幕間 とある冒険者の最後 ※ダンチ目線
「はぁ……はぁ……くそぉ、こんなはずじゃなかったのに……!」
薄暗いダンジョンの中を、ダンチは無我夢中で駆け抜けながら呟いた。
早くダンジョンを出なければ。そうしなければ、この俺様が死んでしまう。
この俺が、こんなところで死んでたまるか! やっとAランクになって、順風満帆だったんだ。
彼女のニシリナができて、サーシャだってあと少しで俺のものになる予定だった。
なのに……なのに……!
「きゃああああ! ダンチ! た、助けてぇ!」
背後から、ニシリナの悲鳴が聞こえた。 振り向くと、彼女が地面に倒れ、その背後からランバが迫っていた。
ランバ――ダンジョンによくいる四足歩行の魔獣。 本来ならBランク以上の冒険者にとっては簡単に倒せる。 素材や食料にする程度の雑魚。
だが、今の俺たちにはランバと戦う余力がなかった。
ここまで逃げるまでに、普段では考えられないほどの数の魔獣と戦ってきた。 ダイも途中でそいつらの餌食になった。
助けたい……だが、剣もない。スキルを使う力も残っていない。
「だん……ち……みず……でない……で……」
ニシリナが涙ながらに叫ぶ。
ダンチは振り向かなかった。
「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
叫びながら、ダンチはダンジョンを突き進む。
――そして、光が見えた。
外の光だ。
もうすぐ出口だ。
ここを出れば、助かる。
もう一度やり直そう。 またパーティを組んで、かわいい女を彼女にするんだ。 財宝も女も、すべて俺様のものだ。
光の先へ向かう。
だが、そこにあったのは……
モンスターがうじゃうじゃいる部屋だった。
ダンジョンには、出口と見せかけて冒険者を誘い込むトラップがある。
本来なら、簡単に気づくはずだった。
しかし、今の俺には、それを見抜く余裕はなかった。
「はは……ははは……ははははははは……!」
ダンチはもう、笑うしかなかった。
――こうして、一人の冒険者は最後を迎えた。