~優羽~希美との再会
希美と出会ってから一ヶ月が経とうとしていた。
控え室で休んでいた優羽がいた。
優羽は希美と出会って以来、希美にまた会いたくてたまらなかった。
希美の赤い柔らかな唇。その下にあるセクシーなホクロが優羽の頭に焼き付いて離れなかった。
コンコン。ドアをノックする音がし、ボーイが入ってきた。
「優羽さん、指名です。お願いします」
「はい」
恋わずらいにかかっていた優羽は元気なく返事をし、立ち上がると鏡の前にたった。
ホストを始めて一年以上経ち、ずいぶんホストに馴染んで来た。毎日ハルに言われてたYシャツのボタンの開け方もセクシー感を出していた。
幼さがずいぶん消えていた。
頬をパシッと両手で叩きよしっ!っと気持ちを切り替えた。
指名されたテーブルへ行くと、そこにはかすみが居た。
かすみは最近毎日のように来ている。必ず優羽指名だ。
どうやら、優羽に本気で惚れているらしい。
「お待たせしました。今夜もご指名ありがとうございます。かすみさん、今日も会えて嬉しいです」
年下とゆう事を十分にいかし、かわいい笑顔を作って優羽が言った。
「優羽、会いたかったよ」いきなり優羽に抱きつくかすみ。
そっと体を離し、ソファーへかすみを座らせると、自分もかすみの方へ体を向けて座った。
かすみを見ると、上下の濃い付けまつげの間から涙がこぼれていた。
あまり綺麗な涙ではなかった。
「かすみさん、どうしたんですか?」優羽は優しくかすみの手をにぎりながら聞いた。
「あのね、かすみね仕事で嫌な事があって、すごい辛くて、早く優羽に会いたかったの」鼻にかけたような赤ちゃん声でゆうかすみ。
「そうだったんですか。よくがんばりましたね、かすみさん」頭をなでながら優しい声で優羽は答えた。
「あのね優羽、かすみね、おっぱいパブで働いてるの」かすみが話だした。
「それでね、かすみ今すごく好きな人がいて、仕事中もその人の事考えちゃって、その人じゃない人に体触られるの何か嫌になっちゃったの」
優羽はかすみの話を聞きながらも、また希美の事を思い出していた。
「ねぇ、優羽?」とかすみがのぞき込むように優羽を見る。
「あっ、はい。」優羽は我に返り急いで返事をした。
「かすみが好きなのは優羽なんだよ。かすみの体は優羽のだよ」とまたわざとらしく泣き出した。
何を言ってるんだこいつは。さて、どうしようか。優羽は思った。
「優羽もかすみの事好きだよねぇ?」
「…はい」
「じゃぁこの後ホテル行って、かすみの事抱いて」
「...」
優羽は黙ってしまった。とゆうか、かすみの事を傷つけず上手く断る言葉を探していた。
「かすみさん、ちょっと落ち着きましょう。」と言って、ハンカチでかすみの涙を拭いた。付けまつげが取れないように慎重に。
「冷たい水飲んで下さい。」
水を飲んで、すこし落ち着いたかすみの手をにぎりしめた。
「かすみさん、俺はかすみさんの事大切に思ってます」かすみの目を見ながら優羽はゆっくりとしゃべりだした。
「大切に思ってるしずっと一緒にいたいとも思ってます。」
「だったらかすみと..」
かすみが口を挟んだのを優羽は止めて話し出した。
「かすみさん、聞いて下さい。俺は、かすみさんの事を大切に思ってるからこそ、体の関係を持ちたくないんです。
俺が嫌になるかもしれない、逆にかすみさんが嫌になるかもしれない、そうしたらもう終わりですよ。そんなの寂しいじゃないですか。
そうしたら、ずっとこのままの関係の方が幸せですよ。
かすみさん、俺の事が好きなら、仕事中でもなんでも俺の事考えてて下さい。俺もかすみさんの事いつも考えてますから。」
我ながら上手く言いくるめた!よしっ!
優羽は心の中でガッツポーズした。
「そうだよね..ごめんね。優羽がかすみの事思ってくれててすごくうれしい。」
優羽を見る目がハートになっているかすみ。
「もうそろそろ時間だね。私、優羽の事考えて明日からまた仕事がんばるよ」かすみはニコッと笑いながら言った。
さすが毎日来ている常連となれば一時間がだいたいどのぐらいか分かっている。
「優羽、外まで送って」とかすみが言った。
「もちろんですよ。」と優羽は立ち上がりかすみの肩に手を回し抱き寄せながら出口の方へ向かった。
しかし、おっぱいパブとはビックリだった。俺も一度行ってみたいなぁ。と思った優羽。
優羽はまだ一度もセックスを経験した事がなかった。いわゆる童貞。
しかし、最近は優羽のホストとしての人気は上昇していて、自分が童貞である事は死んでもかくそうと思っていた。
その時、一人の女性がボーイに連れられて中へ入って来た。きれいな黒髪をアップにし、化粧も綺麗にしてあり、色白には似合う淡いピンクのドレスを着ていた。遠慮がちに露出もしている。そして、唇の下にはセクシーなホクロ。
希美だった。
優羽は今すぐに希美に抱きつきたい気持ちになり、心が踊った。しかし今はかすみを腕に抱いている。この腕を回している所を希美に見られたくなかった。しかし、どうしようもない。
優羽は希美とすれ違う時、あまり見ないように努力した。
希美は優羽の方を見ながら、ホストに連れられて行った。
かすみをタクシーの前まで送ると、かすみがまた抱きしめてきた。
優羽は希美の事で頭がいっぱいでぼ〜っとしていた。
かすみの唇が優羽の唇に重なった。その時、やっと我に返った優羽。
「かすみさん..」
「お互い愛し合ってるんだからこれぐらいはいいでしょ」と微笑みながら言い、タクシーに乗り込みその場から去っていった。
自分の唇に指を触れた優羽。初めてのキスだった。この時も優羽は希美の赤いふっくらした唇を想像していた。