第2話.low gear
第2話.low gear
俺は、日田自動車の2tトラック
ヒダノニトン なのだが、人をはねた後に異世界に転生してしまった。
なんで、トラックに自我があるんだ?と自分でも不思議でならない。
日本では、海の神や山の神、でっかい木や物に魂が宿るとかあるし、それが信仰の対象になったりするから、まぁ無くはない
が…
俺は新車のトラックだ。ついこの間製造されたばかりでバリバリの人工物だ…。
魂が宿るにはまだ早いだろう…。
そんなことを考えていても、今はしょうがない。
目の前には、異世界の少女。
対応次第では、村人やら町人を呼ばれ燃やされてしまう可能性がある…。
どうしようか…。
とりあえずエンジンはかけないほうがいいだろう…。
「おい…」
少女がビクッとする…。
「あー…、驚かなくていい、君に危害を加えるつもりは毛頭ない。」
落ち着いた口調を心がけて話しかけた。
少女の緊張が少し緩んだようだ。
言葉が通じないが自己紹介をしておこうか、全く意味はないと思うが。
「俺は、日田自動車から発売されている2tトラック 車種名はアールヴ
CMではヒダノニトンの愛称で親しまれている。ディーゼルエンジン車だ…」
通じるはずはないか…。
「○▽※*▽※???」
全く分からないが、答えようとしているように見える。
最初の緊張はほぼなくなっているようだ。
と、その時、ガサガサと茂みから音がした。
ガルルル…
!?狼のような動物が3匹現れた!
ジリジリと少女ほうに詰めてきている!
狼にしては体がでかく、地球でいうとアラスカン マラミュートよりも少し大きく体の線は細い
目は赤く光っていて見るからに獰猛であるのが分かった。
少女は私に会った時以上怯えている…。
少女はバッと走り、木をよじ登り始めた。
狼のような動物は、私を少し気に掛けながらも少女を狙っている。
木に飛びつくような真似はしていないところからすると、ネコ科のような跳躍力はないようである。
(分析はここまでだ!助けよう!)
私はエンジンをかけた。ライトをハイビームにしてアクセルを煽った。
クラッチを繋ぎ、狼のような動物に向かい走った。
狼はサッとかわし、自分たちの間合いをキープしている。
反撃に転じないところからすると、異質である私を警戒しているに違いない…。
畳みかける様に、アクセルを煽り、さらにはクラクションを鳴らしながら狼に向かって走った。
狼は変わらず間合いをキープした…。しばらく睨み合いになったが狼は警戒しながら撤退した…。
助かった…。
安全の確認をしながら少女は木から降りてきた。
驚かせてはいけないと思い、私はバックギアに入れ木陰まで下がり、静かにエンジンを切った。
「○▽※*▽※!!!」
少女は何か言っているようだった、表情から察するにたぶんお礼だとは思う。
私はそれに答えるように、クラクションをファッッと短く軽く鳴らした。
言語が通じない以上、会話は意味がないので私は黙った。
沈黙の時間がしばらく流れた。
帰る時間なのだろうか、少女はあたりを警戒しながら遠くの森へと姿を消した…。
明日以降、何か動きがありそうだな…。
ふと、今日の事を振り返ったというか、少女の姿を思い出していた。
首から下げていたゴーグルのレンズはおそらくガラス製だろう、もしかしたらプラスチックの可能性もある。
それと、靴だ。
あのソールは確実にゴム製だった。
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