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第九話 お姉さんのお誘い①

「はーーーい、ストップ、ストップ!」


パンパンと アカネさんが手を叩く。


「アビゲイルさん、少し落ち着きましょう? きっと 何か事情 があったんですよ」


アカネさんが 穏やかに微笑みながら、アビさんの肩に手を置いた。


「ぐぅぅぅ……まあ、サーシャの相手がリーゾットなら問題ないが…… 問題ないのだが……」


アビさんは 聞こえないほどの小声 で何かを ブツブツ 呟いていた。


「アビゲイルさん、気晴らしに 訓練所 で暴れたらどうです? スッキリしますよ」


「そうだな! ちょっと行ってくる!」


そう言って、アビさんは 勢いよく走り去っていった。


後に、訓練所にいた冒険者たちは語る。


ーーダンジョンのラスボスよりも怖かった ーー


「ありがとうございます、アカネさん」


「で、何があったの?」


アカネさんは ニヤニヤ しながら 前かがみ になってきた。

恋バナを聞く 女子会モード だ。


僕は 顔を赤くしながら、昨日の キスの話 を 正直に打ち明けた。


「ふ〜ん……そうなんだ、キスしたらスキルが増えたのね」


「……はい」


「サーシャちゃんのスキルは残ってたの?」


「はいっ、確認したらちゃんとありました」


スキルを 奪ったんじゃないか と思い、昨日の夜、サーシャの ギルドカード を確認させてもらった。

しかし、そこには 《癒やし》のスキル が ちゃんと残っていた。


「そっか、それはよかった。でも……」


アカネさんは ふっと微笑み、少し 艶っぽい目 で僕を見つめながら、


「キスでスキルが増えるって…… すごく面白いわね〜」


そう、意味深に呟いた。


そのまま ゆっくりと立ち上がり、

アビさんが走り去った 扉を閉める。


カチッ


「えっ……?」


…… 鍵まで閉めた……?


そして 無言のまま、僕の前に 立ちはだかるアカネさん。


ズシッ


座っている僕の 首に両腕を回し、 柔らかな胸を押し付けながら 跨ってきた。


「ちょ、ちょっ……アカネさん……!?」


心臓が 爆発しそうなほど高鳴る。

いい匂い、 肌の感触、距離の近さ……。


耳元に、甘い吐息がかかる。


「ねぇ…… 私ともキス、してみない?」


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