第三十四話 お姉さんパーティ「轟雷の狩人」
サルンの討伐から数日後、僕はギルドの訓練場で汗を流していた。
「やぁああ!」
立てている複数の丸太を相手に盾を投げつける。
投げた瞬間、《気流》で軌道を読み、丸太に当てて跳ね返った盾をキャッチする──それを繰り返していた。
サルンとの戦いで、彼らが盾を投げて戦っていたのをヒントに、新しい盾の使い方を試しているのだ。
しかし──
「うーーん、なんか違うんだよな……」
この戦い方だと、盾をかわされた時に無防備になるし、何かが足りない気がする。
「おーーーう! リー坊!! 頑張ってるじゃないか!」
突然、僕の頭に大きな手が置かれた。
「あっ、アゲーラさん、こんにちは」
「うちもいるよ〜」
「やぁ、リー」
振り向くと、Aランクパーティ《轟雷の狩人》のメンバーが立っていた。
アゲーラさんは獣人族の豪快なリーダー。腰まで伸びたボサボサの茶髪に、180cm超えの筋肉質な身体。
リンリンさんはポニーテールの銀髪エルフ。スラッとしたモデル体型で、彼女も180cm超え。
レンさんは腰まである黒髪のクールな女性。170cmの大人びた雰囲気を持つ。
3人とも僕より背が高く、みんな豊かな双璧でギルドでも人気のある美人パーティだ。
「今日はお仲間さんは?」
リンリンさんが尋ねる。
「今日受注したクエストが女性限定だったので、僕はお留守番です」
「なんだ、てっきり振られたかと思ったぞーーギャハハ!」
「おい、アゲーラ、不謹慎だぞ」
「冗談さ、冗談!」
──こういう仲の良さが、このギルドのいいところだな。
「リー坊はここで何をしていたんだ?」
「実は……」
僕は、コカルテラリスとの戦いやサルンとの戦いを経て、新しい戦闘スタイルを模索していることを話した。
「なるほど、確かに珍しいスタイルだが、理にかなっているな」
「ただ、非効率どすな〜」
レンさんとリンリンさんは、少し考え込んでいる様子だった。
すると、アゲーラさんが真剣な表情で僕を見つめた。
「リー坊は、それができるようになって、何をしたいんだ?」
「僕は……みんなを守りたい!」
力強く言葉を続ける。
「タンク役も大切だけど、それだけじゃ足りないんです。アイツを──コカルテラリスを、今度こそ倒したい。このスタイルが確立できたら、アイツに勝てる気がするんです!」
「……よく言ったな、リー坊」
アゲーラさんが僕の頭をがしっと掴み、豪快にヘッドロックを決めた。
「ぐぅっ!」
──いや、柔らかい……顔が胸に埋まる……!!
「リーくん、ええ目になったね〜」
「うむ、とてもいい目をしている」
3人に褒められ、照れる僕。
すると──
「なら、気晴らしに今から行くクエストに着いてくるか!!」
「えっ!?」
「いいよな、リンリン! レン!」
「ええよ〜」
「ああ、今のリーなら問題ないだろ」
「じゃあ決定ーーギャハハ!」
──なんだか、急に決まってしまった。
ダンジョン内
「ところで今日は何をするんですか?」
何も聞かずに無理やり連れてこられたので、改めて聞いてみる。
「あーーー、言ってなかったか」
「今日はな〜」
「キュルスネークを狩る予定だ」
「キュルスネークって、Bランクのアイツですか!?」
キュルスネーク──全長10メートル以上の巨大な蛇型モンスター。
身体を一瞬で伸ばして獲物を捕らえる直線攻撃が特徴で、Bランクの冒険者でも苦戦する強敵だ。
「キュルスネークは直線上での攻撃はすごいが、側面が弱いからな……まぁなんとかなるさ、ギャハハ!」
──いや、アゲーラさん、さすがに楽観的すぎる。
「アゲーラが言ったように、側面が弱点で、今回は直線の攻撃をかわして側面から叩く作戦だ」
「あとは、どうやって側面に回り込むかどすな〜」
レンさんが作戦を説明し、リンリンさんが補足する。
このパーティは、アゲーラさんが突っ込んでいくタイプなので、レンさんとリンリンさんの冷静な判断が支えになっているのだ。
「リーゾットは、今回タンク役を頼もうかと思う」
「タンクですか?」
「あぁ、キュルスネークの直線攻撃を盾で受けてらう。その間に、我々が横から攻撃する流れでいこうかと思うけど、できるか?」
「……頑張ります!!」
──Aランクパーティに頼まれたら、やるしかない!!
「よっしゃ、リー坊が決意したところで、行くぞ!」
「「「おー!!」」」
こうして、僕の新たな挑戦が始まった。