第八話 状況説明と修羅場
「おう!! リーゾット、身体のほうは大丈夫か!」
ギルドの応接室で座っていると、2メートルを超える大男が勢いよく入ってきた。
「アビさん、おかげさまで大丈夫ですよ」
この人は アビゲイル さん、僕が所属しているギルド 「深淵の守護者」 のギルドマスターだ。
短く刈り上げた髪に立派な口ひげ、隆々とした筋肉を誇るが、見た目に反して戦士ではなく魔術師でもある。
ちなみに、サーシャのお父さんでもある。
「がはは! よかった、よかった! お前さんに何かあれば、お前の両親に怒られちまうからな!」
アビさんは大声で笑う。
彼は僕の両親と昔、パーティを組んでいた仲間であり、両親を亡くした僕を何かと気にかけてくれる恩人だ。
「リーくん、本当に大丈夫?」
アビさんの後ろから、ひょっこりと女性が顔を覗かせた。
彼女の名前は アカネ さん、ギルドの受付嬢だ。
鮮やかな 虹色のポニーテール が特徴的で、前髪には青と緑が混ざり、サイドには赤とオレンジ、ポニーテールの先端には黄色とピンクが映えている。
身長は僕と同じくらい。
サーシャに負けず劣らずの 豊かな双璧 を持ち、常に笑顔で接してくれる 姉のような存在 だ。
「アカネさん、本当に大丈夫ですよ」
「そっか……よかったぁ」
アカネさんはホッとしたように、安心した笑顔を浮かべた。
「リーゾット! サーシャのこと、本当にありがとな! 何回言っても足りねぇくらい感謝してるぞ!」
「いえ、大事な仲間ですから当然ですよ」
「ところで、私たちを呼んだのは何か理由があるんだろ?」
アビさんとアカネさんは、対面のソファーに腰を下ろした。
「実は……これを見てください」
そう言って、僕は ギルドカード を二人に差し出す。
「なんだ、なんだ? 特に何も変わって……ん?」
「り、リーくん!? どうしてスキルが増えているの!?」
アカネさんが驚きのあまり 前のめり になってきた。
その瞬間、彼女の 柔らかな双璧 が視界いっぱいに広がり、ふわりと香る甘い匂いが鼻をくすぐる。
近い、近すぎる……!
さらに、アカネさんの ピンク色の艶やかな唇 が目前に迫る。
リップを塗っているのか、艶めいていて思わず見惚れてしまった。
「それに、この《癒し》って……うちのサーシャと同じじゃねぇか!」
アビさんが 目を見開き、ギルドカードを凝視する。
そう、この世界では スキルは一人につき一つ というルールがあり、例外はない。
成長すればスキルが 強化 されることはあっても、 増えることは決してない のだ。
「スキルが進化したってことか?」
「いや、そんなことはないと思います……」
僕のスキル《譲受》は 毒や傷を肩代わりする能力 であって、 スキルそのものを貰えるわけではなかったはずだ。
「ねぇリーくん、サーシャちゃんと同じスキルだけど、何か 心当たり ある?」
「えっ……」
心当たり……ある。
昨日の サーシャとのキス。
あの 柔らかい唇の感触、 甘い吐息、 絡み合う舌――
思い出しただけで 顔が熱くなり、心臓がドクンと高鳴る。
……でも、こんな話 アビさんの前 で言えるわけがない。
言ったら 殺される……。
僕がモジモジしていると、アカネさんが ニヤリ と口角を上げた。
「もしかして、サーシャと やっちゃった?」
「!?」
言葉の意味を理解した瞬間、 全身が固まる。
「……おい、今のは本当か……?」
ごごごごごご……!!
アビさんの 魔力と威圧 により、 応接室が揺れ始めた。
「俺の…… 可愛いサーシャ に何をしたっていうんだ……?」
鬼の形相で 睨みつけてくるアビさん。
その威圧感は 昨日の魔王に匹敵 するほどだった。
こ、今度こそ…… 本当に殺される……!




