真章PART3『愚かなる道』
俺は、この感覚を知っていた。
それは―――。
―――
「...やっぱりかよ...。」
「む?ここはどこなのだ?」
そこは、やはり第Ⅰ層主街区<セントラル>だった。
つまり、今から始まるものは―――。
【では、これよりオープニングイベントを開始する。
是は強制イベントであるために、ログアウト行為は凍結してある為、注意していただきたい。
では、始めようか】
その言葉と共に、前回も味わったそのイベントは始まった。
ここまでは全てあれと同じだが...この後に挨拶の変更が行われるのだろうか?
【...まずは、この世界の注意を行う。
この世界は、私が嘗て作った世界であるDoomsday Knightsのように肉体が死するわけではなくなっているが、一度死亡してしまえばこの<Scarecrow>が攻略されるまでは死した場所で何も変化のないような人生を送ってもらうことになる。
また、この世界は長い間クリアされないかもしれないが、心配する必要はない。
この世界には思考加速が施され、この世界でクリアにかかると思われる推定体感時間12年間も現実では3日しかかからない。
此の放送は現実世界にも放映されている為に、オープニングイベントが終了するまでは等倍速となっている。この点もご留意頂きたい。
...では、君たちの健闘を祈ろうか。さらばだ】
『...この世界はスケアクロウを攻略した後も続く。
其の世界では確かに肉体は死する事は無いが、精神的な苦痛を与えて廃人状態としてから放置するために、死する事は無いがその者の家族には苦しみを与えようというのがこの世界の趣旨なのだ。
悪趣味だとも言われようが、仕方ないか。
...では、威亜も楽しむがいい。私も行くが、魂の複製体を同時に形成している為にこの世界に入るのは恐らく3日後だろうか。その内に進めるだけ進んでもらえば私としても喜ばしいな』
斉太のその声が俺にのみ響いたのは、恐らく確実だろう。
以前もそうだったのだし。
―――
「...成程、この世界を作りし者が我を呼び出した理由も分かったぞ」
「何言ってんだ?」
後ろで唸る元龍の特異点が言う言葉を問うと、自信満々にそいつは語る。
恐らく、これを作った斉太ですら理解できない様なことを。
「恐らくだが、この世界を作りし者は我を貴公らのいる現世に向かわせたいのだろう。
そうでなければ考えられない」
その考えを持っていたのは、異世界から現実世界に友を連れてきたいと考えたある少女だけだった。
―――
「...ちょっとー?」
後ろからそう声を掛けられ、俺はそちらに振り向く。
そこにいたのは茶髪の少女だった。
...なんとなくだが、コイツはよく俺が知っている奴のような気がした。
「...なんだよ」
「いやあ、近くにいたので声をかけておきました。そういえば、名前はなんていうんですか?」
意外と腹黒ではなさそうな者だったために、俺は名乗ることにする。
「...威亜だ。いつか会うかもしれないから、その時は覚えておいてくれ」
「分かりました!また、いつか会いましょうね!」
心の裏表のないような少女は、最後に振り向いてこう言った。
「...あっ、そうだ。私の名前を言うのを忘れていました。
...私、木口と言います。いつか会うこともあるかもしれませんが、その時は宜しくお願いします」
てへっ、と言いながらそう言う少女は、いつか見た事があるような...そんな気がした。
きっと、あの子のような人がこれから社会を知って変わってしまうのだろうか、とそう考えてしまうのだった。




