第二十四話 天空の死闘
「リーゾットさんっ！！」
「くぅっ……！」
グウェェェェェヒィィィィィ！！
サーシャをなんとか庇った僕だったが、コカルテラリスの 鋭い前足に捕まれ、そのまま 上空へと持ち上げられていた。
「ど、どうすれば……うわぁぁぁぁ！！」
考える暇もなく、コカルテラリスは 猛スピードで回転 し、急降下・急上昇を繰り返す。
—— 獲物を振り回して気絶させてから喰らう
まさに、コカルテラリスが獲物を仕留める時の動きだ。
このままでは……まずい……！
「くっ……！ 《癒し》、《気流》！」
僕は 二つのスキルを同時に発動 した。
《癒し》で精神を落ち着け、気を確かに保つ。
《気流》で風の流れを読んで、コカルテラリスの動きを 少しでも先読みする。
——意識が遠のくのを必死に耐える。
途中で ハウルザとサエルザが助けに来てくれた。
だが、コカルテラリスのスピードに追いつくのがやっとの状態だった。
ある程度の時間が経った時、コカルテラリスと目が合った。
「……まだ起きているのか？」
そう言いたげな 鋭い眼差し。
グウェェェェェヒィィィィィ！！
気絶させられないと分かると、今度は くちばしで突きを繰り出してきた！
「っ……！」
——ガンッ！！——
僕は 盾を構え、必死に攻撃を防ぐ。
だが、奴の攻撃は 鋭く、重い。
「くっ……防戦一方……！！」
どうする…… 考えろ、考えろ……！
——その時だった。
「っ！！ しまった……！」
コカルテラリスが くちばしで盾を挟み込み、引っ張り上げた。
——ガシャアアアア！！！
盾が外された——！
「……っ！」
完全に無防備になってしまった。
…… まずい……！
他に使える武器は 腰に巻いている短剣 だけ。
「一か八か……！」
僕は 覚悟を決めた。
コカルテラリスは 勝利を確信したかのように 大きく口を開く。
—— そこで、僕は逆に飛び込んだ。
「……っ！！？」
奴の 口の閉じるタイミングを《気流》で読む。
そして—— 狙いを定める！
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！」
僕は 両手で短剣を振り下ろし、コカルテラリスの 舌へ突き刺した！！
——グゲェェェェェッッ！！
舌を貫かれたコカルテラリスは 悶え苦しみ、反射的に僕を放り投げた！
「お、おおおおおおおおおおお！！！」
—— やばい！！
かなりの高さから 地面へ一直線に落下する！
「……あ、これ考えてなかったーー！！！」
絶望したその瞬間——
「リーゾット、大丈夫？」
「ふぅ……なんとか間に合ったわね」
サエルザとハウルザが上空で僕を抱き止め、落下を防いでくれた。
「は、助かった……」
二人がゆっくりと地面へ降ろしてくれると、すぐにサーシャとスゥが駆け寄ってきた。
「リーゾットさん、大丈夫ですか！？」
「リーゾット、すごいじゃないか！」
涙目のサーシャと、笑顔のスゥ。
「ふぅ……な、なんとか助かったけど……あいつは……？」
遠くに目を向けると、コカルテラリスは 舌に突き刺さった短剣を外せずにもがいていた。
しばらくすると、こちらをギロリと睨みつけ——
南部の空へと飛び去っていった。
……なんとか 撃退 できたか。
みんなが 勝利を喜び、安堵している中——
僕は 一人で落ちていた盾を拾い、じっと見つめた。
——このままの戦い方じゃ、みんなを守れない。
僕は強く、そう思った。
