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アード・サジン! ダンジョン少年の帰還  作者: 根っっ子
透き通る希望のいずみ
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再会の予感

 場所は変わって、探索者学校のとある空き教室。あゆみ隊の三人は無事にダンジョンの攻略を終えたことを報告するため、学校へと戻っていた。初めて内部に入ったサジンは、内心驚いてばかりであった。何しろ、自分と同じくらいの、若い人間が1つの建物に集まっているというのは、新鮮な出来事だったのだ。

 空いた教室に入り、三人で座って報告を受ける教師を待っていると、見慣れた人物が教室に入ってくる。


「はいはい、新田です。サジン君関連の案件だから、僕が担当させてもらうよ」


 目を丸くする優利と安子。対してサジンは、知っている人物が来たと安心する。三人が中々話を切り出さないので、連から先に話題を持ちかけた。


「えーと、あゆみ隊のスコアは前回と比べてかなり上昇してる、とだけ伝えておくよ。といっても、あゆみ隊名義での実習は一年ぐらい前だね」

「あの、新田さんって教師でしたっけ? こういうことするイメージがなくて」


「いや、ただの地区所属の探索者だよ。ちょっとお願いしてお話を聞かせてもらおうと思って」


 意外な光景に困惑する優利。詳しくお願いね、と言われた三人は、それぞれ実習で起こったことを簡単にまとめて話す。ミミックを主とするダンジョンで、生き物の気配がほぼない遺跡だったこと、他の探索者が無理やりダンジョンに入ってきたことなどを話すと、連は興味深そうに頷いた。


「規律を破るほどの、異常なダンジョンに対しての執着、か。もちろんこっちでも把握してたよ。おかしいと思ってたけど、まさかデーモンに取り憑かれてるなんてね。一応、教師の方々に言って攻略に影響したって言っておこうかな」

「こういうことってよくあるんですか? その、取り憑かれることとか」


「多いわけじゃないけど、無いこともない、みたいな具合。基本的に判別が難しいのと、対処法が限定的でね。今回みたいな形で身体から追い出せたのはラッキーだったんじゃないかな」


 じゃあ、この辺で実習に関してはおしまい。と、連は手を叩いた。しかし、もう少しだけ用事があるようで、話題は次に移っていく。


「じゃ、本題ね。実は、サジン君の家族が見つかりましたー、やったね!」

「……は? えええ!?」


 声を出して驚いたのは優利だった。サジンは実感が湧かないのか、目をぱちくりとさせるばかり。安子に至っては、あまり状況を飲み込めないでいた。


「この地方で十年前に行方不明になった子供を調べてもらったら、サジン君の言ったこととほぼ一致する件が見つかった。何で俺が知ってるのかっていうと、俺もダンジョンに関しての調査で協力したからってわけ」

「お、おお!」


「ついでに言うと、君たちが助けた探索者は、サジン君のお父さん。これは超偶然だけど、まあ、事情を聞いたらあながちありえない話じゃないかも」

「お父さん!?」


 今度はサジンも声を出して反応したが、心情としては複雑であった。


「遺伝子的にはほぼ確定なんだけど、一応会ってみないと分からないこともあるよね。というわけで、今から会いに行きます」

「俺たちも行きたいです! 一応探検隊のメンバーだし!」


「君たちは授業があるでしょ。なので、俺が保護者代わりに同行します」


 優利の申し出は断られてしまったが、連がサジンの共に同行することとなった。事態がとんとん拍子に進んでいくため、ついていけているのか不安に思ったサジンだったが、家族に会うという大きな目標が達成されそうな以上、行くしか選択肢は無かった。


「実習で行ったダンジョンの近くなんだ。行ったり来たりで大変だけど、大丈夫かな?」

「……はい」


 静かに返事をするサジン。探検隊の二人を置いて、連と共に家族の元へと会いに行くのだった。



 再び住宅街に戻ったサジン。優利の家と比べるとどうしても小さく感じてしまうが、こうして建物が建ち並ぶ様子はあまり慣れないようだ。それに、この建物1つ1つに人間が住んでいるということも、あまり実感していない。

 ぼちぼち歩きながら進んでいくと、連が会話を切り出してきた。


「見つかってよかったね、家族。よくある物語みたいに家族を探して一生を終える……なんてことがなくてよかった」

「まだよく分からないです。自分は何もしていないのに、勝手に見つかるなんて。まあ、検査だと言われて色々されたりしましたが」


「技術の進歩ってことだよ。君と会って少しだけど、新しい発見が沢山あって楽しかったんだ。まだ探索者が知り得ない世界がある、って感じで」


 返事に困り、とりあえず相槌だけするサジン。連は前を向きながら、話を続ける。


「俺はなんとなく、サジン君が来てから起こったことが、繋がっているように思えてね。もう少し色々調べてみるつもり。でも、君はそんなことしなくていい」

「と、いうと」


「君はもう自由だ。家族のところに帰ったら、ダンジョンと関わらずに生きたっていい。もちろん、探索者として活動をしてもいい。俺は下の世代が安心して過ごせるように、やれることをやっていくよ」

「自由、ですか」


 自分には縁のないものなのか、いつかは手に入るものなのか。サジンはその言葉が引っかかり、少しだけ俯いた。これからどうなっていくのか、自由な生活ができるのか、不安に思うのも仕方がなかった。

 あまりにも表情に出ていたのか、連は笑いながら続ける。


「探すんだ、サジン。俺は探索者をやっていてすごく満足してる。でも、俺はこう思うんだ。別に職業みたいなくくりじゃなくても、人間はみんな探索者みたいなものなんだってね」

「何かを探している、ってことですか?」


「そう。探し続けるんだ。自分自身ができること、やりたいこと、何だって良い。使えるものは何でも使う。人を頼って、物を使って、生きて探し求めるんだ。自分が求める答えっていうのは、そもそも探さないと見つからない。だから、人間はみんな探索者なんだよ。……ごめんごめん、ちょっと変な話だったね」

「そうですね。僕にはちょっと難しいです……でも、覚えておきます。やりたいこと、やれること。探してみます」

「俺の考えだし、無理しなくていいよ。でも、答えがあるって信じて探す方が、俺は好きなんだ」


 話半分にしか理解できていなかったサジンだが、言われたこと自体は重要な気がすると感じ、しっかり心に留めておいた。

 話し終えたところで、連がある一軒の家を指さした。他の家と特に変わった点はないが、なんとなく懐かしい気分を味わったサジン。


「ここが君の家族が住んでいる、和泉(いずみ)家だよ」


 ダンジョン少年としてではなく、和泉家の一員としての人生が、この瞬間から再び始まった。

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