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アード・サジン! ダンジョン少年の帰還  作者: 根っっ子
あの時の勇気をもう一度
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偉大な灰色の城

 地表を見渡したサジンは、無意識にその景色を”比べて”いることに気がついた。道の舗装などされておらず、ごつごつした岩肌がむき出しになっていたり、歩く生物を遮るように植物が生えたりしている。こういう場所を、人々は田舎というのだろうか。

 しかしながら、この場所から見えるそびえ立つ城──女王の住む石の城は、現代には存在しないに違いない。テレビから得た知識だが、サジンはこういったものを”世界遺産”だというのだと想像した。


「この辺からだと裏口からお城に入ることになりますね」

「サジンさん、よく覚えてますね。城下町に寄ってもいいですが、時間がないとのことなので、直接お城に向かいましょうか」


 石の国、という名前ではあるが、あるもの全てが石で出来ているわけではない。あくまでガーゴイルの女王が支配しているからであって、家具に木材は使われているし、食べ物もみな石で出来ている、なんてことはないのだ。

 サジンのいた人間の世界と比べると、文化的な点では遅れているのかもしれないが、外部からの影響を受けず、長い間形を保ち続ける岩石のように存在し続けていた。


 もう話すことは直接会って話すと決めたのか、小さな女王が大人しくなった。サジンは全く気にしていないし、部下のガーゴイルもそれほどお喋りではなかったため、黙々と城へ向かうこととなる。荒れた道を歩くのは久しぶりに思えて、懐かしさを感じるサジンであった。

 女王の住む石の城は、大きさでいえば探索者地区にある学校を一回り大きくしたようなものだった。一匹の魔物が住むにはいささか大きすぎるように思えるかもしれないが、女王が権威を示すと言いながら、様々な魔物を城に招いた結果、どんどん大きくなっていったそうだ。


 裏側ではあるが城の近くであったためか、その辺をうろうろしている魔物とばったり出くわすことはなく、裏口までたどり着くことができた。中で休憩をしてもいい具合の距離を歩いたが、サジンは女王との謁見を急ぐ。


 裏口の門は大層なものではなかったが、そこをくぐると見事に別世界へ迷い混んだかのような感覚を覚える。精巧な装飾に、色味の違う石で彩られた床は、自然豊かな外の風景からは想像もつかないものだった。


「やっぱり綺麗なままですね」

「みなさんお掃除頑張ってますから。私はここの担当じゃないのでよく知りませんが」


 サジンはまだ新しめの靴を履いているからか、歩く度にコツコツと音が響く。中で働く魔物たちの視線が集まってくると、ひそひそと何かを話す声が聞こえてくる。

 裏口から正面の大広間に抜け、そこからまっすぐと赤みがかった石の階段を登り、まっすぐ進むと玉座の間へたどり着く。そこへ至るまでに、城内の噂になっていることは嫌でもわかった。とはいえ、何を思われても気にしてはいられない。視線を無視して玉座へと急いだ。


 すたすたと進むサジンの周囲に、今にも動き出しそうな魔物の石像がいくつか並んでいる。大広間には均等に配置されているが、今にも動くかも、というよりかは、本当に動かすために作られたのかもしれない。

 階段を上り、玉座の門を守るガーゴイルがサジンを認識する。特に何を言われるわけでもなく、道を開けてくれた。女王から言伝があったことを察する。


「ようやく来たか!! こうして()()こちらで会うのは久しぶりな気がするのう」

「女王、時間がありません。一刻も早く元の世界に戻る方法を探さないと」


「まあ待て。わしの話をちょっとは聞いても良いじゃろ? わしとて話したいことがあるんじゃから」

「ううう、手短にお願いします」


 長話でなければいいけどな、と心の中で思うサジン。玉座に座るガーゴイルの女王は、人間の世界にやってきた時よりもより威厳のあるオーラを放っていた。見た目こそ人間に近くはあるが、周囲に与える魔力、そしてプレッシャーはかなりのものらしい。玉座の間に待機している部下の魔物たちは、どことなく顔色が悪そうだ。


「お主が元の世界へ戻る手段を見つけるまで、この国に滞在させようと思ってはおったが、それが難しくなっての。カーフロックのつがいが召喚された話をしたと思うが」

「デーモンの国に呼び出された魔物ですよね」


「そうそう。で、カーフロックのつがいに石の国を襲わせようとしていることがわかっての。いつ到着するか時間の問題といったところなんじゃが」

「……それって大丈夫なんですか?」

「うむ。わしだけじゃと国を守りきれるかわからん。一匹ならまだしも、つがいで現れたことなど聞いたこともないし、多くの命が失われるやもしれん」


 真剣な表情になった女王は、肘を玉座の手すりに置いて話を続ける。


「最初に言っておく。もし、今この国にカーフロックが襲来したとして、サジンの命が尽きた場合、それはおぬしにとって”詰み”に近い状態となるぞ」

「二度助けられるわけではない、ということですね」


「その通りじゃ。もう一度半身を作り出す時間もない。色々と考えねばならんことがあるが、聞いてもらうぞ。まず、デーモンの国がカーフロックを従えるための莫大な魔力を手に入れたかじゃが、まああの源蔵とやらが一枚噛んでそうじゃの」

「魔物の世界についての事情を知っていましたし、これまで集めてきた魔力を使って取引したのかもしれません。目的は不明ですが、できないことはないでしょうね」


「そんなもの身勝手な理由に決まっとるじゃろ! 長きにわたり人間の世界と干渉を控えてきたというのに、個人の行動でめちゃくちゃにされたらたまったものではないぞ。石の国を襲わせること自体がサジンへのあてつけじゃったら、わし直々に奴を止めに行きたいところじゃが」

「じゃが、なんですか」

「正直、わしでも勝てるかわからぬ。力の底が見えぬ以上不利な可能性が高いのう。元の世界に戻ったとしても、奴をどうにかせねば安息はないな」

「僕もそう思います。難しいことがたくさんふりかかって来ますね」


 一人の男の野望から、二つの世界に影響が広がっていく。サジンたちは、その両方に立ち向かわねばならなかった。

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