聯隊戦、再び or 高倍率な世界
レベルが173、というのは俺の2年弱を全て水泡に帰したという事でもある。
「だ、大丈夫ー?」と由紀が問うのは、俺がその苦労を一つ一つ思い出して俺が泣いてしまったからだった。
―――
【さーて、久しぶりー!
皆、元気―?私は元気だよー!
じゃ、これから頑張ろっかー!よーし、行ってみよー!】
その一言と共に始まった聯隊戦。
そこからの物は強くなったらしく、体力がさらに上昇し、攻撃も鋭さを増した。
そのせいで皆負けそうになったものの、勝てたのは。
「みんな―!もっとがんばろー!」
という由紀の声と、
【よーし、もっとがんばろー!】と底なしの明るさを発揮した藍理栖のおかげだった。
かくして3日ぶりに行われた聯隊戦はすぐに幕を閉じたのだが...。
【さーて、今回からはいろんなところで聯隊戦が行われているからね、次回は私はいないかも!
じゃ、またねー!】
その言葉により、今回からは色々な場所で聯隊戦が行われているらしい、ということが分かった。
―――
「あー...疲れた―――...。」
「そりゃああんなに動いたら疲れるだろ」
「前みたいにボクに何かするのが無くてよかったよ」
次の日、俺達はまたいつものように話していた。
柚はこちらに来ずに滝の世界のⅭ層までのスケアクロウをベルや弓、それにグロウ・グレア兄妹と共に攻略中だ。
母さんは何もしていない、というよりかは弓が滝の世界に行っている間もクローン技術の開発と斉太に付き合わされて『皆の心を抉るような作品』作りをしていることだろう。
恐らくは超絶強化された敵だろうが。
「だってさあ、戦闘はいいけど私は一切動いてなかったんだよ!
体力が持つわけないでしょ!」
「そりゃそうだろ!だから帰って来た時に運動しろと言ったのに...。」
「...ふふっ、面白いなあ」
由紀に笑われたことは恥ずかしいのだが、藍理栖がこうなっているのもひとえに彼女の運動不足のせいだ。
...まあ、俺の体力が少しだけあるのは由紀に付き合わされて走りまわされたからなのだが...そのことは気にしては負けだと思うことにした。
―――
「おお、戻って来たか。
...どうだった、私たちの作品は?」
「...鬼畜クソゲーとしか言いようがねえな」
「そうかそうか、では死亡不可、死亡時全能力リセット、武装消失ではどうだ?」
「尚更ひでえよ!」
俺は、久しぶりに氷華家に来ていた。
一応自分の家でもあるが、所有者的には一応優みたいなところがある為、あまり来ていなかった。
そもそもとして俺が相変わらず氷桜家に住んでいるから当然と言えばそうなのだが。
だが、その地下には新しくソフト開発用の部屋が作成されており、そこでは仮完成したソフトと、それに対応したハードウェアがあった。
その見た目は独特と言わざるを得ないが、それをプレイして思った感想はただ一つ、鬼畜だった。
最初の敵ですら相当レベルが高く設定されている為に、一元ではクリア困難となっていた。
それに―――このレベルの敵の感じは、肉体に負荷を掛けない分のレベル上げだとも思った。
「...これが死亡無しだったら何とかなるが、レベルリセットは終わるぞ」
「そうかそうか、では死亡したらゼロから開始することにするか」
「なんでお前はそう鬼畜な方向にもってくんだ!」
ひとしきり怒鳴ったところで、俺は溜息を吐く。
「このシステム、精神レベルで入ってるようだからすぐに戻ってこれたが、あっちだと4年は経ったぞ」
そういうと、驚いたようにこちらを見る斉太の顔が見受けられたために、不機嫌な感じで問う。
「なんでそんな顔で見てんだよ?」
その声に正気を取り戻したかクローン体となったその男は言う。
「...まだ大して加速倍率を上げているわけではないのだがなあ」
その言葉にあの速さですら遅い、という意味を感じ取ってしまった俺は、これからどれだけ時間のかかるゲームを開始しようとしているのか、と目を見開き絶句してしまった。
 




