第三十六話 酒乱
「おーい、アカネー! 戻ったぞー!」
アゲーラさんが勢いよくギルドの扉を開けた。
「アゲーラ、おかえり! ……って、リーくん!?」
「おう、リー坊も一緒にクエスト行ったんだ! なかなかいい筋してたぞ!」
アゲーラさんが僕の背中をバンバン叩きながら、誇らしげに報告する。
「もー! リーくんはDランクなんだよ!? 何かあったら大変じゃない!」
「まぁまぁ、ええやないですか〜。若いもんは経験が大事やし」
「アカネはリーになると必死だな」
「もーーーっ!!」
みんなにからかわれているアカネさん。なんだか新鮮だな。
「じゃあ、僕は戻りますので……」
「リー坊、このあと空いてるか?」
僕が言い終わる前に、アゲーラさんがぐいっと顔を近づけてきた。
「いや、特に用事はないですけど……」
「じゃあ、決まりだな!」
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「「「かんぱ〜い!!」」」
「……かんぱい」
もう何回目の乾杯だろうか。アゲーラさんに誘われ、彼女の部屋でお酒を飲むことになった。
アゲーラさん、リンリンさん、アカネさんはデロンデロンに酔っ払っている。
レンさんは別件があるらしく、不参加だ。
「おーい、リー坊! ちゃんと飲んでるかー? ギィァハハ!」
「リーくん、もっと飲んで〜♪」
「若いんやから、ガンガン飲まんとあかんよ〜」
お酒は飲んでいるが、正直、3人のペースについていける気がしない……。
「3人とも……ちょっと酔いすぎですよ……」
「「「酔ってないでーす!!」」」
(いや、完全に酔ってます……)
「しっかし、アカネにも見せたかったなー! リー坊の活躍を!」
「ほんまにかっこよかったよ〜、惚れそうになったわ〜」
「ええー!? いいなー! 私も見たかったぁぁ!!」
さっきから同じ話を繰り返しているが、褒められるのは悪い気がしない。
そう思っていたら、突然、アカネさんが僕に馬乗りになってきた。
「ちょっ……あ、アカネさん!?」
「がんばったリーくんには、ご褒美ぃ……ん〜、ちゅる♡」
「んっ!? ちゅっ、ちゅぱっ、ちゅる……んんっ!!」
いきなりアカネさんがキスをしてきた!
「おいおい、アカネ獣だなー」
「きゃ〜♪ 激しいわ〜」
二人もまじまじと見ていて、なんだか恥ずかしい……。
「ちゅっ……んん……ちゅる、ぱっ。あ、アカネさん、みんな見てますよ……!」
「ん〜? いいよぉ……我慢できなくなっちゃった……ちゅー♡」
アカネさんは振り返ると、酔ったまま大胆に話し出した。
「リーくんはねー……すっごいんだよぉ……♡ キスでスキルをぉ……コピーできるんだぞぉ♡」
「ちょっ!? アカネさん!!?」
思わず声を上げるが、時すでに遅し。
「……どういうことだ?」
「ん???」
二人はきょとんとしていた。
もう隠しきれないので、仕方なくスキルのことを説明した。
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「なるほどな……だからキュルスネークの攻撃を防げたのか」
「すご〜い! そんなスキルがあるんやねぇ♪」
「すみません、黙っていて……」
「まぁ、しゃーないさ! 誰にでも秘密はあるもんさ、ギィァハハ!」
「うちも、気にしてへんよ〜。それより……」
「えっ!? ……んぷっ!?」
いきなりリンリンさんが隣に来て、僕にキスをしてきた。
「ちゅる……ちゅ、んりゅ、ちゅぱ……♡」
「んんっ……ちゅっ、ちゅる……!」
「きゃ〜♡ すっごいわ〜♪」
リンリンさんが舌を絡ませてくる。息が詰まるほどの熱いキスだった。
すると、今度は……
「おおー! リンリンすごいな! ……おい、リー坊、次はこっちだ!」
「えっ……んっ……!? んんっ!!?」
今度は反対側からアゲーラさんがキスをしてきた。
「ちゅぱ……じゅる……じゅん、ちゅる♡」
「ちゅっ……じゅぱ、じゅる……んんっ……!!」
激しい音を立てながら、二人にキスをされ続ける。
「アゲーラはん、交代♡ ……ちゅる、りゅじゅる♡」
「おいおい、リンリンも激しいじゃないか! ギィァハハ!」
アゲーラさんとリンリンさんに交互にキスをされると、
ーーーピカァァァァーーー!!!
身体が光った。
スキルカードを見ると……
《増筋》《必中》を取得していた。
「……本当に手に入れるんだな」
「すごいわ〜♪」
二人もまじまじとスキルカードを見つめる。
「あ、ありがとうございます。じゃあ今夜はこれで……」
そう言うと、アカネさんがニヤリと笑った。
「何を言ってるの? リーくん、これからが本番だよ♡ ちゅぱ……ちゅる……♡」
「ああ、夜はこれからだぜ、リー坊! じゅる……じゅぱ……♡」
「そうそう、まだまだ楽しみましょ〜? リーくん♡ ちゅる……じゅる……♡」
「んんっ……!?」
夜はまだまだ、終わりそうにない……。