真章PART4『スキルと人物関係』
「グヌウ...。
...これは我に対する修行なのか!?」
「知らねえよ!」
「そこの者、口を慎むがよい!」
「「ぐえ」」
あれからすぐに来たのがここだった。
こうして俺達が語っている場所は、Ⅰ層北部に存在する道場だった。
此処では一定量ダメージを減少させる《剣術―流》を獲得できるようだった。
ダメージ軽減量は最大で75%にも及ぶようで、体力減少量が少なくなるのは相手に与えられるダメージが大きく与えるダメージが小さい為に長期戦を免れることができない今の戦闘形態にはマッチしたものだと言える。
その為にこうやって習得に励んでいるのだが...。
「なんじゃこの動きは!これでは流を獲得するどころか技にすらも辿り着けぬぞ!」
「なんだって―――」
そういいながらこのクエストを依頼した目の前の爺に意識を刈り取られるのも、何度目か。
そうやって意識を失う寸前に、「...今回は4度耐えられたのじゃから、技の習得も近いかの...。」と言う爺の声が聞こえた。
《スキル:<剣術―流>を入手しました》
―――
「...おお、起きたか。お前に教えることはもう何もない。隣の奴もそうじゃ。よく頑張ったの」
寝起きにそう言われ、俺は頭を捻らせる。
この爺の言っていることが理解できなかったのもそうだが、なんだか俺の身体が少し軽くなっていた様だったこともその違和感の一因だった。
「...おーい、イア殿―――?」
「ん?あ、ああ、なんだ?」
横の男―――新たに、男爵の名を得た―――がそういうのも半ば上の空のような感じだったが、爺が「これにて修業は終了じゃ、達者でな」と言った瞬間に今まで俺達がいた道場は消滅し、そこにあったのはただの岩場だった。
「...いつつ...。」
と、横の方からよく聞き覚えのある声が聞こえ、俺はそちらに向き直る。
「...あれ?威亜、なんでここにいるの?ここは隠しステージで、ボク達以外は入れないはずなんだけど...。」
そこにいたのは銃の世界で俺がとっていた姿を完全に模した少女―――かつ、俺の横にいつもいる奴...そして、此処に俺がいる一因である少女だった。
―――
「...そっかあ...。
ま、伯父さんの声が聞こえたんなら確かに来れるかもね。それに...」
「む?なんだ、貴様」
良く知る少女―――由紀は、俺の後ろにいたバロンに話しかける。
「...君、多分だけど南のフロアボスだよね?しかも、裏ボスの」
「...まあ、そうなのかもしれぬなあ。我は迷宮の主、バロン・ニュークリア!もともとは龍なのだぞ!」
そう言って偉そうにするバロンの鼻先にチョップをかまし、静かにしている由紀を見つめてみる。
いつもならそうすると恥ずかしそうにするのだが、今回ばかりは俺の方が意外な顔をしていた。
何故なら―――。
「...なんでこの世界に月界の核龍がいるの?」
と、いつか聞いたような名前の単語を発する由紀の、驚きと子供さながらな好奇心に満ちた目が俺を見つめ返してきたからだ。
―――
「ほう、我が月界ルミナの核龍だという事を知っているのか?
という事は、我が月界にいる者達には魔力がほとんど介在しないことも?」
「勿論!でも、初めてだなあ。こんなふうに龍が人型になっているのを見るのはなんだかんだで5人目だよ!」
「そうかそうか。
...まさか、イア殿がその一人、だとは言うまいな...。」
「そうだが」
「何!?なれば仕方ない。我はこの世界でも龍の力を持った者なのだ、移動の際は我の背に乗るがいい。一応、この電子の世界においても《騎乗》と言うスキルはあるそうだからな」
一つの世界の素にそうやって跨るものではないと思うが、今度からは使わせてもらおう。
「...じゃあ、東の方にある、武器を強くしてくれるところにいこっ?」
...と思ったのだが、由紀のその一言で行先は決まり、またバロンに乗る事になるのだが、それはまた少しだけ違う話だ。
《単一スキル:<騎乗>を入手しました》




