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第十三話 再開と新たな決意

魔王に呪いをかけられてから、一週間が経った。


僕は相変わらず、ソロで薬草採取やドブ掃除など、以前と変わらないクエストをこなしている。唯一違うのは、《癒し》のスキルを使えるようになったことだ。これにより、体力を自己回復しながら作業ができるため、効率は格段に上がった。


このスキルに関しては、アビさんから「お前のスキルは特殊すぎる。悪用する輩が出るかもしれん。信頼できる者以外には絶対に話すな」と口止めされている。そのため、ギルドではこれまで通り、ただの"役立たずの雑用係"として振る舞っていた。


ちなみに、ダンチさんたちがダンジョンで死んだときはギルド中が騒然となったが、一週間も経てばその話題はすっかり忘れ去られていた。ダンジョンでの死は、それほど珍しいことではないのだろう。


一方で、サーシャの姿はギルドで一度も見ていない。あの出来事が、彼女の心にどれほどの影響を与えたのかは想像に難くない。もしかしたら、このまま冒険者を辞めてしまうのかもしれない……。


そんなことを考えながら、今日も採取した薬草をギルドへと持ち込む。



---


「リーくん、お疲れ様〜!」


カウンターの向こうからアカネさんが手を振ってくれた。


「アカネさん、いつもの薬草です」


「はいっ、確かに受け取りました。こちらが本日の報酬です♪」


いつものやり取りを済ませたあと、アカネさんが小声でそっと囁いた。


「じゃあ、いつもの場所で待っててね♡」



---


ーーギルド裏の路地ーー


「んちゅ……はむ……んふぅ……♡」


「んぅ……ちゅる…あ、アカネさん……」


ここはギルドの裏路地、人目につかない隠れた場所。


アカネさんが"報酬とは別のご褒美"をくれるのが、すっかり日課になってしまっていた。


呪いのために三日に一度キスをすればいいはずなのに、アカネさんとは毎日こうして唇を重ねている。


彼女曰く「データは常に最新のものにアップデートしておかないとね♪」らしい。


「んふ……ちゅる……ぷはっ♡ はいっ、今日の報酬しゅ〜りょ〜♪」


「あ、ありがとうございます……」


「いえいえ♪ また明日もがんばってね」


そう言って、アカネさんはいつも通り満足げに微笑みながらギルドへ戻っていった。


さすがに、これを"普通"だとは思わないが……。


でも、こうして環境が変わっていくことを実感しながら、僕もそろそろ新しいクエストに挑戦しないとな……と考えながら帰路についた。



---


ーー翌日ーー


いつものように、ギルドの掲示板を眺めているとーー


「り、リーゾットさん!」


突然、背後から呼ばれた。振り向くと、そこに立っていたのはーー


「サーシャ!」


「お、お久しぶりです……」


彼女は頬を赤らめながら、少し恥ずかしそうに僕へと歩み寄ってきた。


「よかった、また戻ってきてくれたんだね。それに、その防具……新しくしたの?」

サーシャの服装は、以前とはすっかり変わっていた。

胸元には銀色の胸当てが装着され、中央には小さな青い宝石が輝いている。淡いピンクのブラウスは袖口に控えめなフリルがあしらわれ、動きやすさを重視したデザインだ。

スカートは濃紺のロングスカートで、裾には魔法陣のような模様が施されている。手には新調した長杖を握っており、先端の魔法玉が淡く光を放っていた。

「はいっ、心機一転、新しくしてみました!」


「すごく似合ってるよ」


「は、はい、ありがとうございます……」

素直に感想を伝えると、サーシャは顔をさらに赤く染め、目を逸らした。

「でも、本当に大丈夫なの? あんなことがあったから、もう冒険者を辞めてしまうのかと思ってたよ」

「あの時は……怖くて、本当に辞めようとも思いました。でも……」

彼女はギュッと杖を握りしめながら、強く前を見つめた。

「私、気づいたんです。困っている人に手を差し伸べる……お父さんやお母さん、そしてリーゾットさんみたいな人になりたくて、冒険者になったんだって。だから……私はもう逃げません!」

サーシャの瞳は、まるでアビさんのように力強く輝いていた。

「そっか……うん、よかった。またよろしくね」

「はいっ! よろしくお願いします!」

サーシャが晴れやかな笑顔で頷いたその瞬間ーー

「どうしてこのクエスト受けれないのよーーーーーー!!」

ギルドの受付から、建物全体に響き渡るような大声が飛んできた。

えっ……何事!?  


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