真章PART7『精霊の森 or 半年分の未来』
「...つまらない!」
「なんでだよ」
「だってさあ、暇なんだもん!」
「仕方ねえだろ」
「むう...。」
俺達がこう話している場所は最前線・ⅩⅩⅡ層の空中だった。
此処ならば誰かに話を傍受される事も無い為に、暇なときは効しているのだが...どうやら、由紀は作業―――モンスターを延々と狩り続けることが苦手なようだ。
俺も昔はそうだったが、そうでもしなければ楽しいと感じる場所に行けないと悟ってからはその作業すらも寧ろ楽しいものに変わり、更にこの世界にはまってしまい...というのが俺だった。
その未来がこれなのだから、嘗て作業に目覚めた俺には幾ら褒めても褒め足りない。
その為に、俺は作業の重要性を説いたのだが、それが俺視点からしても長々としたものだったために由紀が寝てしまい、そのまま落下していったために急いで救出に向かい、その後少しだけ叱ったのだが...全くもって通用してはいなかった。
―――
「...わあ!
ねえイア、これ凄いよ!」
「...そんなに凄いか?」
「勿論!ふふー、きっと威亜もそのうち分かるようになるよ?」
「マジかよ」
由紀を救出した場所の近くにあったダンジョンを見て、由紀は何やら興奮していた。
俺にとってはよく分からないものだったが、由紀がこれだけ騒ぐのだから何かの大事なものなのかもしれないと思った。
果たして、そこ等辺にかけてあった看板に書いていたのは
『この先 聖霊の住処 この森に入りし者 迷いて 世界のゆがみに立ちゆくであろう』
という、不穏な文章だった。
―――
「...此処に入るなよ。入ったら最後、終わるぞ」
「え―――...。ボク、入りたいんだけど」
「ダメだ。入って死んだら多分現実世界に戻れないからな」
「何!?ぼ、ボクが戻れなくなるって言うの!?」
「そう言ってるだろ?それに、入っても出れるとは限らないから、やめとけ」
「え―――...。」
それでも由紀が素直に従ってくれるのは、由紀が俺に対して好意を抱いているからだろう。―――俺に対して人もいるのに俺への想いを言うぐらいには。
最も、それは今更後に戻れない、という心理からだろうが。
ともかく、俺達はこの森に行かないことに決めた。
そして、それは結果的に好方面に転がることになる。
何故なら―――この後にここに来て、入った奴―――ヴァルがずっと後になって見つけられることになるのだから。
だが、未来のことなど分かることもなく、俺達は思っていたよりも大きな危険を回避したことに気付かずにその場を後にした。
...そして、その後、ヴァルが俺達の方向に行ったっきり帰ってこないという事故が発生し、俺と由紀はその夜恐怖に身を抱き合うことになるのだが...それは別の話だ。
―――
再び、しかし今度はこうなることを知っていながらこの世界に囚われてから半年。
未だにⅩⅩⅩⅥ層が最前線なのだが、それは各ギルドがバラバラだったからだ。
本来ならこの段階でもう大規模ギルドが出来ていてもおかしくはないのだが、この世界では統一意識が低く、これではアイツの思い浮かべるような世界にはならないのではないか―――。
そう考えたところで、アイツの意志が俺の思考にも侵食してきているのだが、それは俺にとって信じがたいものだった。
...まあ、信じようが信じまいが問題ない。
俺の身の回りには関係ないのだから―――。
俺は心の中でそう締め括り、横にいる笑顔を振りまく少女に目線を向ける。
いつも通り、心の底からの笑みを向けてくれる由紀に俺も笑顔で答え、この少女になら―――と、そのような考えを抱いている自分に気付いたが、それを否定することは出来ずに、寧ろそのことを快く思っていた。




