初めての聯隊戦
【さーッて、初めまして、かな?
私はArise、宜しくッ!
...ってことで、これから初めての集団戦だねー!
私もバレない様に、しかも名前を変えているから、ぜひぜひ探してみてね!
じゃ、初めてこーっ!】
その藍理栖の掛け声によって始まったのは確かに初めての聯隊戦。
...だが、それはこの世界だけの話。
今回参加したのはそのほとんどがlv,100以上の猛者(つまり、あの案山子にいた者達)であり、敵のlv,も125と高めに設定されていた。
ただし、現実だからか体力自体はとても低め―――具体的に言うと2段しかなかったために(俺達のレベル基準から言うと相手は本来8段ぐらいあった)、すぐに討伐できたのだが―――。
「はあ、はあ...。
これ、っはきつすぎる、だろ...。」
やはり殆どの者が息を切らしていたことだ。
【ふう...。
...おめでとっ!
今回は結構弱めらしいからねえ、もっと頑張れ!
あ、と―――唯一楽しそうだったそこの君!こっちに来て!】
そんな中藍理栖の声が聞こえたと思うと、由紀を指さし呼び寄せる。
「なになに―?」と言いながら素直に近寄って行く由紀だが、なんとなく背中がゾワゾワするような感覚を味わった。
「わっ!?」
【ふふっ、おめでとう!
特別だよお、私がこんなことするのは。
...ってことで、唯一のlv,1なのに一回も攻撃を喰らわないで、しかも体力を1段の半分も削れたのはすごいから、ね。
じゃ―――】
「―――っ‼」
「ッ!?」
その嫌な予感と言うのは当たる物で。
有ろうことに、藍理栖は由紀の頬に口づけしたのだ。
このことに関し訴訟しようかとも思ったが―――。
「...うう...。」と、恥ずかしそうに唸りながら顔を赤く染め上げている由紀を見ると、そのようなこともどうでもよく感じられた。
【じゃ、クリアーってことで、報酬だよーっ!
...もちろん、君は頑張ったからね、追加報酬があるよ?】
その報酬と言うのがさっきの口づけと言うなら、俺は抗議しよう。
何はともあれ、全く無事とは言い難い状況で一回目の聯隊戦は終了した。
《...lv,が219に上昇しました。
ステータスが変化しました。
前スキルをリセットし、新たに〔全宙を統べし者〕を入手しました。》
―――
「酷いよ藍理栖、ボクは威亜一筋で―――」
「...いやあ、ついつい可愛かったからさ。
許して?」
「うっ、ま、まあ、仕方ないなあ...。」
「ふふっ、ありがと!」
「...由紀、感情に訴えられるのは弱いのか...。」
帰ってくるなり由紀は抗議したものの、感情に訴えられその矛は引っ込んでしまう。
それを俺は悲しく見守るが、由紀がしおれているのが実に面白い。
それにしても育てが同じだとこんなにも似るのか、と思えた。
...子供が出来たら、此処に預けるか。
そうアイツと同じ様なことを考えつつも、俺の心自体は未来に進み、現実を見てはいなかった―――。
「...もう、全く藍理栖は酷いよ!
ボクはあの娘の人形か何かなの!?」
「いや、俺に言われてもなあ...。」
自室に戻ってくると、由紀は猛抗議する。
この勢いが激しく、俺は対応に困ってしまう。
そこで、俺は気になっていたことを聞いて切り抜けることにする。
「そうだ、由紀のレベルはどんなになった?」
話をすり替えられたのが分かったのか一瞬非難するような顔になるが、変わって鼻で笑う様にしてから言う。
「ふふっ、聞きたい?」
「ああ聞きたい」
「わあ、すっごい速い決断」
その決断の速さに驚きつつも、由紀は答える。
「―――173。
一回でこれはすごいと思うんだよね」
その数値に、俺はただ眼を見開くしかなかった。




