしましょう!?きっと怒っているわ。今すぐ隠れるべきかしら。」
ワタワタとしているとカイン様はこっち見て、低く問いかける。
「シア。こっちへおいで?」
大人しく縮こまって近づくと、カイン様は耳元に顔を近づけ小さい声で呟いた。
「俺の可愛い奥さん。帰ったら可愛がってあげるから今は大人しくしてて。愛してるよ。」
赤くなってしまったであろう顔を、手で覆いながら小さく頷くと、上から苦笑が降ってくる。その後、席に戻った私はアンナと共に大人しく観戦していた。