第十八話 秘湯とハプニング
僕たちはワーウルフ討伐後、近くの宿に泊まることにした。
夜遅くなっていたのと、クタクタでギルドまで戻る元気がなかったからだ。
宿の主人に事情を話すと、彼は目を輝かせてこう言った。
「おお! ワーウルフを討伐してくれたのかぁ! あいつがいたせいで秘湯に入れなかったから困っとったんじゃ」
「秘湯?」
「そうそう、森の奥に温泉があるんだが、そこの風呂は最高でな。昼に行くと青空の下で絶景が楽しめるし、夜は静かで落ち着くんじゃよ」
主人は秘湯の良さを延々と語っていたが、疲れすぎてあまり頭に入ってこなかった。
部屋に入ると同時にベッドに倒れ込み、そのまま眠ってしまった——。
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「……ん」
目が覚めると、夜になっていた。
静寂に包まれた宿の中、窓を開けると、涼しい夜風が頬を撫でた。
もう一眠りしようかと思ったが、ふと秘湯のことを思い出した。
「この時間なら誰もいないだろうし……」
そう思い、軽く羽織を持って宿を出た。
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「おぉ……」
森を抜けた先、そこには幻想的な温泉が広がっていた。
湯気が立ち込め、静かに水面が揺れている。
早速服を脱いで湯に浸かると、心地よい温かさが全身を包み込んだ。
疲れがじんわりと溶けていくようで、思わず息を漏らす。
「ふぅ……最高……」
そんな至福のひととき——
——ちゃぷん
湯の向こうから、何かが動く音がした。
「……?」
反射的に目を向けると、湯気の奥に 人影 があった。
「……えっ?」
「……えっ?」
「……えっ?」
目が合った瞬間、お互いが固まる。
そこには サーシャとスゥ がいた。
もちろん、一糸まとわぬ姿で——
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「な、な、なななな何してるのよあんたぁぁぁ!!!」
顔を真っ赤にしたスゥが、大声で叫ぶ。
いや、こっちのセリフだ……!
サーシャは柔らかい曲線を描く体つきに、豊かな双丘をたわわに実らせている。
一方のスゥは鍛えられたしなやかなボディに、サーシャに劣らぬ見事な双璧を携えていた——。
思わず視線が泳いでしまう。
「〜〜〜〜っ!!! 見るなぁぁぁ!!!」
スゥが湯の中から拳を振り上げる。
——その瞬間。
「きゃっ!」
足を滑らせたスゥが、バランスを崩して前のめりに倒れかかった。
「わっ、危ない!」
咄嗟に手を伸ばし、彼女の腕を引いた。
——しかし、僕の方が支えきれずに、後ろに倒れ込む。
「——んっ……」
ちゅっ
……静寂。
唇が触れた。
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「…………は?」
目を見開いたスゥが、状況を理解すると、顔を真っ赤に染める。
「……な、ななな、なにしてんのよぉぉぉ!!!」
「いや、今のは事故——」
ピカァァァァァ——!!!
「……え?」
突然、僕の体が光り始めた。
「ちょ、何!? 何が起こってるのよ!!?」
「……ま、まさか……」
ギルドカードを確認すると、新たなスキルが追加されていた。
《譲受》《癒し》《記憶》《気流》
「うわぁぁぁぁ!! なんであんたが私のスキルを持ってんのよ!!?」
「そ、それは……」
もう隠しても仕方がない。
僕はサーシャとスゥに スキルのこと、魔王のこと、そして『呪い』のこと をすべて話した。