第三十一話 エロ猿たちの攻撃
「待てぇぇぇぇ!!」
鬼の形相のスゥを先頭に、僕たちはサルンを追いかけて森を駆け抜けていた。
「……せっかくナノハさんの店で買った新しいブラなのに……」
サーシャがブツブツ言いながら走っている。怒りで顔が真っ赤だ。
「ねぇ、リーゾット、あいつら燃やしてもいい?」
「ダメだサエルザ。ここで《火炎》を使うと森が大変なことになる」
密集した森の中で火を使えば、間違いなく大火事になってしまう。
頬をぷくっと膨らませて不満そうなサエルザをなだめつつ、サルンたちを追った。
やがて、少し開けた場所にたどり着いた。
しかし、サルンたちは逃げずに、こちらを木の上から伺っている。
「まずいな……誘導されたかもしれない」
僕が警戒しながらみんなに伝えると——
「そんなことはどうでもいい!!全員ぶった斬る!!」
スゥがレイピアを抜き、一気にサルンたちへと跳びかかった。
《気流》を使い、木を蹴り上げながらサルンたちに迫るスゥ。
しかし——
「きゅきゃー!」
サルンたちは驚くほど素早く、別の木へと飛び移り、スゥの攻撃を回避した。
「くそ……きゃっ!?」
突然、背後からサルンの手がスゥのお尻をわしづかみにした。
「き、貴様らぁぁぁーー!!」
怒り狂ったスゥが斬りかかるが、サルンたちは俊敏に逃げ、逆に——
「ひゃっ!? ちょ、やめろっ!!」
「きゃっ!?」
——逃げるたびに、サルンたちがスゥの胸やお尻をいやらしく触っていた。
「リーゾットさん!!」
サーシャの悲鳴に振り向くと、すでに何匹ものサルンが彼女やサエルザの体を弄っていた。
「き、気持ち悪い……!」
「やっ! きゃっ、ちょ、ダメです!」
なんてエロ猿なんだ……!!
あまりにも変態すぎる……!
そう思った瞬間——
「うわっ!?」
いきなり僕のお尻が撫で回された。
「な、なんだ!??」
驚いて振り向くと——メスのサルンが嬉しそうに僕のお尻を触っている。
「こいつら……どっちも変態かよ……!!」
触るな!!
そう思ってメスサルンを振り払おうとした瞬間——
「きゅきゃー!!」
木の上から僕の盾を持ったサルンが勢いよく突進してきた。
「おっと! 僕の盾を返せ!!」
盾を奪い返そうとするが——
「きゅきゃーきゃっ!」
別のサルンが、まるでフリスビーのように盾を投げてきた。
「うわっ!? こんな攻撃ができるなんて!?」
なんとか回避すると、別のサルンが盾を回収し、再び投げてくる。
「くっ……!」
盾を使ったサルンたちの連携攻撃に翻弄され、全く取り戻せない。
考えろ……どうすればいい!?
このままじゃマズイ——!
そう思った瞬間——
ドゴォォオオン!!!
とてつもない衝撃音が響き、一本の木が真っ二つに折れた。
「な、なんだ!??」
誰もが驚いて動きを止めた。
次の瞬間——
サルンたちの視線が、一人の少女に集中する。
そこにいたのは——
サーシャだった。
顔を伏せ、拳を握りしめ——
無言で、もう一本の木に拳を振りかぶる。
「そうですね……」
ゆっくりと顔を上げ、微笑むサーシャ。
——しかし、彼女の瞳には殺意が宿っていた。
「この木を全部倒せば、サルンたちは飛び乗れなくなりますよね?」
そう言いながら、彼女の拳がゴゴゴゴ……と唸りを上げる——。