プロローグ
「サーシャ、スゥ、サエルザ——行くぞ!」
「はいっ、スキル《癒し》!」
サーシャが杖を掲げ、優しい光が全員を包む。
「たぁぁあ! スキル《気流》!」
スゥが風の力で大型モンスターの攻撃をかわし、レイピアで切り込む。
「ん、《火炎》」
サエルザが空から火球を放つが、モンスターは寸前で回避。
「今だ……スキル《必中》《増筋》!」
リーゾットは思いきり盾を火球に向かって投げた。
炎を帯びた盾が回転しながら飛び、燃え盛る弧を描く。
「——盾よ、炎を纏え! スキル《火炎》!!」
サエルザの魔法と共鳴した炎が爆発的に広がり、業火の渦がモンスターを包む。
「喰らえぇぇぇ!!」
リーゾットが紐を引き、炎の盾をモンスターへ叩きつけた。
——巨体が崩れ落ち、静寂が訪れる。
「やりましたね、リーゾットさん!」
「ふぅ……まぁ、こんなもんよ」
皆が安堵する中、サエルザが無邪気に飛びついてきた。
「リーゾット、サエルザ頑張った! ご褒美のキスして? んぅー♪」
「えっ、ちょっ、んぅ……!?」
サエルザが突然、リーゾットの唇を奪う。
「ちょっと! こんなところで何してるのよ!!」
スゥが顔を赤くしながら詰め寄る。
「スゥもこの前、ご褒美にキスしてもらってた、サエルザ知ってる」
「そ、それは……ゴニョゴニョゴニョ」
スゥが動揺していると、サーシャが微笑みながら言った。
「じゃあ、みんなでご褒美キスしましょうか♪」
「なんでそうなるのよー!!」
リーゾットは苦笑しながら、仲間たちのやりとりを見つめる。
(この仲間たちと出会うまで、こんな未来が待っているなんて思いもしなかった——)
——数ヶ月前、まだ俺が"ハズレスキル"と呼ばれ、底辺の冒険者だった頃。