第三十三話 媚薬と秘薬 ☆
「じゃあ、あとは頼んだよ、サーシャ。」
「はいっ! じゃあ、行きましょうか、スゥさん、サエルザさん。」
サーシャにクエストの完了申請をお願いし、僕は薬草をミナさんのもとへ届けに行った。
スゥのぬいぐるみについては、予定通りギルドの知り合いに修理を依頼した。もちろん「スゥのぬいぐるみ」とは言わず、「知人の子どものぬいぐるみ」ということにしておいた。
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「ミナさん、いますか?」
「あら、リーくん、いらっしゃい。早かったわね。」
お店に入ると、ミナさんが笑顔で出迎えてくれた。
……ん? なんだか今日は、いつもより服が薄い気がする。胸元も妙に緩くて、視線のやり場に困る……。
「こ、これ、クエストの薬草です!」
「ありがとう〜、いい薬草ばかりだわ。」
ミナさんは、1枚1枚丁寧に葉を撫でながら薬草を確認していた。
「ありがとう、リーくん。……あら、顔に傷がついてるわね。」
「え、ほんとですか?」
「はい、ポーションよ。」
「ありがとうございます。」
もらったポーションを飲もうとした瞬間、ミナさんがじっと僕を見つめた。
「ところで、リーくん。」
「ん?」
「どうしてスキルをたくさん持っているの?」
「ぶぶーーっ!!」
思わずポーションを吹き出しそうになった。
「ゲホッ、ゲホッ……ど、どうしてそれを!?」
「ごめんなさい、わたし《鑑定》のスキルを持ってるの。」
《鑑定》……。なるほど、だからいつも手を握ってきていたのか。
「前までリーくん、《譲受》しかなかったのに、今日触ったらたくさん増えてたから驚いちゃった。」
「そ、それは……。」
……仕方ない。
ミナさんに《譲受》のスキルと、キスの呪いについて説明した。
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「そ、そっか……キスで……ね。」
話を聞いたミナさんが、頬を赤らめながらモジモジし始めた。
なんだか気まずい雰囲気になってしまい、僕は話を逸らそうとした。
「そ、そういえば、この部屋暑いですね。なんだか体が火照ってきたような……。」
……ん? ポーションを飲んでから、異様に体が熱くなっている。
「そ、それは……そのポーション、滋養強壮も入ってて……。」
「ふふぇ!?」
「だって……なんか、女の子が周りにいると、そういうものなのかなって思っちゃって……。」
ミナさんが真っ赤になりながら、視線を泳がせる。
その仕草を見ていると、なぜかドキドキしてきた。
……いや、違う。これ、ポーションのせいか?
目の前で頬を染め、少し潤んだ瞳でこちらを見つめるミナさん。
緩く開いた胸元、色っぽく濡れた唇。
「え、リーくん……?」
僕はもう、我慢できなくなっていた。
「ミナさん……。」
彼女の頬にそっと手を添える。
「だ、だめだよ……り、リーくん?」
「ミナさん……我慢できない……。嫌なら、拒んでください。」
「あ、え、んん……。」
唇を重ねると、ミナさんの体がビクッと震えた。
「んんっ、ちゅる……ちゅ……んちゅ。」
「ちゅ……ちゅぱ……ちゅる……。」
貪るように口付けを繰り返す。
「ちゅる、ちゅ……り、り、リーくゅん……。」
「ちゅ……ぷはぁ……ミナさん……。」
ーー ピカァッ!! ーー
体が光り、《鑑定》のスキルが追加された。
「ほ、ほんとうに……スキルを……。」
「ええ、本当に《鑑定》でいろいろ見えますね。」
ミナさんに触れていると、彼女の情報が頭の中に流れ込んでくる。
「これで、終わ……。」
「ミナさん。」
彼女の耳元に顔を寄せ、そっと囁く。
「どうして、(発情)してるんですか?」
「ひぇっ!!??」
驚いたミナさんが、信じられないような顔でこちらを見上げる。
再び彼女の唇に触れようとすると、
「だ、だめぇ……お店の中では……。」
「じゃあ、奥ならいいんですか?」
「うぅ……いじわるぅ……。」
この日、薬屋は一日中『臨時休業』となった。