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第十九話 呪いと誓い ☆



「……まさか、魔王が本当にいるなんて……」


スゥが呆然と呟く横で——


「ぐずっ……ぐすん……うぇぇぇぇぇん!!」


サーシャが大粒の涙をこぼしていた。


「リーゾットしゃんが……わだじをにがしてぐれでいるあいだに……そんな呪いにかがっでるなんで……ひっく……」


「さ、サーシャ、大丈夫だよ。おかげでみんなとパーティを組めたんだし」


「……っ!!」


サーシャは涙を拭き、何かを決心したように——


「私! 毎日リーゾットさんとキスします!!」


「はぁぁぁ!?」


戸惑う僕をよそに、サーシャは満面の笑みで顔を寄せ——


「んちゅ……はむ……んふぅ」


「んぅ……ちゅる……ちゃ……」


柔らかい唇が重なり、甘い吐息が絡み合う。


「な、ななな、なにやってんのよ!!?」


「い、いや、さすがに毎日はしなくても……」


「でも、データは常に最新のものにアップデートしておかないとですよ♪」


「なんかそれ、聞いたことあるような……」


……あっ。


「……アカネさんと同じこと言ってる……」


しまった、口が滑った。


「え?」


サーシャの表情が ピタリと固まる。


「アカネさん……? どういうことですか、リーゾットさん?」


「あ、いや、その、ちょっと……」


「……まさか、もうアカネさんと……?」


スゥが じとーっとした目 で睨んでくる。


「あ、いや、その……」


(あっこれ詰んだかもしれない)


「……まあ、いいです」


「……え?」


意外にも、サーシャは笑顔を崩さなかった。


「リーゾットさんがアカネさんに秘密にしてたってことは、それだけ大切な人ってことですよね?」


「そ、そうだけど……」


「リーゾットさんの大切な人は、私にとっても大切な人です♪」


サーシャは 聖母のような笑顔 で微笑んだ。


「だから、スゥさんも毎日キスしましょうね♪」


「はぁぁぁ!? なんでそうなるのよ!!!」


(この子、やっぱり天然すぎる……!!)



「だって、パーティは家族ですから!」


「その理屈だと、父親と毎日キスしてるってことになるのよ!!」


「えっ、してますけど……?」


「ええええええええ!!?」


(この親子、ヤバすぎる……!!)


僕が思考停止していると——


「……わ、わかったわよ!! 一度だけだからね!!」


顔を真っ赤に染めながら、スゥが顔を寄せる。


「……あんた、目を閉じなさい」


スゥが 真っ赤な顔 で睨みつけながらも、手を震わせながら僕の肩をつかんだ。


「え、えっ、スゥ?」


「いいから! ほら、さっさと!!」


目を閉じろと言われても、こんな状況で素直に閉じられるわけが——


「……っ!」


——ちゅっ。


一瞬、唇にやわらかい感触が触れた。


だが、それだけじゃ終わらなかった。


「……ふぁ……ん……っ」


スゥの 小さく震える吐息 が、耳元をくすぐる。


唇を離したかと思えば、舌がそっと絡んできた。


「……んっ……ちゅ……ぅ……」


スゥの舌は、ぎこちなくも 強引に 絡みついてくる。

まるで 自分がリードしないといけない とでも思っているような、不器用で、それでいて一生懸命な動きだった。


「……っ、ん……っ……はぁ……」


少し離れて、スゥが荒い息をついた。


「はぁ……なんか……変な感じ……」


指で自分の唇をなぞりながら、スゥの瞳は潤んでいた。


「お、お前……意外と大胆じゃ——」


「う、うるさい! 黙りなさい!!!」


バシッ!!!


頬を赤く染めたスゥが、僕の肩を思い切り突き飛ばした。


(え、ちょっと待っ——)


「きゃっ」


そのまま 後ろに倒れそうになったスゥを反射的に抱きとめようとして——


「んっ……!?」


もう一度、唇が重なった。


二度目のキス。


(……やばい、これ、止まらないかも——)


「ふぁ……っ、はぁん......ちゅる……」


スゥの 震える吐息 を感じながら、今度は僕のほうが 彼女の唇を吸った。


「ん……っ、ちゅ……っ、……」


スゥの唇は柔らかく、舌は じわじわと甘く絡みついてくる。

自然と、いつもより深く舌が動いてしまう。


「んちゅっ……こりゃ、動くなぁ……くちゅ……」


スゥの肩を抱きながら、僕の舌は 彼女の口内を探るように這った。


「ん……ふぅ……」


スゥの か細い声 が、夜の静寂に響く。


(やばい、これ……止まらな——)


「……えいっ! 私も混ぜてくださいっ♪ チュパッ♡」


「んぶっ!?」


サーシャが 突然、二人の間に飛び込んできた。


(お、おまえ……タイミングよ……!!)


サーシャの唇が重なる。


「んっ、ちゅ……んちゅ……っ、んふぅ……」


サーシャは 遠慮なく、舌を絡めてくる。


さっきまでの スゥのぎこちないキス とは違い、サーシャのキスは 甘く蕩けるような深い口づけだった。


「ぷはぁっ……リーゾットさん、これから毎日よろしくお願いしますね♪」


「さ、サーシャ……お前、ほんとに……」


「スゥさんもですよ?」


「……っ!!」


スゥが 完全に顔を真っ赤 にしながら、悔しそうに唇を噛んでいた。


夜の温泉には、静かなせせらぎの音と、三人の荒い息遣いだけが響いていた——。


夜はまだまだ続いていくのだった。



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