真章PART1 『入る為に必要な物』
「...あの世界に入る為には私特製の思考加速機搭載型スノウ・クラッシャーあたりが必要になるぞ」
「めんどくさいことするんだなあ。
...まあいいが」
「たとえ君が私の実子だと言えど、それを先に渡す事は無いぞ。
その代わりに、試験体になってはもらうが」
「...言ってることが矛盾しているんだが...。」
俺は、一応実父である氷華 斉太の許に来ていた。
まあ俺がコイツの許に来る理由などあまりない為に、すぐに分かったのか開口一番そう言う斉太。
賢いのだが、趣味は非常に悪いのがこの男である。
幾らまでも回りくどく、また俺の願いをその回りくどい方法で間接的に叶えてくれるのがコイツだった。
「ふふふ、ボクがいないとでも?」
後ろから聞こえたその声に振り向く寸前、後ろから抱き締められる。
勿論、俺はそれが誰かを知っていた。それどころか、こうするのはアイツしかいないのだ。
それに、一人称の言葉からも分かるのだ。
「...由紀ィぃ...!」
「え!?なんで怒ってるの!?」
「...どうされたい?右腕を潰すか、左足をもがれるか、それとも...。」
「ヒイ、怖いこと言わないでよ!」
その対象―――由紀に多少の殺意を振りまいておく。
...もちろん、それはいつも通りの事で、寧ろそうやって由紀が正気を持っているかのテストのような物だ。正気を失うとは思っていないが。
まあ、これが挨拶のような物でもあるし、また由紀に対する、(これ以上甘えるな)という警告のような物でもある。
「...まあいいけどさ、そんなこと言ってると威亜には作ったの上げないよ?」
「いや、そうされたら自分で買うだけ―――って!何してんだよ!?」
由紀は俺の頭に順々とそのスノウ・クラッシャー―――ではなく、それを洗練化した流線型の本体に搭載された少し歪な追加パックが付いたものを取り付けていき、俺の視界はたちまちその本体内部の灰色のバイザーに隠されてしまう。
「...何すんだよ」
「コネクト、コード-01、レベル00!」
その言葉で、俺は仮想世界に囚われる。
具体的には、本来の命であればいくつあっても足りない人生を。




