拡張現実の終了 or 新しい結末
『えー、本日を持ちましてゲームサービス<マジェスティ>を終了させていただきます。
ですが、このサービスを用いることは可能でございますので、今後ともよろしくお願いいたします』
その声明が発表されたとき、俺は心の中で由紀をほめた。
変声機、マスク、サングラスに髪の見えない様な帽子。
それによって、由紀の存在は誰にも見られていなかった。
まあ、俺以外だが。
『それともう一件―――』
そこに続いた言葉に、俺達は絶句することになる。
『―――再び、スケアクロウへの道が開かれた。
...それを持ちまして、私、クロッシング・アイ社製作者桜地 斉太の言葉を終了させたく思います』
その名を悲しみと共に封印していた記憶がよみがえることとなったが、それは少しだけ後の話だ。
―――
「...おい、あの言葉は何だ!?」
「...ああ、威亜か。
まあいいだろう、私の言葉なのだから」
「だからと言ってなあ―――!」
目の前の男―――一応父親なのだがそうとは思えない男に対して怒るも、コイツはそれに応えようともしない。
それが、更に俺の怒りを助長させる。
だが―――。
「んもう、威亜はそんな怒んない方がいいよ?
もうこーんな顔して、どっかの鬼かっての」
「...。
まあ、そうかもしれないが...。」
「そうだよ‼まったく、伯父さんもしっかりしてよ!あんなこと言ったら大変なことになるでしょ!」
「...すまない」
「すまない、じゃないよ!
...全く、二人はこれだから...。」
「「すまない」」
俺を叱り、その勢いで斉太を叱ったその存在が―――由紀の声が俺の怒りを消滅させた。
「...ま、いいけどさ。
取り敢えず、ボクにあんなこと言っといてただですむと思ってんの?」
「...い、いや、思ってはないが...。」
「そうだよね。ボクにとっては、まあ、いいけど...。」
昨日の俺の言ったことがビームブーメランがスラスターで加速してからキャッチし損ねたように鋭く戻ってきた。
だが、その後に失速した由紀の言葉に、俺は苦笑する。
口ではああ言っておきながら、少しは嬉しかったのだろう。
「...ねえ、威亜」
「なんだ?」
「僕のやった事って、大丈夫だったのかなあ?」
...最近になって分かった事だが、こういうふうに聞いているときは褒めて欲しかったり、何かをしてほしい時だ、ということがある。
その為、俺は少しだけ悪戯をすることにした。
「由紀」
「何?」
此処まではまだ平常心で動いているらしいが、そうじゃないようにしたい俺にとっては失敗しているようなものだった。
「...撫でていいか?」
「え!?な、なんでボク―――ひゃっ!?」
「ふふふ、全く反応が可愛いからもっとやりたくなるんだぞー?」
「...や、やめてよお...。」
「いや、やめない」
「も、もうう...。」
とても恥ずかしげに見えるが、由紀のアホ毛が漫画スペックなのであればピョコピョコしていそうだと思えた。
それほどに可愛く、一緒に入れるのがとてもいい。
そんな日々を過ごせて、俺は幸せだと思う。
―――
それより13時間後、つまり夜。
俺達が居なくなった氷華家地下室にて、斉太は自らの書くtwwittireにこのような文章を書いた。
『私の計画に新たな方向が見えた。
彼等の見る未来に何があるのか―――それは私も分からないが、少なくとも彼らの未来に二人の子が見られるような気がするのは私だけだろうか―――。』




