幕間 懐かしき瞳 ※魔王目線
「魔王様、あの少年をダンジョンの外へ運びましたよ。」
フードを被った男がそう言いながら戻ってきた。
「ご苦労。」
「しかし、久しぶりのお客様で面白い少年に出会えるとは……長生きはするものですね。」
フードの男はケラケラと笑った。
魔王の城とあのダンジョンは繋がっている。しかし、通るには特殊な段階を踏まなければならず、普通に入ることは決してできない。ごくまれに、奇跡的にその段階を踏み、今回のように辿り着く者がいる。
だが、大半の者は我を見た瞬間に逃げ出す。まれに、さきほどの愚か者のように挑んでくる者もいるが、すぐに絶望の表情を浮かべ、逃げ去るのが関の山だ。
だが、あの少年だけは違った。
仲間のために、最後まで諦めず我に立ち向かった。
あの瞳を見るのは……いつぶりだろうか。
何百年前の勇者……いや、たしか六年ほど前にもいたな。
仲間のために我に立ち向かった“男と女”が……。
「しかし、魔王様もなかなかひどい“呪い”をかけましたね。ふふふ……彼がどう乗り越えるのか、想像しただけでも興奮してしまいます。」
フードの男は、いつも以上に上機嫌だ。
「あのスキルを持っているのだ。それくらいの試練は課さねばな。」
あのスキル。我を倒した“勇者”が持っていた力。
すでに失われたと思っていたが……また発現するとはな。
「これから、また面白くなりそうですね。」
「そうだな……。あの少年が、どこまで辿り着けるか……見ものだ。」