振り返りの時間
サジンが所属する探検隊、”あゆみ隊”は、構成する隊員の大半が学生であるため、主な活動時間は夕方以降となる。探検隊と立派な名前を掲げてはいるものの、実際は学生の同好会のようなもの。
地域に発生したダンジョンの事前調査は大人たちが済ませてしまうし、実習や攻略には、もっと人数が多く伝統のある探検隊が優先して向かってしまうため、暇を持て余すことが多かった。しかし、サジンが加入してから状況は大きく変わる。
サジンの影響で様々な出来事が起こったが。探検隊にとって最も影響があったのは、大人たちや職員から”特別な探検隊”と認められたことだろう。そのおかげで、あゆみ隊は未知のダンジョンをいち早く調査できた。
そして、その先にいた黒いドラゴンと戦闘を繰り広げてから、丸一日が経つ。学校の空き教室には、あゆみ隊の全員が揃っていた。今日はたまたま授業が早く終わったのか、集まった時間は夕方より少々早い。
「はい、みんな集まったね。まずは攻略お疲れ様。無事に済んだみたいで本当に良かったよ」
連はそう言うと、教壇の方でパチパチと拍手をした。別に皆で拍手しあおうと思っていたわけではないらしく、すぐに次の話へと移る。
「色々あって大変だったと思うけど、ゆっくり状況を整理していこう。まずはドラゴンを討伐した件だね。ドラゴンっていう魔物は本当に目撃情報が少ないんだけど、最低でもティア2以上の強さがないと対処が難しいとされているんだ。正直、倒せちゃったっていうのは驚きだね」
「正直サジンが居た影響が一番大きいとは思います。でも、誰が欠けても全滅してたんじゃないかなと。透ちゃんや安子がいなかったら、ドラゴン以外の魔物に倒されてたかも」
優利が戦闘を思い出しながら語った。自分はあまり役立てなかったと言うが、サジンはすぐさまそれを否定する。結局のところ、四人いたからこそ解決できたというのが、探検隊としての結論だろう。
「仲間の攻撃スキルに巻き込まれる影響を加味しても、あんまり大人数でダンジョンに潜ることは望ましくないってのは習ったよね。全員のバランスを考えると、あと二人ぐらいが限度ってところかな」
「流石に四人から増えるとはあんまり思えないですが。入隊希望なんて来るはず無いですし」
「まあまあ、そう卑下せずに。ドラゴン退治なんて、実績だけ見たら大人の探検隊より上なんだから、もっと自慢に思って良いんじゃないかな」
「安子が朝から自慢してましたけど、話半分にしか聞いてもらえなくて。最近頑張ってるってことは伝わってるといいんですけど」
「あー、そもそもドラゴンって見かけないから凄さが伝わらないか。俺が褒めるっきゃない! えらいぞ!」
冗談交じりに全員を褒める連。優利の報告も一段落し、次の話へと切り替わる。
「で、デーモンたちの国がこっちに侵略してくるかどうかだけど……これがまた難しい話なんだよね。少なくとも、ダンジョンの数は落ち着いたし、怪しいところは特にない。サジン君の方が詳しいんじゃないかって思うぐらいだよ」
「昨日、寝る前に女王から聞いた話ですけど、違うダンジョンからの攻撃も落ち着いたみたいです。重要な魔物が倒れてごたごたしているのかもしれませんね」
「ダンジョン側には向こうなりの事情があるってわけか。調べようがないのが残念だけど、ひとまずこっちの世界との繋がりはなくなった、と思っていいはずだ」
「しかし、繋げようと考えれば、繋げられるというのもあるはずですよ。しばらくは警戒が必要です」
「うんうん。まあ、その辺は大人のお仕事だね」
ひとまず、しばらくの間は学生たちが関わることはないということでまとまった。動きがないのなら、いつも通り過ごしてもらうだけだと、連は話してくれた。
「俺からは以上。みんなは何かあった? 攻略してから一日しか経ってないけど、気になったことがあれば言ってね」
「じゃあ、私から! なんか調子が良いというか、体がよく動くんです! みんなはどう?」
「あ、あたしもちょっと元気になってる気がするかも」
どちらかといえばいい知らせなはずだが、原因が不明となれば気になることだろう。一応、サジンは心当たりがあったようで、疑問へ答えるように話しだした。
「それは僕のせいかもしれません。増幅の余波が残っていると思っていますが、もしそうならしばらくはちょっと元気になれるかもしれませんね」
「魔力が増えると元気になるのか? 俺もやってもらえば良かったかな」
「根本的に、魔力そのものについては謎が多いです。知恵に長けた精霊たちなら詳しいかもしれませんが、僕から言えることは曖昧なことばかりで。人間という種族も、どちらかといえば魔力の扱いに長けている方なので、元気になっているのかも……です」
「へー。ダンジョンで色んな魔物を見てきたサジンが言うなら説得力あるな」
自分の持てる知識を噛み砕いて説明するサジン。そんな彼のことをより知りたいと思ったのか、安子があることを言い出した。
「よく考えたらさ、私と優利って、新田さんやサジンくん、透ちゃんのことあんまり知らないよね。もっと色々知りたいな~」
「俺と安子は幼馴染だから互いに知ってることも多いけど、三人からすれば確かにそうかもな。探検隊として、共有しておくべきことがあるか」
「優利ってば真面目だねぇ。なんかこう、好きな食べ物! とかからでもいいと思うよ」
そう聞いて、連はうんうんとうなずきながら、安子の話に反応する。
「確かに優利君の言う通り、一緒に過ごす仲なんだから、色々知りたいよね。この学校、探検隊を育てなきゃいけないから部活がないし、そういう青春っぽいこともどんどんやったらいいんじゃないかな」
「ですよねですよね! じゃあ、顧問の先生として連先生のことも教えてくださいよ~」
「俺かー。言い出しっぺの法則ってやつだね。名前はいいとして、探索者地区の職員をやってるよ。もちろん探索者も兼業してて、緊急事態があれば動くつもり。基本は裏方や君たちの指導だね」
「ちょっとしかいないティア1ですもんね。趣味とかそういうのも教えてください!」
「待って待って、これ根掘り葉掘り聞かれちゃうの? あー、不都合があるわけじゃないけど、顧問のことを知ってもって感じだし……。あ、一応ゲームとかやるよ。あんまり遊べてないけど」
一応趣味は教えてくれたものの、連はあまり自分のことを話すのは好きではないようで、いつものような余裕が無くなっている。自分でも困ったのか、ある提案をして逃げることにしたようだ。
「よし、じゃあこうしよう。今度のお休みに、男子チームと女子チームに分かれてお出かけでもしようか。俺も今週の日曜は空いてるんだ」
「いいですねそれ! だったら美月を誘って女子会でもしようかな~。透ちゃんはいけそう?」
「はい! 安子先輩とお出かけできるの、楽しみです」
安子が友人を一人誘うなら、ちょうど三人と三人に分かれる形となる。そんなこんなで、探検隊の会議はどんどんお出かけの話へと変貌していくのであった。




