表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/51

第一話 外れスキル

「リーゾット、ちんたらしてないでさっさと来い!」


薄暗いダンジョンに響く怒鳴り声。パーティ《瞬速に集いし者》のリーダー、ダンチが苛立った様子で叫んでいた。


「ダンチさん、すみません!」


僕__リーゾットは、大きなリュックを背負って走っていた。その中には、パーティメンバー全員の道具が詰め込まれている。息を切らしながら駆け寄ると、ダンチが腕を突き出した。傷口から毒がまわったのか、腕が青く変色している。


「腕を噛まれて毒が出た。さっさとスキルを使え」


「わかりました……スキル発動、《譲受》」


そう唱えた瞬間、ダンチの腕は元の肌色に戻っていった。だが、代わりに僕の腕が青く染まり、ズキズキと痛みが走る。


「ぐっ……ぅ……」


歯を食いしばる僕をよそに、さらに怒号が飛んできた。


「おい、足を切られた! さっさと変われ!」


「走って疲れたから、移しなさいよ!」


ダンチの後ろから、パーティメンバーのダイとニシリナが叫ぶ。二人とも僕を気遣う素振りすら見せない。


「はぁ……はぁ……わかりました……《譲受》」


唱えると、ダイの足の傷は消え、ニシリナの疲れも抜けていく。


「チッ、遅えんだよ」


「ほんと、使えないわね」


感謝されるどころか、舌打ちと罵倒を浴びせられる。それでも僕は、息を切らしながら自分に言い聞かせた。


(……大丈夫、いつものことだ)


そう思うが、身体は正直だった。痛む腕、ズキズキする足の傷、そしてどっと押し寄せる疲労。


「リーゾットさん、大丈夫ですか!? 《癒し》!」


そこへ、唯一の救いが現れた。サーシャだ。彼女はパーティの中で、唯一僕を心配してくれる存在だった。


サーシャのスキル、《癒やし》が発動すると、傷がふさがり、心が少し安らぐ。


「リーゾットさん、ごめんなさい……私がもっと強ければ、毒も治せるのに……」


「大丈夫だよ。毒は時間が経てば治るから」


彼女の悲しげな表情に、僕は優しく微笑んだ。この世界の毒や麻痺は、基本的に時間が経てば消える。だから、あと少し我慢すればいい。


そう思っていると、ダンチたちがダンジョンのモンスターを倒し終えていた。


「いやー、今日は大物が釣れたな! こいつは高く売れるぞ!」


ダンチが上機嫌に叫ぶ。


「がはは、またうまい酒が飲めるぜ!」


「ねぇダンチ〜、私、欲しい宝石があるんだけど〜」


ダイとニシリナも、戦利品に目を輝かせている。


__いつもの光景。


強いスキルを持った冒険者が、ダンジョンで戦い、財宝を手に入れる。冒険者としては、それが当たり前のことだ。


もし、僕のスキルが"外れ"じゃなかったら……。


あんな風に、みんなと一緒に笑えたのだろうか。


腕の毒の痛みが引いてきたのを感じながら、僕は自分のスキルを呪った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ