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連絡の手段

「さあ着いたよ、お疲れ様。休憩はいるかな?」

「全然大丈夫ですよ! まだまだ余裕で歩けます」


 優利も問題ないと話し、そのまま買い物をすることとなる。駅に到着してから、ややこしい標識や目が滑るような地図を見かけたサジンだったが、連についていくだけですぐに目的の場所へ到着できた。

 まるで答えを知っている状態で迷路を進んでいるかのような、不思議な感覚を味わったサジンと優利。二人共こういった家電量販店に縁が無かったようで、連は驚きの表情を見せる。


「え!? 俺こういうとこ超好きなんだけど、あんまり行かなかったの!? 子供の頃はおもちゃとか見てたし、今は家電とか周辺機器とか見るだけでわくわくしない? 俺もう男の子ってみんな好きだと思ってるよ?」

「あー、家の人が全部揃えてくれてたし、家族と出かけるのも買い物するような場所じゃなくて」


「世界が違うね!? ……そうかそうか。じゃ、とりあえず見て回ろうか。サジン君にはびっくりするものばかりだと思うよ。てか毎回新商品に俺も驚いてるし」


 心なしか、連の気分が上がっている気がすると、子供組二人は察したようだ。サジンからしても、人が楽しそうにしている姿を見るのは気分がいいので、自分も楽しめるかもしれない、と考える。もちろん、そこは想像以上の体験が待ち受けていた。


 室内は一定の気温が保たれ、生活感のない、独特な匂いが建物の中に漂っている。感覚が鈍るな、と感じたサジンは、嗅覚に頼らず、視覚で状況を把握しようとする。一階は様々な携帯電話の会社が各々の展示をしていて、いわゆる連が言うような家電の階層ではなかった。サジンからすれば全部未知の機械なので同じようなものなのだが、連はここにも用があると話す。


「一階は普段あんまり寄らないけど、今回は違うんだよ。サジン君のスマホを買います」

「スマホってもしかしてアレですか? みんな持ってる四角いやつですか?」


「そうその通り。色々とややこしそうな契約はご両親とお話して全部終わらせてます。ので、ここには受け取りに来たってわけ」

「いつの間に!?」


 キャリアはご家族と合わせてるからね、と連は話す。そわそわしながらついていったサジンは、店頭に向かい、商品を受け取る連を見守った。緊張のあまり、自分が前に出るという選択肢はなかったのだ。


「じゃじゃーん。これがサジン君のスマホ。これでご家族や優利君と連絡できちゃうね」

「とても便利そうです! こんな大事なもの……ありがとうございます!」


「お代はご両親が出してくれてるから安心して。設定とかは、家に帰って妹さんに聞いた方が早いかな?」

「現代っ子は慣れてますからね。サジン、分からないことがあったら俺も答えるから、壊れたと思ったらとりあえず相談するんだぞ」


 まるでサジンが機械を壊すかのような物言いだったが、否定はできなかった。ふとした時に力を入れすぎたり、うっかり攻撃を受けてしまった場合、粉々に砕けてしまうかもしれない。


「一応探索者用にできた国内の耐久モデルだし、そうそう壊れないと思うよ。あ、物理的じゃない時は詳しい人に相談しようね」

「繊細な道具なんですね。気をつけて扱います。連絡を文字でやりとりするなら、こちらの言葉を勉強しないといけませんね」


 電話以外のやりとりに、文字で連絡することを知っていたサジンは、そう連に話した。


「ひらがなとカタカナからだな。話すことはできるし、子供向けからでいいから、勉強していけばいいさ。サジンは頭が回るし、すぐ慣れるよ」

「が、頑張ります。できるだけ早く覚えたいですね」


 優利もそう言ってくれているので、しばらくは文字の勉強やスマホの操作に慣れていく必要があるな、と考えたサジン。やることを1つ終えた連は、続いて他の階層で買い物をしようと提案する。


「次はエスカレーターで上に行こう。優利君は何か欲しい物とかある?」

「どうせなら、ダンジョンで使えるような道具が欲しいですね。ここってそういうのあります?」


「あー、そう言われると思ってホームセンターとちょっと迷ったんだよね。こっちはこっちであると思うけど……一応回ってみようか」


 連が言うには、当然こちらの店には家庭的なものが中心となっていて、業務的な用途に使うものは少ないとのこと。しかし、ホームセンターでは扱わないような機材もあるので、それらを中心に見ていくことにするそうだ。


「サジン君の視点で使えそうなものを見てみようか。音楽系にパソコンの周辺機器はナシ。おもちゃも見ていっていいけど今必要じゃないね。ダンジョンに居て、こんなことができたらいいな、なんて思ったことはある?」

「たくさんあります! けど、最近はあまり感じてないですね。困っても、みんなに相談すれば大丈夫だと思ってますから!」


「あはは、それは良かった。じゃあここにはもう用事はないかな。近くを回りながら、散歩でもしようか」


 市街地の中心部とあって、少し歩くだけでも様々な場所に向かうことができると連は話す。優利も賛成したので、サジンはそのままついていくことにした。こうして話している時にふと思い出したのか、優利がとある人物について尋ねてくる。


「そういえば、女王の人形はえらく静かだな。こっちの世界の散歩なんて、見せろーとか騒いでそうなイメージだったけど」

「あはは、女王がいたらそうなってたでしょうね。今はとおるに預けてるので、そっちで面倒を見てくれてると思いますよ」


 家電量販店を後にするサジンたち。一体女子チームはどうなっているのかと考えたサジンだったが、それを知るためには、探索者地区の近くにあるカフェへと視点を移す必要があった。

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